第二話 狙われる呪いと少女の選択
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24時間まえのトリップから返って来て見れば章が変わっている。つまりは前の章までで昨日一日は全て語りつくしたという事だろう。正直それ以外の事はあまり記憶に残っていないのだ。インパクトがでかすぎる。
正気に戻ってきた所で学園は目と鼻の先。
この後を考えると頭が痛くなる。
「あっ。」
何とも間抜けな声が耳を通り過ぎる。一体全体誰なんだ朝から間抜けな一言を発する女は。
「あっ。」
反射的に同じ言葉を選択してしまう俺。
目の前には昨日の問題発言女がいた。
「東雲さん?」
「・・・おはよう。神凪さん。」
気まずそうに東雲さんは視線を下げる。
そんなに気まずそうにするならば、あんな宣言をするなよと心の中でツッコんでみる。
「タイミング悪すぎないかい?」
「しかたがないでしょう・・・朝体調が悪かったのよ。」
本当に体調がよくないのか体が揺れる。
「大丈夫か?保健室に寄った方がいいんじゃないか。」
「大丈夫よ。いつもの事だから。それよりもこの時間に二人で一緒に登校する方が不味いんじゃない?」
「確かにそんな気もするな。許嫁宣言の翌日に二人して朝遅刻、おまけに遅刻ときたもんだ。」
まあ、実際はこの通り体調不良と寝坊なのだが。クラスは今頃楽しい事になっているに違いない。
ゆらっ。
赤い髪が不自然に揺れた気がした。気のせいかもしれないが。
「一つ聞いてもいいかな?」
「何?許嫁は本当よ。ただし神凪家のだけど。」
「そんな気はしてたよ。みんなの前でと態度がえらく違うからな。こちらが素か。」
「そうね。そうかもしれない。・・・っ。」
嫌な予感。
絶対にロクな事にはならないだろうという予感。
・・・もっとも、見捨てる事はできないのだが。
「ただ、俺が聞きたかったのはそれじゃあない。」
「そうでしょうね。なぜ破門されたあなたを頼りにきたか?」
「やはり頼りにきたのか?元神童の僕に。」
「いいえ、私にはわかるわ。優秀な陰陽師のあなたを頼りにきたのよ。」
俺にとっては厄介な事この上ない相談だ。まだ本当に単なる許嫁であった方がよかったのに。
精神の訓練を受けているので、感情が目に見えて出ている事はないだろう。しかし、それでも出てしまうものはある。拒絶感。
東雲さんはその空気を読み取ったらしい。
「やはり駄目なのね。そう、色々な人が貴方を頼り過ぎた結果ね。私も含めて。」
「原因は何かわかっているのか?」
「ええ、なんとなくは想像がつくの。そしてさっきは強がりを言ったけどもう後が無い事も。」
そんなに危険な状態なのか。保健室に行っても原因がわからず意味がないくらいに。