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カップラーメン

目が覚める。時計を見ると…5時。

あと2時間は寝れるなーと思い毛布被りなおす。

寝相が悪いのにたいして毛布がずれていないのは翔太君が何回か掛けなおしてくれているのだろう。

うれしいなーと思いながらまた目をつぶる。


8時。カレーのいい香りで目が覚める。

想像より1時間多く寝てしまったと思いながら跳ね起きる。

裸足で歩くと床の冷たさが足を伝ってくる。

「おはよう」

まだぼやける視界に翔太君がうつる。朝から好きな人を見れるなんて幸せだ。

「おはよお~」

エプロンを付けてキッチンに立つ彼が鍋をかき混ぜているのを見てお腹がすくのを感じる。


急いで顔を洗うとまだ水が温まりきっていなかった。

大雑把に髪にくしを通し一つに束ねる。寝巻のまま席に着く。

「カレー作ってくれたんだ!ありがとー!」

昨日私が食べたいといったのを覚えてくれていたのかと思うとたまらなくうれしい。

「甘口だよ」

そういいながらカレーをテーブルにおいてくれた。湯気が立っていてとてもおいしそうだ。


「いただきます!」

彼も席に着いたのを見てスプーンを握る。一緒にいただきますを言うのが2人の数少ないルールだ。

「おいひい」

猫舌の私にはまだ熱かったけどとっても美味しかった。

「1晩寝かせたでしょ?」

「わかる?」

「わかるよ!コクがあってまろやか!」

ふざけたように言う私に翔太君がくすくす笑う。

それを見るたび毎回上品に笑うなーと思う。


「今日はーお墓参りね」

「だね、11時ぐらいに出ようか」

今日は私の母の命日だ。毎年翔太君とお墓参りに行くのが恒例になっている。

空を見ると晴天。意外と夏より春のほうが雲が少ないよなーなんて考える。

空から見た地上は綺麗に映るのだろうか。



ーーーーー ーーーーー ーーーーー

車のハンドルを握る。行先は彼女の母のお墓だ。

この車は彼女と付き合って半年の時に買ったものだ。

2人で買いに出かけ、彼女が一目ぼれしたブラウンの小さな車だ。

最新のデザインの車が多い中で唯一穏やかそうな印象を与える車だった。


あかねはいつも通りのプレイリストの音楽をいつも通りリズムに乗りながら聞いている。

今の時代運転の種類は二つになった。地上から行くか空から行くか。

僕たちはあかねの意思でずっと地上を走っていた。

「途中でコンビニよろうか」

「チョコ買う、チョコ」

遠足に来たような顔をした彼女が言う。チョコが好物らしい。


ーーーーー ーーーーー ーーーーー

歩きなれた墓地で足を一歩ずつ動かす。

お墓って不思議な雰囲気があるよなーなんて思いながら角を曲がる。

「加藤」とかかれたお墓が目に入る。

それと母が好きだった黄色の花がさされている。

「パパか…」

小さくつぶやいた言葉が翔太君にも聞こえたのだろう。静かにうなずいている。

私たちが買った花も黄色の花の横に入れ込む。なかなか豪華になってしまった。

お墓は汚れていなかったけど軽く水をかける。ポタポタと地面に向かって流れていく。

線香のにおいが鼻をかすめた。独特だが不快感はない匂い。

静かに手を合わす。

―ママ、私今幸せだよ。

私の笑顔が大好きだった母はこの報告に笑ってくれるだろう。

あの母の笑顔も今は遺骨になって表情も感情も表してはくれないと思うと心がツンとなる。

人はみんなこの形で終わりを迎えることが確定しながら生まれると思うとなんとも無情だなと思う。

私は命が尽きるとき跡形もなく消えてしまいたいと思う。

私が持っていたものもすべて消えてしまえばいい。

じゃないとあなたは私が生きていたことの証明品に心を痛めてしまうだろう。


どうか1000年後も幸せに一番近いところで笑っていてよ。


ーーーーー ーーーーー ーーーーー

お墓の前で膝を折って手を合わせる彼女は遠足に行く子供のような表情とは打って変わって、静かな一人の女性だった。

僕も彼女の横で手を合わせる。毎回何を想えばいいのかわからなくて「どうか安らかに眠っていてください」と思う。いつか何を言うべきかわかる日が来るといいのだが。

目を開けると彼女もその3秒後ぐらいに顔をあげる。

立ち上がった彼女はいつもより小さく見えた。


「今日あそこ行こうか」

彼女に提案する。

「行く!」

と即答するあかね。振り向いた彼女がいつもの明るい笑顔だったことに安心する。


あそこ、とはここから少し離れたキャンプ場だ。

山に入るだけなら200円ですむので月1ぐらいの頻度で夜に訪れては星を眺めるのが僕たちの趣味だった。


ーーーーー ーーーーー ーーーーー

「ねえ、あれしし座じゃない?」

彼女が指さす夜空には満天の星が広がっていた。

やっぱり都市から離れると空がきれいだった。

あかねはレジャーシートの上で寝転がったりカップラーメンをすすったりを繰り返している。

僕も湯気の立つカップラーメンを口に入れながら夜空を見上げる。

ただただ綺麗だなと思った。

横を見るとあかりも黄昏るような表情をしながら星を見つめている。

ー星を見ると毎回感傷に浸ったような顔をするな。

人間の性なのだろうか。

星を移した彼女の目もきらきらと光っていてこちらも綺麗だな、と思う。

何億年たっても孤独を知らない星々を少しうらやましく思う。

ーーーーー ーーーーー ーーーーー

満天の星の中に大きな三日月が見える。

小さいとき私はお月様は一人ぼっちでさみしいから私を追いかけているのだと思っていた。

追いかけているように見えるのは目の錯覚だと知ったとき少し寂しかったのを覚えている。

月も結局は地球とずっと隣り合っているわけだし、太陽も孤独なのだと思っていたけれど惑星に囲まれていた。

世の中を知れば知るほど孤独を感じるのは人間だけなのかもしれない、なんて考える。

目を閉じると春の夜の風が頬をかすめる。

こんな日がずっと続けばいいのに、と切に思う。

ーーーーー ーーーーー ーーーーー


君へ

どうか幸せに一番近い形で笑っていてください。

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