チーバノ大学の受験秘話
前略っ!
日本語クラスの 2回目が終了しようとした矢先に、NASAへテレポーテーションしてきた宇宙人留学生が教室に戻ってきました。
「よかった!ずいぶん、手間どったみたいだね。お疲れ様でした」
日本語クラスの講師であるネズミ助手が教壇の上から労いの言葉をかけました。
驚いたのは、日本語クラスの学生たちです。
なぜかというと、ネズミ助手が声を出すまで、教室内に先生がいたことを知らなかったからです。
ネズミ助手は、身体のサイズを自由自在に変えることができるため、最小サイズで教壇の上に座っていたのです。
ですから、誰もその存在に気が付かなかったのです。
ちなみに、日本語クラス1回目にも臨席しておりました。
ネズミ助手の生まれた惑星は、気の小さい性格の人が多く、それが特徴ともなっています。
「先生、いたんですね!」
シュウくんがそう言うと、ネズミ助手は「うん」と頷いたのです。
ネズミ助手はテレポーテーションできる宇宙人留学生に名前を尋ねました。
「キミ、名前は何て言うの?」
「スターメシヤと言います」
「すごいねー。出身惑星は、宗教が盛んなのかな?地球で最も有名な救世主をメシヤと言うんだよねー」
「いいえ、違います。銀河星団をテレポーテーションで行き来し出前をする、巨大なレストランチェーン店の御曹司なんです」
メシヤは飯屋だったのです!
ネズミ助手は「…そうなの?」とだけ呟きました。
シュウくんが「テレポーテーションできるなんて凄いねっ!」と興味津々でスターメシヤに話しかけます。
スターメシヤは、少しだけ照れて「そう?」と嬉しそうです。
「実は、僕、推薦枠の一芸入試でチーバノ大学に合格したんだ」
みんなが驚き「えぇーっ⁉︎ すごいねー」と大歓声です。
「一芸入試の一芸って、テレポーテーションのこと?」
「うん」
スターメシヤは、うなずきつつ付け加えました。
「ウチの星では、みんなテレポーテーションができるから、いいのかな?って、思ったけど…」
みんながシーンと静まり返りました。
「僕は、実家から通学しているし」
シュウくんが「じゃあ、通学時間はゼロ時間なんだね、きっと」と感心したように質問すると、星の飯屋は「イヤ!結構、かかるよ」と疲れた様子で答えたのです。
なんでだろ…
みんなが疑問に感じているようです。
「ほらっ、チーバノ大学のパンフレットに記載があるじゃない。通学に要するに時間について。正門から入り歩いて15分程で講義棟に着く、って」
「えっ?まさか、テレポーテーションで正門の前に着いて、そこから講義棟まで歩いているの?」
「うん。僕達、歩くの苦手なんだ。地球人は、みんなよく歩くから凄いと感心して見てた」
シュウくんは、こう心の中でつぶやいていました。
それは、地球人にはテレポーテーション能力が無いからだよ…
つまり、NASAには教室内からテレポーテーションで行き、帰る時には正門から歩いて来たのです。時間がかかった理由を全員が納得したワケです。