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一代の魔神:玉旗西域  作者: Blue Magic
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第4章 - 戦端を開く

日が沈み、隊はようやく野営地に辿り着いた。

砂漠の風がテントの柱を叩きつけ、布地がバタバタと鳴る。焚き火がパチパチと揺れ、炎の光が仲間たちの顔に踊っていた。


李啓栄リ・カイエイは銃を磨き、その目は鋼のように冷たい。

陸玉珍ルー・ユウジェンは土のサンプルを記録し、吐魯番トルファンの研究所に送信していた。

高浩南ガオ・ハオナンは二度も風に倒されたテントをようやく立て終え、砂まみれで肩で息をしていた。


――「くそっ、家じゃ扇風機でも嫌なのに、ここじゃテント一つで死にそうだ!」

浩南は文句を言いながら、インスタント麺の鍋を見つめる。


その時、陳明軍チェン・ミンクアンは静かにバックパックを開け、地面に二振りの湾曲した刃を置いた。

炎の光が鋼を照らし、虎の爪のようにギラリと光る。


趙可欣チャオ・カシンが目を見開く。

――「これは...?」


明軍は低く答える。

――「虎爪刀フージャオダオ。マレーシアの武術に残るカランビットだ。」


彼は刃を掲げ、手首を返す。光の弧が走り、虎が獲物に飛びかかる影を思わせた。

――「虎は一撃で獲物を仕留める。その爪と筋肉を模した武器が、これだ。」


鋭い弧を描く刃が炎に閃く。

――「一撃必殺。だからこそ、お前も学べ。」


可欣は息を呑み、刃を受け取る。冷たい鋼に触れ、手が震える。

――「刃は外に、手首は柔らかく。掴みすぎず、緩めすぎず。刺す、抉る、引き抜く――一呼吸で終わらせろ。」


彼女は頷き、ぎこちなく振った。シュッと刃が光り、瞳に決意が宿る。


横で浩南が口を尖らせる。

――「ええ? 二人だけ? 俺は麺を食べてろってか!」


明軍はちらりと見て言う。

――「学びたいなら、まず基礎だ。ヌンチャクを出せ。」


浩南は渋々渡す。明軍が振ると、ブンブンブン――風が唸り、落ち葉が円を描いた。

――「力を制御し、円を乱さない。それが出来て初めて技になる。」


浩南は唾を飲み込み、頭をかいた。

――「ヌンチャクに芸術があるとはな...参った!」


皆が笑い、焚き火の空気が和んだ。


翌朝。

テントに露が滴り、砂漠の冷気が漂う。浩南はあくびしながらぼやく。

――「寒すぎてフォーが欲しいわ...」


明軍は呼ぶ。

――「可欣、来い。」

彼女は立ち上がり、虎爪刀を構える。

――「覚えろ。直線ではなく、隙間を抉るように弧を描け。」


スパッ――枯れ木に鋭い切り口が刻まれる。

――「いい。型に囚われるな。武術は自ら悟れ。」


後ろで浩南がヌンチャクを振り回し、バサッと頭巾を飛ばしてしまう。

仲間は爆笑し、可欣は真剣に刃を握り締めた。


午後。

ジープは古代カレーズの跡地に停まる。

掘ると、青く光る水が溢れ出した。


可欣が触れると、冷気と熱気が同時に体を駆け抜けた。

――「これが...龍気...!」


明軍は低く言う。

――「誰もが耐えられるものではない。」


玉珍は水を採取し、封じ込める。

彼女が古いカードを取り出し、一枚をめくった。

――「...ミイラ?」


沈黙が落ちる。

――「眠れる過去が...砂の下で目を覚ます。」


浩南は青ざめて笑う。

――「やめろよ、昨日テントで死にかけたのに!」


可欣は刀を握り、目を光らせた。

――「古墓でもミイラでも構わない。龍気は必ず掴む。」


その時――ドドドッと蹄の音。

盗賊の群れが叫びながら迫る。

――「馬も武器も食料も置いて行け!」


槍が飛ぶ。

可欣の刃が閃き、ガキンッ――槍は折れ、砂に散った。


明軍が低く言う。

――「行け、可欣。これは試練だ。」


彼女は飛び込み、刃が敵の手首を裂く。血が砂を染める。

浩南も叫び、ヌンチャクで敵を打ち倒す。


銃声が夜を裂き、李啓栄が制圧する。


明軍は肩に手を置き、言った。

――「良い。一撃を忘れるな。」


そこへ灰色の外套の剣士が現れた。

――「小僧ども、面白い腕前だな。」


刃が走る。浩南は怯むが、明軍が背に手を添えた。

熱が流れ込み、力が漲る。

――「振れ、浩南!」


ガキィン! 火花が散り、剣が弾かれる。浩南は渾身の一撃で敵を吹き飛ばした。

可欣も刃を走らせ、敵の腕を裂いた。


血が砂に滴る。しかし明軍が制止する。

――「もういい。俺は医者だ...無駄な殺しはしない。」


刃が砂に突き刺さり、敵は呻きながら退散した。


風が唸り、カードの「ミイラ」が炎に揺れた。

――砂漠はまだ、眠ってはいなかった。


挿絵(By みてみん)

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