第一話 転校生は「我が家」の許嫁
<1>
神童・・・特定分野において卓越した能力を発揮する人物であり特に少年期において他を上回る能力がある人物をそう呼ぶ。
そう2年前、中学3年生までの神凪 宗純俺の呼び名であり、それは俺にとって呪い以外の何物でもない束縛術のようなものであった。
だがそれは昔の話。今は私立 星陵高校に通う高校2年生であり、孤高の君とか口にもしたくない何とかとか呼び方をされているが単に友達が2人しかいない寂しい男なだけである。
それに、君とは呼ばれているがこれは俺がそもそも小さ・・・くはないが少し、ほんの少し背が平均よりもないような気がする為、見知らぬ人から君とかお嬢さんとか言われる事がありそれを見ていた不届き極まりないだれかが勝手にそれを女子にリークし、そんな呼び方を本人の了承なくしているというだけであり俺自身は決して認めてないし、今後容認する事さえ決してない。
何がいいたいか?
決まっている。今の俺は神童とはかけ離れた存在であり、破門された身であり、一人暮らしを謳歌する普通の高校生であると言う事である。
色々とツッコミ所満載だろう。
わかっている、わかっているさ。でも人にはあまり言いたくない事が沢山あるのだ。
「おい、神童・・・孤高の君・・・巫女様」
「って、人が言いたくない事をボカしているのに何でお前は広めるような声で俺に容認していない呼び名で話しかける!?」
教室の机に座って昼休みをボーっと過ごしていようと決心していた俺に目の前の席(コイツの席はぜんぜん違う、ましてクラスさえ違う)にコイツ佐々木 啓は座りこちらを覗き込んでいた。
「いや~、全然反応してくれないから軽めから巫女様まで君が嫌がる順に呼び名を変えてみただけなんだが。」
「本気でやめろ。俺はもうあの頃の大人の道具だったできのいい期待の神童じゃない。ちなみに巫女様は本気でやめろ。あれはたまたま神社の巫女が人数不足で無理やり手伝わされただけだ。」
「無理やりね~、お前の所にだけ列ができてたような気がするあたり故意だと思っていたんだけどな、君の嫌いな大人たちのね。」
メガネをわざとらしく持ち上げ、啓はそのオタクを絵に描いた様な男である。
二人いる友達の一人が啓であるのだがそのステータスが万人受けしない。むしろ女子からは避けられている。
中学からの知り合いではあるのだが、その時すで二次元を愛している事を前面に出しいた。本人曰く俺は三次元は巫女、スクール水着、ランドセルを背負った幼女しか愛せないだそうだ。
この台詞を中学二年のクラス替えで聞いた時、正直ドン引きしたのは言うまでもない。
だが教師達が神童と俺を呼び、高価な道具を扱う様子を見て周りのクラスメイトが俺を避けていた中、啓だけは俺に宣言した。
「くだらない。所詮、同じ人ではないか。権力者だろうが、巫女だろうが。」
前年うちの神社で忌まわしき姿を見られていた事とそれをクラスメイトの全員の前で言ったこの台詞には怒りを覚えたがそれを超える感動を啓に受けた。同年代で初めて同等に扱ってくれたのだ。
後々、後悔する事山の如しなのだが。情報網の広いコイツは何だかんだいって頼りにもなってしまう。
「悪かった、神凪。そんな目でボクを見ないでくれ。今日は一つお得な情報を持ってきたんだ。誰も知らない情報だ。喜べ。そして敬え。称えろ、巫女服に着替えて!」
「絶対にお断りだ。」
本気で悲しそうになる啓を見て女子たちがまた引いていたのだが、それに混じって文化祭はコスプレ喫茶なんてどう?なんて声が聞こえている気がするがあえて俺は無視をする。
「そういえば金髪の不良児はどうした?あいつにも教えてやろうかと思っていたのだが。」
「今日はバイトがあるから休むだってさ。まったく、何を考えているんだか。」
学生の本分を放棄して何をしているんだか。もう一人の友達である不良児、金髪に学年一の図体と筋肉を誇る男である。この二人と仲がいいから友達がいないのではないかという気もするのだが、昔に比べれば二人も友達がいる事で満足している俺には気づかない事であった。
「まあ、あいつにも事情があるのだろう。見た目や噂だけではなく僕達には優しい男だ。理由があってのバイトだろう。」
啓のいう事はもっともであるので俺はそうだな。と一言返すに留めておいた。
「で、本題の件だが。お前は赤い髪の女は好きか?」