タイトル未定2026/01/21 19:42
翔太君と出会ったのは5年前だった。
たしか病院の帰り道で通り雨にあってしまった。
私は真夏だったから多少濡れてもいいかと思い、雨宿りすることなく家に直帰しようとした。
「あ、人間の子だよあれ」
町を歩いているとそんな声が聞こえて一気に身が引き締まる。
興味本位で口にしただけならいいが、追われでもしたらたまったもんじゃない。
迷わず足を早めるとさっき声を出した男たちがついてくるのがわかる。
雨で視界がぼやけてしまい足元をうまく見れていなかったのだろう。
もしくは緊張で足が震えてしまっていたのかもしれない。
小さな石に足を取られてしまった。
転ぶ!と思い反射で目をつぶったが顔に触れたのは固いコンクリートではなく服の柔らかい感触だった。
思わず視界を開くと無愛想そうだが目は優し気な男がいた。
「大丈夫ですか?」
怪訝そうな顔で尋ねてきたその男に「た、たすけて…」と声が漏れる。
男は私の背後の男に目をやると「ああ、なるほど」と言い私の目をふさいだ。
5秒も経たない頃だろうか、目から大きな手が外れ後ろを振り向くとさきほどの男性たちが横たわっていた。
思わず息を飲んだが「大丈夫ですよ、すぐ回収が来ます」といい踵を返した男の手を思わずつかむ。
冷たい手で多分、この男も人間ではないのだろうと察した。
でも何だろう。私も乙女なわけでこんな恋愛漫画みたいな展開に胸が高鳴らずにいられなかった。
手をつかまれたことに驚いたような顔をした男が「どうしました?」という。
「あの!お礼にご飯でも行きませんか!?」
多分今世紀最大の勇気を振り絞った。
そんな提案を承諾された時の喜びは今でも覚えてる。
そんな恋愛漫画の一コマみたいな出会い方をした無愛想そうな顔をした男こそが、今の彼氏、翔太君だ。
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でも後から気づいたんだ。あの時素直に私が引いてればあなたはそんな悲しまなかったよね。




