12.休憩
「さあ、パイが焼きあがるまで何をしましょうか」
私が言うとレミ様とパールたんは首を傾げた。
「そうですね、今日は天気もいいし……中庭を見せてくださいませんか?」
レミ様が言うとパールたんも頷いた。
「良いですね。それでは中庭に行きましょう」
私が中庭に向けて歩き出すとパールたんとレミ様も後に続いた。
中庭に出ると、花の香りのする風が髪を撫でた。
「今日は気持ちのいい天気ですわね」
レミ様が空を見上げる。
「そうですね」
パールたんも上を向く。
「本当に」
私も空を見た。青い空に白い雲がいくつか浮いていて、日差しが気持ちいい。
「それにしても、リーズ様はお料理が上手になられましたね」
「ええ」
リーズ様とパールたんの言葉に、私は口をぽかんと開けた。
「は?」
思わず間の抜けた声を上げてしまう。だって、砂糖と塩をまちがえたのに?
「前にお伺いした話だと、料理をしてみたらキッチンが家事になったと……」
レミ様が微笑みながら言うとパールたんも「お怪我がなくて良かったです」と言った。
「えっと、まあ……人は変われるのですよ」
私も微笑んで返事をしたが、そこまでだったのか、と思った。道理でお父様も料理人も私に料理をさせたがらないわけだ。
「ところで、今日はどうしてクライブお兄様も誘ったのですか?」
レミ様の発言を聞いたパールたんが私の目を見た。
「……まあ、その」
「もしかして、リーズ様もお兄様のことが好きなのですか?」
「も?」
私が聞き返すと、レミ様が得意げに頷いた。
「お兄様はリーズ様のことを……好きですもの。今日のお茶会に呼ばれたときも目を輝かせていましたもの。リーズ様がお姉さまになるのも悪くないですわね」
パールたんが俯いた。
「違いますわ!」
思わず大きな声が出た。レミ様は首を横に振り、私をたしなめるように言う。
「そんなに照れなくても大丈夫ですわよ」
レミ様は楽しそうに笑っている。パールたんも遠慮がちに微笑んでいた。
「あの! 誤解しないでくださいませ!!」
私が必死に否定していると、メイドがやってきて私たちに声をかけた。
「お嬢様、パイが焼きあがりました」