13.お茶会
私たちはキッチンに移動した。キッチンでは料理長がオーブンの前でミトンをつけて待っていた。
「良い色に焼きあがりましたよ」
料理長がパイを取り出しながら言った。
「まあ、良い香り」
レミ様がにっこりと笑った。
「美味しそうな色に焼けていますね」
パールたんも嬉しそうだ。
「……クライブ様、気に入ってくださるかしら」
小さな声でパールたんがつぶやいた。
私たちがパイの出来について話していると従僕がキッチンにやってきた。
「お嬢様、クライブ様がいらっしゃいました」
従僕が私に声をかける。
「客間にご案内してください」
私の指示を聞き、従僕は頭を下げた。
「わかりました」
私が客間に入ると、弾んだ声で話しかけられた。
「やあ! リーズ嬢! お招き感謝する」
クライブが紅潮した顔で立ち上がる。
私の後から入ってきたパールたんとレミ様を見たクライブは、落胆した。
「なんだ? お前、こそこそしてると思ったら、ここに来ていたのか? お前もリーズ嬢に呼ばれていると、何故言わなかった?」
「お兄様の浮かれた気持ちに水を差したくなかったの」
すました顔でレミ様は言った。
「あの、おじゃましてしまって……申し訳ありません」
パールたんが一歩あとずさってクライブに言った。私はパールたんの手を取り、パールたんに微笑みかけて小さく首を横に振った。
「クライブ様とパール様はあちらに、レミ様は私の隣におすわりください」
皆が席に着いたとき、料理長とメイドが、焼き立てのパイを三つ持って来た。
「一つのお皿に三種類のパイが乗るように切り分けていただけますか?」
「はい、少々お待ちください」
パイはサクサクと食欲をそそる音を立てて切り分けられた。
四人の前にそれぞれパイの乗ったお皿が置かれた。
「どれも美味しそうだが、誰がどれを作ったんだ?」
クライブが微笑みながら私に尋ねた。
「食べて、当ててみてください」
私はにこやかに答えた。