一週間前から親友と喧嘩しています!もう知りません!
「はぁ……」
ファミレスで溜息をつく少女、夏織は、友人二名に相談をするためにファミレスに来ていた。
「まーだ仲直りしてないの?信太と」
「まだー……」
「二人の言い合いをもう二日も見てない。今回は長い」
そう言いながら、静かにバニラアイスをつつく少女、姫香。
もう一人の強気そうな少女、瑠海はパフェをパクパク食べながら夏織に言う。
「いい加減謝ったらどう?」
「それは……嫌だ」
「意地張ってる」
「……あいつから謝ってくるまで、絶対に許さないから」
「「はぁ……」」
一体何で喧嘩をしたのか。そういう事情は分からないものの、これは長引きそうだ、と姫香は頭を抑える。
「……そういえば、そろそろツガイ式の日」
「あー!そういえばそうじゃん!!」
「姫香は参加するの?」
「そりゃあ、当然じゃん!」
そう言って胸を叩く姫香。
ツガイ式、というのは、高校三年生の時に行われる、自身のツガイと呼ばれる存在を見つけるための特殊な儀式を行う式典である。
ツガイ、というのは、人生におけるベストパートナーとなる人物の事を指し、結ばれることで、互いに多大なる利益をもたらす。
大昔においては、五感のすぐれた獣人族、そして魔力感知に長けたエルフのみが、自身のツガイを発見することができていたが、今は現代社会。
進歩した学問は、ヒューマンやドワーフと言ったツガイを判別できない種族においても、ツガイを見つけるための手法を見つけた。
ということで、ベストパートナーを見つける式典。それが、ツガイ式という物になる。
「あたしもツガイと一緒になって、うはうは生活を送るんだ~!」
「姫香は強欲」
「当然じゃん!瑠海はエルフだし、すぐにツガイを見つけられそうだけどね~」
「私はいい。愛や恋とかよく分からないし。……姫香はすごい」
そういってわちゃわちゃと二人がやり取りする中、ぼそりと夏織がつぶやく。
「……私も参加しようかな」
「「!!??」」
そのぼやきに、ぎょっと視線を向ける姫香と留美。
「えっ、噓でしょ!?」
「……やめた方がいいと思う」
「……いーや!やってやる!信太よりいい男見つけて、信太を見返してやるんだ!」
そう強い意志を固める夏織に、二人はため息をついた。
――一方こちらは放課後の教室。
男子四名がトランプでお菓子を賭けながら遊んでいた。
そこに突っ込まれる爆弾発言。
「俺、ツガイ式、参加しようかな……」
「「「は?」」」
信太の友人たちは、信太の爆弾発言に空いた口がふさがらなくなる。
「おまっ、夏織さんという人がいながら!?」
「だって、あいつが謝らないから!!」
「あ~、そういや、お前達、もう二日ぐらい口きいてねぇもんな」
そう言ってぱっぱと上がってしまうのは龍太郎。
一位だからとさっさと掛け金のお菓子のなかから自分が食べたいものを取っていってしまう。
「俺も運命のかわいこちゃんとにゃんにゃんしてぇよ~!」
「お前はそもそもツガイ見つかってないにゃん」
そういって涙を流しているのが狼獣人の桓人。
それに冷静に突っ込んでいるのが、猫獣人の大智だ。
ツガイ式は、基本的には獣人やエルフは参加できない。
流石に自分で探せる種族に裂く時間やコストが足りないからだ。
大智は自身のツガイを見つけ、交際を始めているが、桓人については未だにツガイが見つかっていない。
人が生涯出会う人物の大半は、二十代前後であると言われる中、ここまで見つからないのは中々に薄いところを持ってきている感じもする。
「……まぁ、どうなっても知らないが」
そう言ってため息をつく龍太郎。
「龍君は参加しないのかにゃ~?」
「俺はいいよ。……なんか、自分のツガイが分かっちゃったら、今後の人生選択に、いつでもツガイのことが絡みそうだからな。そう言ったことで煩わされたくないというのが本心だ」
「くっそ!俺もツガイじゃないやつと付き合おうかな~?でも、もしツガイと出会った時、どうなるか分からないからな~……」
「……なんか、獣人も意外と大変そうだな」
そして、時は流れる。
教室、信太と夏織は目があった瞬間に、すぐに目をそらす。
その様子に、クラスメイト達はざわめく。
「おい、まじかよ、これでもう4日も話してねぇぞ!?」
「こんなになる喧嘩の原因って何なの?」
「俺、今なら駅前の喫茶店のパンケーキが喰えるかもしれねぇ!」
「私も。なんか甘い物不足」
そうして、二人が仲直りを完遂することなく、ツガイ式、その当日を迎えた。
ツガイ式では基本的に出席の生徒と、参加の生徒が存在している。
出席の生徒は、ツガイの判別までは行わないが、もしも参加した生徒のツガイであった場合等は、その場で呼び出されることになる。振られたりしたら気まずい。
「え~本日はお日柄も良く」外は大雨である。
「今日という日が迎えられたことを~——」
「「……」」
今日という日においても、冷戦状態にある二人。
いよいよまずいのでは?とクラスメイト達は緊張感を持って二人を見ている。
校長の長い長い長い話が終わると、いよいよ本題のツガイの判別が行われる。
ツガイの判別というのは水晶玉に手をかざすことによって行われ、相性度と相手の顔が出てくるようになっている。
順番に水晶玉に触れていき、ツガイ相手がが画面に表示されていく。相性度に関しては、その後に紙で貰える。
校内にツガイがいれば幸運だが、もちろんそんなことはなかなかなく、時には行政からツガイ相手の住所等の提供もありつつ、式は進んでいく。
そうしてだんだんと信太の順番が迫るたび、だんだんと緊張は増していく。
先にちらりと横の方を見ると、二、三人後に夏織がいる。
――もし、運命の相手が夏織じゃなかったら。
そう思うと不安でいっぱいになっている信太。
しかし、すぐにその考えを振り払う。
――そうだ。俺は夏織じゃなくて、もっと可愛くて優しい女の子と出会うためにこの式典に参加したんだ!
