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一代の魔神:玉旗西域  作者: Blue Magic
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第7章 - 契丹の狼騎兵団

血が滲み、月華の体は揺れたが、それでも膝を折ったままだった。


鉄雄は大砂漠に轟く雷のような声で咆哮した。

――「鉄雄の娘が敵を讃えるだと?! 貴様、狼騎会の面目を潰したと知っているのか!」


一人の配下が慌てて跪き、懇願した。

――「ご主人様、どうかお嬢様をお許しを...」


鉄雄は冷笑した。

――「誰が口を開けと言った?」


彼の指が軽く弾かれると、細い鋼のような毒気が部下の胸を貫いた。男は絶叫して倒れ、激しく痙攣し、口から泡を吹き、やがて絶命した。


月華は唇を噛みしめ、俯いてその瞳の動揺を隠した。


兄の鉄山は後ろに立ち、柄を握りしめ、怒りをこらえたが、声を上げることはなかった。


鉄雄の笑い声が大砂漠に轟く雷鳴のように響き渡った。

――「なるほど...あの二人こそ《隠剣医人》と《血影飛刀》か! ハハハ...ますます興が乗るわ!」


彼は口角を吊り上げ、刃のような視線で虚空を切り裂き、殺気は営舎を呑み込まんばかりに渦巻いた。


鉄雄はジンギス・カンの騎馬画に指を突きつけ、低くも嵐のごとき声で言った。

――「我は鉄の姓を持つ。チンギスの末裔を名乗るつもりはない。だがその大漠の戦意は確かに継いでいる! 貴様らの腑抜けぶり、契丹の恥辱だ!」


その眼光が一掃すると、幕中の騎兵たちは一斉に額を地に叩きつけ、雷鳴のごとき声を上げた。

――「復国! 復国!」

――「大遼! 大遼!」


外からも響き渡る声。

――「狼騎会のために死す!」


月華はなおも跪き、頬には掌の痕が残る。心は荒れ狂う波。

彼女は悟った――もはや退路はない。次の戦い、死ぬのは自分か、趙可欣か。


* * *


同時刻、ウルムチ(オルモチ)── 新疆の一角にある街角でのことだった。


地下の実験室では、遠心分離機が規則正しく回る音が響き、冷たいネオンがステンレスの作業台を照らしている。試験管には淡い青色の液体が揺らめき、まるで溶けた水晶のように光っていた。


程嘉毅(Trình Gia Ý)は手袋をはめ、試料の葉に「碧藍散ティーラン」の一滴を垂らした。瞬く間に葉は縮み、葉脈は紫色に変色し、組織は崩れて刺激臭が立ち上った。郭雪嫻(Quách Tuyết Nhàn)は口を押え、顔をしかめた。

――「恐ろしい......これは先週入手したあの『サ・ティーラン』の猛毒そのものだわ。細胞が数秒で死んでしまう。」


程は目をそらさず、低く答えた。

――「見ただろう? 碧藍散は凍結と急速な酸化で栄養を奪い、細胞を弾けさせる。酸のように溶かすのではなく、圧力で破壊するんだ。」


そう言って彼はキャビネットから乳白色の試薬瓶を取り出し、残りの葉に数滴垂らした。不思議なことに、紫に変色していた葉脈の広がりはそこで止まり、縁の部分はやがて乾いていった。


郭はぱっと顔を上げた。

――「これは......?」


程は疲れたように口元を緩めた。

――「オアシスに生える薬草の根から抽出したアルカロイドだ。もし凝固段階を中和できれば、血管内で毒の進行を止められる。言い換えれば......解毒剤は存在し得るということだ。」


郭は喉を鳴らし、低い声で言った。

――「だが、人で試すには時間が必要だ。」


程は小さく首を振り、表情を曇らせた。

――「時間があまり残されていない。一旦狼騎会(Lang Kỵ Hội)が戦場で碧藍散を使えば......命を失う者が出るだろう。」


突然、程は振り向き、郭に厳しい声で問うた。

――「雪嫻、本当のことを言え......どうしてお前は以前から碧藍散のサンプルを所持していたんだ? 西域でさえ稀な猛毒だ。自然に手に入るものではないはずだ。」


郭は一瞬黙り、マスクを外して緊張した顔を見せた。低く、かすれた声で答えた。

――「あの頃、軍医に一件の症例がありました。若い士官が行軍中、不明な矢に肩を貫かれたのです。最初は小さな傷でしたが、間もなく全身が痙攣し、皮膚は紫色に変わり、血管が膨張しました。我々は内通者の仕業を疑いました。」


