プロローグ
プロローグ
陰陽師・・・古代日本の律令制において実在した官職である。陰陽五行の思想に基づいた陰陽道によって後には本来の律令規定を超えて占術や呪術、祭祀を司るようになる。現在は神職の一種のように見られている。
「失敗しただと!」
境内に響く悲鳴にも似た怒号の声は一つや二つではない。
「神刀まで無くなっているぞ!」
「我らの悲願が!」
僕の下に引かれた降臨の為の術式を取り囲むように座っていた大人達が一斉にパニックを起こす。
「神凪の一族の神童と呼ばれたコイツでも駄目なのか。」
「一族始まって以来の天才ではなかったのか!」
僕は黙って立ち上がる。
今の僕を見ている者は誰もいない。
術式の失敗は高確率で使用した術者に何かしらの影響を与える場合が大きい。特に今回のような封印されていると言われている神を顕現させようなんていう大規模な術式の場合。
だけれども誰も僕に声をかけるものはいない。
実の父でさえ目の前で、神はどこだ?宝剣は!などと探しまわっている。
チラリと父と視線が合う。
その視線に周りの大人達もこちらをようやく見る。
昨日までとは180度違う視線。それは恨みや怒りといった負の意思のこもった視線。
僕は決意する。
何をかって?
「お前のせいで!」
見知らぬ男が僕を思い切り殴り飛ばす。
父は庇わない。わかっていたさ。
僕は今から自由の身になったのだ。
神童とは今より呼ばれない。
高校生になる僕は一人暮らしをするだろう。
妹には悪いが、僕は破門されるだろう。
失敗した僕は神凪家にとっては不要の人間なのだ。期待が大きかっただけに。
だから僕は決心する。
誰にも『気づかせてなんか』やるもんかと。