いよいよ信太の番になる。
今、水晶に触れれば、全てが変わるだろう。
きっと、夏織とバカやり合っていた頃に戻ることなんてない。
――さぁ、押せ、押すんだ!
そうは思っていても、手が全く動かない。
ドキドキと心臓の鼓動が張り裂けそうになる中、しびれを切らした先生が来る。
こういった緊張で水晶に触れない、というような生徒も当たり前に存在するため、先生が補助として、一緒に押してくれるのだ。
その場合、二人分の顔写真が画面に表示されることになる。
そうやって、緊張をほぐすのだ。
先生がやってきて、信太の手を掴むと、ゆっくりと水晶玉に手が近づいていく。
水晶玉まで、後1メートル、50センチ、10センチ。
信太はもう何も見ないとばかりに目を閉じると、
「だめ――――っ!!!!」
と信太を押し出す手を感じた。
先生はひょいと避けたが、信太と夏織はゴロゴロと転がる。
「ごめんねっ!!私が悪かったの!」
そう言って夏織は涙ながらに信太を見ると、信太も顔を歪める。
「俺こそ意地張ってごめんっ!!!つまらないことで夏織を傷つけた!!」
そう言ってひしっと抱き合う二人。
――しばらくの後、二人はそそくさと下りようと起き上がるが、そこに馬鹿でかい声が響き渡る。
『おぉっと!!??こんなことあっていいんですか!?』
どうやら、舞台裏の声が漏れているらしい。先ほどからアナウンスの作業を進めていた女性の声が響き渡る。
『この二人、相性最高じゃないですか!!こんなの初めて見ました!!』
相性?なんのことかと画面を見る夏織と信太。
――そこには、丁度に分割され、二人の顔が乗った写真があった。
『もう、こんな相性値、有り得ませんよ!こんな値が有り得るんだったらきっとこの二人はもうバカップルにでもなってますって!』
そう言われて、お互いに見つめあう二人。
式典で、二人の痴話喧嘩の仲直りをする。
それは、言われた通りのバカップルそのものだった。
『こんなの、ヒューマンかどうかに関わらず、出会った時から大好き状態でしょ』
だんだんと、夏織の顔がゆでだこみたいに真っ赤になっていく。
『周りに砂糖振りまいて、きっと彼らの周りの人、甘党かブラックコーヒー好きしかいませんよ』
ちらりと二人がクラスメイトに目をやると、クラスの半分ほどが、ブラックコーヒー片手に事の顛末を見守っていた。
そんな様子に耐え切れなくなったのか、突然夏織が「ひゃぁっぁぁあああ!!!!」と駆けだして、会場を後にする。
信太もハッとすると、「夏織っ!!夏織~~!!!!」
と追いかけていく。
その瞬間、クラスメイト達はブラックコーヒーを一気に飲み干した。
「ほぅ。やっと落ち着いたか。じゃあ、私の理想の旦那さんは~と!」
そういって、姫香が水晶に手をかざすと、そこにはいつも隣でコーヒーを飲む、親友の姿が。
「……え?」
「……気づいちゃった?もう逃げられない」
姫香「ちなみに喧嘩の原因は?」
信太「カレーをナンで食べるか」
夏織「パンで食べるか」
大智「犬も食わない喧嘩にゃ」
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
あなたの読書人生に良い本との出会いがありますように!