程は眉を寄せた。

――「結果はどうなった?」


郭は息を吐き、震える目で言った。

――「即座に集中治療室に送られ、我々は血漿交換を三度、心マッサージを二度行った。なんとか命はとどめたが......片腕は永久に機能を失った。」


彼女は言葉を切り、重く続けた。

――「そのとき、私は解析のために傷の体液を少しだけ保存することを願い出た。まさか......それが碧藍散だとは思わなかった。」


程は言葉を失い、やがてゆっくりと頷いた。

――「ということは、この毒はすでに国内に流入していた。初めてではない。狼騎会がこれを大規模に使用すれば......悪夢が再来するに違いない。」


郭は拳を固く握り、断固とした口調で言った。

――「解毒剤を一刻も早く調製するしかない。たとえ困難でも、やるしかないのです。」


* * *


キャラバンサライにて。隊は灯油のランプが低い木の卓を照らす暗い隅に集まっていた。趙可欣(Triệu Khả Hân)はすでに回復していたが、腕にはまだ包帯が巻かれ、陳明軍(Trần Minh Quân)の肩に身を預けていた。


隣の卓では李啓栄(Lý Khải Vinh)が地元のビールを飲み、銃を手元に置いている。浩南(Hạo Nam)は棍を地面に打ち鳴らし、退屈そうに、そして不安げにしていた。玉真(Ngọc Trân)はせっせと記録を取っていたが、視線はしきりに外へ逸れていた。


そのとき、キャラバンサライの門から騒ぎが響いた。商人の一団がラクダを引き、顔は怯え、衣は砂に汚れている。先頭の男がたどたどしい共通語で叫んだ。


――「聞け! 北からの急報だ! 狼騎会が出陣した! 契丹が狼旗を掲げ、南へと進軍している!」


宿場はたちまちざわめき立ち、酒杯を放り投げる者、荷をまとめて夜のうちに出ていく者が続出した。


別のウイグル商人が震える声で言った。

――「彼らは...砂に埋もれた古城ニヤを包囲するつもりだ! そこにいる者は皆、墓に入ることになる!」


玉真の顔が青ざめ、思わず口をついた。

――「まさか...ニヤは我々の次の目的地じゃない!」


浩南はビールを噴き出し、顔を強張らせた。

――「くそっ...やっと休めると思ったのに、今度は狼の巣に飛び込むのか。」


混乱する宿場。祈る者、走り去る者、呻く者。角の席で陳明軍は可欣の肩を軽く抱き、遠い目で重く言った。

――「運命は決まったようだ。ニヤで我々は奴らと相まみえる。」


可欣は唇を噛み、弱った手でなお飛刀を握りしめ、震える声で、しかし燃える瞳で呟いた。

――「狼騎会の女...今度こそ譲らない。」



数日の行軍ののち、隊はついに砂に埋もれた古城を見た。トルファン東方に位置し、黄土の壁は崩れ、半ば砂丘に沈み、折れた櫓は灰色の空へ乾いた骨のように突き出していた。砂嵐は壁の隙間を唸りながら吹き抜け、砂粒はさらさらと落ちて、まるで古の亡霊が囁くようであった。


趙可欣が先頭に立ち、カランビットを腰に、飛刀を下げて門の残骸をくぐる。中庭の石畳は砂に覆われ、かすかに梵字が刻まれた柱だけが残っていた。


彼女は氷晶のような精石を石台に置き、気を込める。冷気が白い霧となって砂を覆い、彼女の体を震わせたが、なお心を鎮め、吸収を続けた。


陳明軍は隣に座し、掌を石床に当てる。地脈の竜気が震えて体内を流れ、汗が額を伝う。

――「少しずつ取り込むんだ。欲をかけば、自らを壊す。」


可欣は深く息を吸い、瞳は氷の輝きを宿した。



翌朝、可欣は松明を手に廃墟を探索した。崩れた壁の影から砂漠のゴキブリが這い出し、羽音を立てた瞬間、彼女は青ざめて叫び、飛刀を放り出し、陳明軍の首にしがみついた。


冷徹な飛刀の女傑が、虫一匹に怯える。軍は微笑んで彼女を抱きしめ、囁いた。

――「万の軍勢に怯まぬお前が...虫に負けるのか?」


彼女は顔を真っ赤にし、何も言えずにしがみついた。


そのとき松明の灯りが壁の裂け目に差し込み、砂が崩れて古い浮彫が現れた。玉真が拭うと、地下を這う巨大な龍と、水脈を示す波が浮かび上がった。その脇に、かすれた古代文字が残されていた。


――「砂に埋もれし水、眠れる龍脈。呼び覚ます者、血肉を代償とする。」


李啓栄は目を細め、呟いた。

――「これは...龍脈の地図か?」


陳明軍は刻みに手を触れ、地の奥から熱の震えを感じ取った。

――「ニヤは外縁にすぎない。本当の龍脈はさらに深く...タクラマカンの砂がすべてを呑み込む場所にある。」


可欣は軍の肩にしがみついたまま、炎に照らされた瞳を輝かせた。

――「つまり...私が氷晶や古井戸から得た力は、ただの表層だったのね。」


軍は頷き、重く答えた。

――「そうだ。我々が見てきたものは始まりにすぎない。本当の龍脈こそ...契丹も我々も求めるものだ。」


彼の瞳に、常の剣戟を超えた決意の光が一瞬、宿った。



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