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百年後 ブサメンゴリラは超イケメン

 「そう、見た目だけでなく、男性としての機能が衰えたの。精子の数も運動量も減って…… その上、性欲自体も。その気になれない男性が増えてしまったの」

「俺の時代も草食男子とか言って、少し取りざたされていましたけど」

「それが、極端に進んだ感じね。だから、少子化も進んで。今ね、日本、一億人を切っているのよ」

「その、女性の方はどうなのですか?」

「女性の方はあまり変わってないのよ。性欲もあるし、恋愛もしたい!」

 やけに力の入った言い方をした。

「大体が、体外受精などの治療での妊娠なのよ。人工子宮なんかはまだ出来てないから、妊娠自体は昔のまま。だから、女としては、男性と恋愛をして、セックスをして、妊娠したいわけよ。わかる?」

 わかる? と言われてもどう言ってよいのか?

「ツルッとして綺麗なだけの中性的で精力のない男より……」

 ウットリをした表情を浮かべる。

「オスゴリラみたいにガッチリしてて、手足も太くて力強そう」

 グサ

「ヒゲがもう生えてきてる。体毛もある」

 グサ 

「エラ張ってるし、喉仏もしっかり出てる」

 グサ

「なにより、精力強そう!!」

 グサ――ーーー!!!!!!!

 葵は嬉しそうにしている。本人は褒めたつもりなのだろう。 でも、ちっとも、まったく、褒められた気はしない。

「太郎君は男としての魅力がすごくあるのよ。こんな男性は今じゃ希少なのよ」

「あれは、本当に、からかいでなかった?」

「ええ、本気。えっと、太郎君の時代では、カッコイイもてる男性の事をどういうのかしら?」

「イケメンですかね」

「なら、太郎君はこの時代では、超イケメンね!」

 超イケメン? 生まれて17年、一度も言われたことない。

 感情が追い付いてこない。

「……そ、そうなのですか……」

「納得した? 太郎君がすごく魅力的だってこと」

 ニコッとした。源五郎丸と同じ笑顔。笑うと目じりが下がる所なんかも。

「太郎君?」

「はい?」

 ドキッとする。

「な、何でしょう? 山下さん」

「あら、葵でいいわよ。ちょっと、お願いがあるの」

 今までの話の流れからすると……

「願いって?」

 動悸が激しくなる。 全く、経験ないし…… どうすれば……

「太郎君の時代に帰れるよう協力する。ここに住んでいいし、生活も保障するわ。だから、ね」

 唾を飲む。

「太郎君の身体調べさせて! 私ね、医大の院生なの。男性の中性化を研究している。こんな男性機能が完璧にある若くて生きた検体が手に入るなんて…… ああ、夢みたい!」

「は? け、検体?」

「そうよ。お願い! ね、いいでしょう!」

 熱い、熱い目で見つめられた。

 安堵すると同時に、ちょっぴり、ガッカリもした。


 葵は翌朝、内密に検査が出来る段取りをしてくると大学に出かけていった。

「身分を証明する事にはならないように気を付けてね。ポリスとか、病院とか。女性からの誘いは自分で判断して。ま、揉め事だけはさけてね」 

 そう言うと、家とブレスレットが俺の指示でも使用できるように設定して行った。

「百年後かぁ」

 昨日は意味が分からなくてちゃんと見ていない。興味半分、恐ろしさ半分で部屋を出た。

 部屋のドアも、エレベーターも、声一つで動き、アッと言う間にエントランスに出た。

 辺りに建つビルはデザインも色調も統一されていて、センスがいい。意外に緑が多い。道もタイル張りでデザインチック。お洒落だ。ビルとビルの間には広い庭もある。小鳥の声もする。空も青く澄んでいる。なんか少し意外。

 辺りを見わたしながら、ゆっくりと歩いていると……

「あの、何かお困りですか?」

 急に、後ろから声をかけられた。キョロキョロしていて不審がられたのか。

「あ、いえ、大丈夫です」

 慌てて、振り返って言った。

 俺と同じか少し下ぐらいの女の子が立っていた。肩までの黒髪、優し気な顔立ち、少し気弱そう。昨夜、会った女性たちとは違う。ギラギラしていない。俺と目が合った途端、ソバカスのある白い頬が赤く染まった。

「そ、それなら、良かったです」

 照れ臭そうに微笑むと、彼女は去って行った。

 ほんの一瞬だったが、なんだろう? 懐かしいような、ホッとするような、そんな思いがした。

 

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