第13章 - 玉旗の秘宝、手に入れるべきか?
暗い裂け目の中、趙可欣は岩陰に身を潜め、心臓が激しく打ち震えていた。言葉の一つ一つを聞くたびに血が煮え立ち、冷たい流れが背筋を走る。彼女の目は血走り、呼吸は抑えきれないほど荒い。
ついに彼女は飛び出し、洞窟を切り裂くような声を放った。
――「外道め! お前の娘は忠義を尽くし、逆らうこともなかった! だがあの子は死んだ――父であるお前が、その命を覇道のための捨て石にしたからだ!」
その怒声は洞窟全体を揺るがし、可欣の瞳は鋼のように閃いた。石壁が震動し、鉄雄は一瞬凍りついたが、すぐに獣のような咆哮を轟かせた。
鉄雄は嘲るように笑い、砂利を噛み砕くような声を吐いた。
――「殺影門の伝人がここにいるなら、西川剣の継承者も近くにいるはずだな。」
暗がりから陳明軍が歩み出る。彼は平然と答えた。
――「その通りだ。」
その声は一転して冷たく突き刺さった。
――「だが苦痛ごときに、俺は屈しない。お前たちがウルムチを出て、龍脈を辿るごとに、俺は常に影のように後ろから追っていた。漏れ出した龍気はすべて吸収した――一片も残さず。だから今の俺はかつてなく強い。」
呉玉珍は堪えきれず叫んだ。涙で目を赤くしながら。
――「あんたは無差別に殺した! 薬を運ぶだけの無実の看護師まで!」
鉄雄は洞窟に響き渡るような笑い声を放った。
――「馬鹿め! あの毒にどんな解毒剤が効く? 助かったように見えただけだ! 龍気を吸ったから回復したと勘違いしたのだ。薬のおかげだと思うとは、笑止千万!」
鉄雄の視線は可欣に突き刺さる。
――「忘れるな。お前が月華を倒したあの日、鉄山は妹の亡骸を抱き、泣き叫んでいた。俺はその場に潜み、すべてを見ていたのだ。胸が引き裂かれる思いでな!」
その哄笑が石壁を震わせ、大地は魔鼓のように鳴り響いた。可欣は憤怒に身を震わせながらも、全身が凍りつくように冷たかった。
――「苦痛を知りたいのか? ならば本物を味わえ!」
可欣が絶叫し、目が剣のように閃いた。彼女は跳び上がり、月華の弩を肩に構え、指を引き金に叩きつける。矢は雨のように放たれた。
鉄雄は即座に合図した。彼の傍らで劉万龍と二人の護衛は身を引き、冷ややかに笑いながらも目には計算の光が宿っていた。彼らは動かず、かわりに契丹の騎兵たちが一斉に突撃してきた。洞窟の入り口から黒い影が洪水のように流れ込み、叫び声と共に槍や剣が閃いた。
陳明軍は言葉を費やさなかった。彼は軽く蹴り、竹影剣を高浩南に投げ渡した。その動きは稲妻のように速かった。
――「撃て!」
その一言は雷鳴のごとき命令だった。
浩南は剣を受け取り、銀光を閃かせて振るった。明軍は深く息を吸い、完全に練り上げた内功を指先に集めた。沙中十三掌――掌力は砂嵐のように巻き上がり、直線ではなく渦を巻き、敵の進路をへし折った。広間中に砂塵が舞い上がり、四人の騎士が血飛沫を撒き散らして倒れ込んだ。
一方、可欣は弩を休むことなく撃ち続けた。矢は雨のごとく降り注ぎ、敵を射抜き、武器を弾き飛ばし、足を貫いた。倒れる音、叫び声が交錯し、狂気の交響曲を奏でた。
浩南は剣を振り乱し、呉玉珍を背に守りながら突撃した。だがある瞬間、剣が手から離れた。彼は躊躇せず、腰のホルスターから劉凱栄の託した拳銃を抜き、引き金を引いた。無秩序な射撃だったが、数人の騎士が血を吐いて崩れ落ちた。
洞窟は爆ぜるような戦場となった。金属の衝突、飛び散る石片、負傷兵の呻き、煙と血の臭い――。明軍と可欣はまるで双剣のように連携した。彼は掌で敵を薙ぎ払い、彼女は矢で敵を遮る。騎士たちは次々と屠られたが、外にはまだ無数の影が押し寄せていた。
入口付近で鉄雄は動かず立っていた。瞳は真紅に燃え、冷酷な笑みを浮かべて戦況を見守っている。その隣で劉万龍は首を傾け、冷ややかに目を光らせていた。彼は軽く手を振り、新たな兵を投入する合図を送った。
