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カレー

深夜。

あかねが寝返りを打つ音にペンを止める。

すやすやと寝ている姿に安心し再びペンを握りなおすが何を書けばいいのか急にわからなくなる。


「あかねへ」から始まり終わりは見えない便箋。

数年前に始まったこの手紙は人生で初めて書く手紙だった。できればいつか君に読んでほしいと思う。

出会いから終わりまで、葛藤から幸せまで、謝罪からお礼まで、1から100まで全部吐露してしまいたかった。

ぺらぺらと何枚にもわたる便箋をめくり、軽く目を通すとその日食べたもの、あかねがどんな反応だった、どこへ行った、どんな気持ちだ、とかまるで日記のような内容がつづられていた。

この手紙があかね宛なのかはたまた自分のためなのかよくわからなくなり、この感情が知らない誰かのデータなのかもしくは自分から生まれた感情なのかわからなくなる。

ずいぶん人間らしくなったものだ、と思いながら1を100にできても0を1にできない自分はあかねと同じ温かさは持てないことを自覚する。自覚させる。

もう今日は書けないな、と思い「今日はここで終わり。5575年4月6日」で今日の話を締める。

自分の中を巡る規則的なノイズがどうも心地悪かった。



ーーーーー ーーーーー ーーーーー

自分に睡眠がいらないことは理解してるから深夜とは言えどキッチンに立つ。

無造作に置かれた調味料やコップを軽く片付けるとコンロの前の鍋を覗く。

あかねが食べたいと言っていたカレーだ。

彼女が言うに一晩寝かせたカレーが最高らしく、素直に従っているところだ。

喜んでくれたらいいな、と思い蓋をかぶせる。

早く朝になればいいのに。カーテンを覗くと町が人工的な光を放っていたが心はどうも明るくはならなかった。

ペタペタという自分の足音をリビングに残し、寝室に帰る。

また寝返りを打ったのだろうか、さっきと反対方向を向いている彼女に頬が緩くなるのを感じた。


ーーーーー ーーーーー ーーーーー

今日は病院へ行った。

君が無機物のように見えてとても怖かった。

同じくらいの寿命を手にしたいけど君が僕になるのではなく、僕が君になりたいと思った。

ハンバーガー食べた。ハンバーガーが大きいのか君が小さいのかよくわからなくて面白かった。

それから

今日はここで終わり。 5575年4月6日


ーーーーー ーーーーー ーーーーー ーーーーー



僕はずいぶん弱くなったみたいだ。










読んでいただきありがとうございます!(このコメントは物語と関係ありません)

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