第一話 4
翌日、俺は貴重な体験をする事になる。この日の出来事は絶対に忘れる事はないであろう。あまりの出来事の為、既にその日の翌日。つまりウヅメのプッチンマスターの二日後である今であっても昨日の出来事は夢なのではないかと思えるほどに。
憶えているのは単純にその日が俺の誕生日であっただけでなく。これも衝撃の事実(どうでもいいかもしれないが。)だろうが、その比ではない出来事が起こったのだ。
つまりその日、俺は学園の公認彼女が一方的にできたのだ。
時計を24時間巻き戻そう。
「おはよう。宗。」
「おはよう。今日は出てきているんだな。」
「まーな。一応、片付いたからな。」
金髪の校則違反をものともせず、今日は珍しく朝から出勤している斉藤 龍二は眠たそうに欠伸をしていた。
龍二が朝から来ていること事で周りはこちらを見ないようにしているが、いつもと違い静かにはならなかった。いつもなら張り詰める空気も今日はどうやら噂への期待の方がどうやら大きいらしかった。
「よう、不良君。」
怖いもの知らずの啓が龍二の肩を叩く。
「あん?なんだテメーか。」
「今日は珍しいではないか。あ、例の噂が気になって朝から来たのかな?不良君もなかなかにスケベだね。」
啓の発言を必要な箇所だけ抜き出し龍二は俺に答えを求めてくる。
「で、その噂とは?」
「なんでも転校生でも来るみたいだよ。なんでも赤い髪をした美人な女性らしい。」
「どうせ、情報の出所は横のコイツだろ?なら教室がいつもより騒がしいのも頷ける。」
ガラガラ、担任が教室へとタイミングよく入ってくる。後ろについてきている彼女が転校生であろう。
「想像以上じゃないかい?」
啓にしては珍しく興味を示した。それはいいがとっくにチャイムは鳴り終わっている。お前はなぜこのクラスに違和感無く溶け込むようにして本日休みの俺の前の席の倉田君の席に座っているのだ。
「確かに、美人だな。」
俺はその転校生に見とれていたと言ってもいい。他の男共はもちろん、女性陣も同じようだ。
「確かに。いや違う、俺は幼女にしか興味がない!じゃなかったあの髪だ本当に綺麗な赤ではないか。」
必死に自分を守ろうとする啓は混乱しながらも、俺の視線を髪へと向けさせる。
「なっ!!」
それはピンクやちょっとした赤い色ではなく。
炎、いや血の赤を連想させるものであった。
異常な色、染めたとは思えない色。
常識から逸脱した赤の髪、先祖?そんなものであの髪の色は遺伝されないだろう。
他の人たちはなぜ、綺麗と評価するのだろうか?これは恐ろしいではないのだろうか?
ウヅメは大丈夫だろうと言った。
だがこれは普通じゃない。術の反動?大丈夫?冗談じゃないあれは俺にはわかる。
これは立派な呪いではないか。正体が見えないが悪意を感じる。
それを壇上の本人は知っているのかどうかわからないが皆の前で頭を下げた後、転校生らしくチョークを一本持って名前を書いた。
「はじめまして、転校して参りました東雲 梓です。宜しくお願いします。そして。」
彼女と目が合う。何やら深呼吸をした後にそう問題発言をしたのだ。
「そして、私はそこの神凪家の許嫁です。」と。