暗黒の混乱の中、砂がぱらぱらと落ちる音が響く――爆ぜるように、また沈黙するように、それは生と死の橋のリズムのようだった。
ミン・クアンは一方の腕でハンを庇い、もう一方の腕で掌を打ち続ける。顔色は蒼白だが、その瞳はなおも戦火の炎を宿していた。
ハンは息を荒げ、唇を固く結ぶ。弓弩は熱を帯び、震える指先でなおも矢を放ち続ける。それはまるで宿命の命令のように。
契丹の騎士たちが倒れ伏し、死者と傷者が積み重なり、残った者たちは恐慌状態で逃げ散った。洞窟の奥は呻き声だけが残る静寂となった。
外の光の中から、鉄雄が悠然と歩み入る。塔のようにそびえる巨体。炎に照らされ赤く燃える双眸、その全身から殺気が溢れていた。
彼は巨大な手をハンに向けて差し出し、雷鳴のような声を轟かせた。
――「鉄家の家伝の弩...返してもらおう。」
趙可欣は唇の血を拭い、高く顔を上げ、氷のような視線を返す。
――「欲しいなら...自ら奪いに来い!」
直後、鉄雄は咆哮し、こめかみの血管が盛り上がる。全身から膨大な気が噴き出し、岩壁が震え、砂塵が降り注ぐ。空気は鉛のように重く、呼吸さえ圧し潰される。
一瞬の後、彼は足を踏み砕き、大鷲のように飛びかかる。風を裂く轟音が響いた。
ハンは身を震わせ、弩を連射する。「ヒュン!ヒュン!ヒュン!」――矢は空を裂いたが、全て鉄雄の掌に掴み取られた。残像すら追えぬ速さ。
鉄雄は唇を歪め、凶悪な笑みを浮かべ、矢を一気に投げ返した。矢は凶器となり、死の雨となって逆襲する。
ハンは転がり身をかわし、腕を岩で擦りむきながら必死で避ける。一矢が衣を裂き、背筋に冷気が走る。
砂塵が舞い、弩は粉砕された。蒼い光に照らされた鉄雄はまさに修羅神のよう。
可欣は双刃を抜く間もなく、巨大な影が迫る。虎の爪のような掌が彼女の手首を掴み、骨が軋む音が響いた。
もう一方の掌が雷鳴のごとく振り下ろされる。ハンは歯を食いしばり、左掌で受ける。冷気が爆発し、氷結が肉体に刻まれる。
「バキバキ!」――氷の鎖が鉄雄の掌を覆い、彼は苦鳴を漏らし半歩退いた。
その瞬間、背後から咆哮が響く。
――「受けてみろ!!」
ミン・クアンが迫り、両掌を合わせ、全力の掌撃――十三式「砂中十三掌」を放つ。
「ドォン!!」
砂塵が渦巻き、無数の砂粒が背に突き刺さる。洞窟の壁に鋼の雨のように弾けた。鉄雄は咆哮し、血を吐きながらも全身の気を爆発させ、二人を壁際に吹き飛ばした。血が喉から迸る。
しかし彼はなおも屹立し、赤い眼を可欣に向ける。
――「なるほど...お前が吸収した氷晶も、龍脈と同根か。だからこそ強い...」
鉄雄は口の端を拭い、大音声で笑う。
――「二人とも...実に戦うに値する武者よ!今日の戦い...満足だ!」
そして胸や肩の経絡を指で突き、骨を鳴らす。次の瞬間、天に咆哮する。血管が浮かび、筋肉が膨張し、皮膚は石のように黒く硬化した。
空気はさらに重くなり、殺気が充満する。
ミン・クアンは拳を握り、低く呟く。
――「天骨不壊...奴は不死の功法を成した。ハン、破る術を探せ!」
鉄雄は歓喜に燃え、山崩れのような連撃を叩き込む。二人は血を吐きながらも必死に耐える。
骨がきしみ、皮膚が裂け、血飛沫が飛ぶ。
周囲ではハオナムと玉珍も血まみれで必死に銃火を放ち、外の雑兵を抑える。
ミン・クアンとハンは互いに背を寄せ合い、龍気を合わせた。視界に鉄雄の経絡が網のように浮かび上がる。
二人は目を合わせ、一言もなく理解する。
ミン・クアンが正面を受け、ハンが背後から要害を突く。
「行くぞ――俺が前だ!」
可欣は無言で頷く。
鉄雄が突進。クアンは命を賭して正面から受け止める。その隙にハンが背後を取り、氷の指で経絡を突く。
「ドン!」――巨体が痙攣し、呼吸が乱れる。彼が振り返る前に、二人は再び位置を入れ替えた。
こうして彼らは、血を吐きながらも、互いに盾となり刃となり、連携し続けた。