第6章 - 飛刀・古弩
一行は同時に振り返った。誰も言葉を発しなかったが、その瞳は弓を引き絞ったかのように張り詰めていた。
石扉が軋みを上げて開くと、月華が姿を現した。灰色の衣をまとい、両手には青白く光る二本の湾刀、背には小型の鉄弩を背負い、弦はすでに張られている。
彼女は冷笑し、夜風のような声で言った。
――「趙可欣......お前の〈殺影門〉の飛刀は、数多の命を奪ったと聞く。だが果たして、この弩の矢よりも速いのか?」
可欣は深く息を吸い、瞳を光らせ、飛刀を握りしめて一歩踏み出す。
「月華、契丹の毒婦よ! この飛刀は命を奪うだけでなく、お前の驕りも斬り裂く!」
月華は眉をわずかに吊り上げ、嘲るように笑う。
――「大言壮語だな。では何手持つか、見せてもらおう。」
二人は同時に駆け出した。鋼と鋼が激しくぶつかり、火花が散る。
可欣のカランビットは短く鋭く、虎の爪のように抉り裂く。
月華のシミターは長く重く、三日月の弧を描きながら猛然と襲いかかる。
狭い石の回廊に、金属の衝突音が轟き渡り、火花が壁を赤く照らした。
戦いは一進一退。やがて月華は鉄弩を抜き放つ。
――「可欣、これこそが〈寒月古弩〉の威だ!」
「カチン!」矢が唸りを上げて放たれる。
しかし、可欣の飛刀が空を裂き、矢とぶつかり合い、火花が舞った。
沈黙の刹那の後、再び二人はぶつかり合う。
飛刀と矢が交錯し、火花が散る。
回廊の壁に凭れた古の白骨たちが、まるで再び戦乱を見守るかのように浮かび上がった。
ついに可欣のカランビットが月華の喉元に突きつけられる。
氷のような刃が皮膚に触れ、冷気が漂う。
可欣は息を荒げ、鋭い声で告げた。
――「飛刀だけなら勝てなかっただろう......だが今は違う。」
月華は一瞬沈黙し、そして薄く笑った。
二人は同時に武器を収める。
――「趙可欣、〈殺影門〉の女傑よ......今日はこれで十分だ。」
そう告げて月華は身を翻し、灰衣の姿は闇に溶けた。
◇
戦いが終わると同時に、可欣の右腕は凍りつき、彼女は苦痛に顔を歪める。
「明軍......腕が......冷たい......」
陳明軍は落ち着いた声で言い、彼女の脈に手を当て、温かな気を流し込む。
「心配するな。これは龍気と氷精がまだ馴染んでいない反応だ。時間が癒す。」
氷の白気が彼の掌に吸い込まれていき、やがて可欣の腕は温もりを取り戻す。
彼女は息を吐き、肩を預ける。
――「あなたがいなければ......耐えられなかった。」
◇
隊は砂漠のキャラバンサライに辿り着いた。
赤土の壁、アーチの門、吊された油灯、香辛料と焼肉の匂いが漂う。
隊は羊肉の串焼きとパン、地酒を囲み、笑い声が戻る。
その夜、明軍と可欣は二頭のラクダを借りて砂丘を進む。
夕陽が砂漠を紅に染め、風が衣をなびかせる。
可欣が指差す。
――「見て、明軍。まるで炎の海......でも、不思議と穏やか。」
明軍は静かに頷く。
「砂漠は厳しい。だが、その傷跡さえも美しい。だからこそ、歩む価値がある。」
二人の影は並び、夕陽の中で寄り添う。
やがて唇が触れ合い、熱と冷が溶け合う。
可欣は囁いた。
――「どんなに遠く離れても......今日を忘れない。心は常に、あなたと並んでいる。」
砂丘の上で明軍と可欣が寄り添っているその時、少し離れた場所では、玉真と浩南が二頭のラクダを引きながら偶然その光景を目にした。
玉真は慌てて顔を背け、頬を真っ赤にしながら小さく呟いた。
――「もう...砂漠の真ん中で、何をしてるのよ...」
浩南は顎に手を当て、からかうように、しかしどこか本気の笑みを浮かべた。
――「まあ、あの二人は夫婦だからな。広大な砂漠でこんな光景が見られるなんて、きっと歴史に残る恋物語だぜ。」
玉真は唇を噛み、必死に真面目な顔を装ったが、その瞳はきらめいていた。
浩南は振り返り、声を少し真剣にして、温かい眼差しを向ける。
――「ありがとうな、真。お前がいてくれると...俺は本当に心強い。」
玉真は一瞬ぽかんとし、すぐに顔をそらし、こらえきれない笑みを隠した。
その瞬間、黄金色の風の中で、二人の影はラクダを引きながら並び歩き、遠くの明軍と可欣の姿と対を成すように伸びていった。