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空の向こう側  作者: 双鶴


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第6話 次のステップ

翌朝、優翔はいつもより少しだけ軽い足取りで学校へ向かった。

昨日の動画を投稿したあと、胸の奥に残った熱がまだ消えていなかった。


教室に入ると、友達がいつものように話しかけてくる。


「おい優翔、昨日のサッカー見た?」

「今日の英語、小テストあるってマジ?」

「昼さ、新作パン出るらしいぞ。行くべきだろ」


優翔は笑って返す。

いつも通りの会話。

でも、心の奥では別のことがずっと動いていた。


――動画、どうなってるだろう。


授業が始まると、優翔はノートを開いた。

気づくと、ページの端に細長い三角形を描いていた。

翼の角度をどうするか、無意識に考えていたらしい。


「……やべ」


慌てて消しゴムで消す。

誰にも見られていない。

でも、心の奥では少しだけ笑っていた。


放課後、優翔は家に帰らず、学校近くの図書館へ向かった。

昨日のコメントが頭から離れなかった。


――迎角、いい感じ

――次はもっと飛ぶはず

――応援してる


その言葉が、優翔の背中を押していた。


図書館の自動ドアが開くと、ひんやりとした空気が流れ込んだ。

静けさが心地いい。

優翔は自然と深呼吸した。


航空・科学の棚を探す。

昨日と同じ場所に、模型飛行機の入門書があった。


ページをめくると、紙飛行機とは違う図が目に入った。


「ゴム動力模型グライダー」


翼が大きく、胴体が細い。

紙ではなく、バルサ材で作る本格的な模型だ。


さらにページをめくる。


• 翼の取り付け角

• 水平尾翼の役割

• 重心位置の調整

• ゴム動力の巻き方



知らない言葉が並んでいる。

でも、昨日よりも理解できる部分が増えていた。


「……これ、作れるのかな」


自分に問いかける。

答えはわからない。

でも、胸の奥がざわついた。


紙飛行機では届かない“次の空”が、そこにある気がした。


優翔は本を閉じ、静かに息を吸った。


家に帰ると、両親はまだいなかった。

いつもの静けさ。

でも今日は、その静けさが“準備の時間”に思えた。


机の上に紙飛行機を並べる。

昨日よりも丁寧に折る。

図書館で見た図を思い出しながら、翼の角度を微調整する。


「迎角……これで合ってるのかな」


わからない。

でも、やってみるしかない。


部屋の中で投げる。


ひゅっ。


紙飛行機は、昨日よりもさらに滑らかに飛んだ。

壁に当たる直前まで、ふわりと浮くように。


「……よし」


優翔はスマホを構えた。

録画ボタンを押す。


今日も声は入れない。

代わりに、冒頭に手書きのメモを映す。

文字は小さく、紙の端には折り跡が残っている。


「次のステップ、考えてます」


それだけ。

でも、その一言に優翔の“決意”が滲んでいた。


紙飛行機を投げる。

昨日よりも飛ぶ。

その様子を淡々と撮る。


タイトルはこうした。


「【初心者】鳥人間を目指す高校生の紙飛行機日記 #5」


投稿ボタンを押すと、胸の奥がまた少し熱くなった。


動画を投稿したあと、優翔は窓を開けた。

ビルの隙間を抜ける風が、ゆっくりと部屋に流れ込む。

その風の向きや強さを、自然と観察してしまう。


「……次は、バルサ材かな」


つぶやいた瞬間、胸の奥が静かに震えた。


紙飛行機の先にある“次の空”。

そこへ向かうための一歩が、確かに見えた気がした。


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