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揚げパン

何の変哲もないある日。

あかねが何やら重そうな冊子を3冊ほど持ってパタパタと走ってきた。


「見てよ、翔太君。卒アルでてきた!!」

卒アル。卒業アルバムのことだろうか。あまり聞きなじみのない言葉だった。

純粋に彼女の幼少期が見たくなり

「見せてよ」

と言うと「仕方ないな~」と言いながら渡してくれる。

あかねの昔の写真は数回見たことがあるが学校の様子を見ることはほぼなかった。

少し胸を躍らせながら開くと通っていた記憶こそないが懐かしいような気分にかられる。


「あ、見てよこれ。めっちゃ苦笑いになっちゃったやつ!!」

楽しそうに彼女が指をさす先には絶妙に作り笑いとわかる口角のあげ方をする中学時代のあかねだった。

容姿に大きな変化は見られない。

少しあどけなくて可愛らしいなと思う。

パラパラページをめくると、修学旅行、体育祭、合唱祭など様々なページごとに思い出が彩られている。

すごく楽しそうだな、と単純に思った。

自分もこんな生活をできていた世界線はあったのだろうか。

あかねはどの写真でも友達と楽しそうに口をあけて笑っている。

横にいる彼女はそんな過去の自分を見て思い出にふけるように口を閉じて笑っている。


「この頃はねー、私自分の寿命知らなかったの。70年ぐらいだと思ってたな~」

頬杖を突きながら独り言のように彼女は言う。

淡々というからそれは悲しみを表すのか憂いているのかはたまた何も思っていないのかうまく理解できず返事に困る。

窓から入る日差しがまぶしかった。


「見てこれ入学式の写真だよ」

「可愛いね幼い」

少し緊張した顔つきの幼い彼女の写真が目に入る。

「入学した瞬間から卒業の準備始まってるんだよ、すごいよね」

その類の感情はあまりわからないが多分人生で置き換えても考えられるだろう。

生まれた瞬間から死ぬまでの準備は進んでいる。無常だなと思う。


「なんか懐かしい気分になっちゃった。しんみりしちゃうよね昔を見ると。」

「そうかもね。」

ずいぶんつまらない返事をしたな、と自分でも自覚する。

思い出に浸る、という感覚はどうにも苦手だった。

「お昼に揚げパン作ろうよ!私きなこがいいな」

気分をあげれていない僕を見て彼女は卒アルをパタンと閉じて僕を見る。

「いいね、材料買いに行こうか」

僕も口の端を持ち上げ、立ち上がろうと膝に力を入れる。

「私準備してくる!15分ぐらいで行けると思う!」

僕の肩を軽くたたいた彼女は洗面所へと消えていく。メイクをするのだろう。



肩の衝撃が緩くなるのを感じながら自分の過去を少し思いだす。

母と僕の2人家族だった。

あまり母のことを思い出す気分にはなれないが、よく言えば優しい、悪く言えば愚かなだった。

別に母が本当に愚かという言葉に当てはまるのかと言われればそんなことはない気がするが、母はいろんな行動を愚かだと評したくせに結局母もそれと同じような行動をとった。

僕もそれに似たのだろう。血もつながってないくせに長年一緒にいる影響力とは怖いものだと思いながら息をつく。

幼少期の写真を見ると今の僕と全く顔の変わらない僕がいるだけだった。



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君へ


僕は君といることで少しでも成長できたでしょうか。

でも成長に大した価値は感じれないぐらいただただ楽しい日々でした。

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