第一話 2
「赤い髪?」
俺は啓に酷く間抜けな返事をしたに違いない。
「そうだ。ちなみに日本人だそうだ。スリーサイズは上から・・・」
「ちょっと待て、現実として赤い髪はないだろう。」
無理矢理に話を途切れさせる。そこは転校生がまだ来てもいないのに先に情報開示するのは読者にとっても本人にとってもあまり好ましくないからとかではなく普通にありえなくないか?赤い髪。
「うむ。そうだな。3次元は我々には関係なかったな。」
物凄い締め方をされたが正直言って勘違い過ぎるだろう。そこは普通に・・・好きですよ。
「ま、お前よりかわいい奴はなかなかいないだろう。自信を失う必要は全く無いぞ?俺は背の高い女より小さい方が断然好きだからな。」
時々思うのだが、本当に俺を男と思って見ているんだろうな?一度きっちり話す必要があるのかもしれない。
「でもこの時期に引越しっていうのは変だよな?」
「それは親の都合とかではないのか?」
「・・・親の都合ね。」
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない。」
啓は何かを感じたらしく一通り情報を開示した後、チャイムの音と共に去っていった。
午後の授業は歴史と数学だったはずなのだが俺はほとんど聞いていなかった。
二年前の出来事から一度も本家から連絡はなく、あんなに俺をお兄ちゃんとくっついてきて離れなかった妹でさえ手紙の一つもよこさない。
家族の都合。
俺は自由になって久しく忘れていた大人の事情や伝統を思い出していた。
ホームルームが終わり下駄箱へ。
「今日部活で引退した先輩来るらしいよ~。」
「え~キャプテン来るの~。」
見ていて微笑ましい女子テニス部のやり取りを横目に俺は帰路につく。
最低限の仕送り以外一切援助がない為、部活になど入る余裕がない。
意外と部活とはお金がかかるのだ。
高校生になった最初の春、本当であれば憧れていた運動部に入りたかったのだがユニフォームや遠征費、試合の為の交通費など予想以上にお金がかかる事を説明会で聞き断念したのだ。
本当に無知であり常識がなかった。
求めていた自由とは以外と不自由なのかも知れない。
帰りがけにコンビニにより夜食を買う。
500円が一食に使えるギリギリの金額なのだ。
だが、その500円から105円でプリンを一つ買う事にした。
現在のアパートに唯一住む家族の為に。