表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

時をかけた ブサメンゴリラ

 「すごく胸板が厚くて、がっしりとしている。アゴも細くないし、ヒゲや体毛も濃い……」

 なめるように見ながら言う。近づくと制服の白シャツを触った。

「これ、天然素材よね」

 もう一度、全身を見る。 身の置き所がない。

「君、名前なんていうの?」

「お、……太郎です」

 苗字は言いたくなかった。また笑われそうで……

「太郎君か。レトロネームね。でも、かなり前から流行ってるからねぇ。私は山下葵。私もレトロネームでしょう」

 やはり、源五郎丸ではない。

「いえ、綺麗な名前だと思います」

「ありがと。 突然、変な事聞くけど、今日って、何年何月?」

「え? 今日? 20ⅹⅹ年6月ですけど?」

「20ⅹⅹ年? そう、で、どこに居た?」

「どこって、青空町2の……」

 葵はうなずくと、

「20ⅹⅹ年6月 青空町2 映して」

 と宙に向かい言った。

 途端、部屋の中に映像が浮かんだ。見慣れた景色、高校近くの住宅街。  

「あ、ここ、高校の近くの場所だ。どうなっているんだ?」

 映像は立体的でその場が目の前にあるかのようだ。

「青空町2、現在。 映して」

 葵が再び言った。

 映像が変わった。ハイセンスな店の並ぶ繁華街。後方には近代的なビル群。

「この場所、俺、気が付いたらここに居た」

「これは現在。21△△年の青空町2よ」

 え? は? 聞き間違いか? 21△△年って、百年以上の未来?

「嘘だよな。冗談ですよね?」

 葵の顔を見た。真剣な目。

「そんな…… 異世界じゃなくて、タイムスリップ? 信じられない。なんで?」

「私にも分からない。タイムスリップする前に何かあった?」

「……もう嫌だと思う事があって……その時、車に……」

「嫌だと思う事って、何があったの?」

「それは……」

 知られたくない。口ごもった。

「分かった。それはもう聞かない」

「タイムスリップなんて…… 本当なのかよ」

 でも、見た事のない建物、キューブ、目の前に浮かぶ映像。俺の時代の物ではない。

「どうしたらいいんだ? 帰れるのかな? もし、帰れなかったら……」

 母さんも父さんも、友だちにも、もう、会えないのか? 心配するだろう。

「私、タイムスリップの事調べてみるから。大丈夫よ。その間はここに居るといいから」

 慰めるように葵が言った。

「いいのですか? 迷惑じゃ?」

「いいわよ。大体、行くあてないでしょう?」

 ぐうの音も出ない。

「すいません。お世話になります。その代わり、その間はアルバイトでもして、せめて……」

「あー、ダメ。ムリムリ」

 葵は大きく手を振った。

「今は全人類がⅮNAレベルから登録されているの。どんな仕事でも、登録されていない人はつけない。出来るとしたら、犯罪にかかわる裏仕事かな」

「ええ、そうなんですか?」

「そうなの。あ、そうそう」

 葵は壁から細いブレスレットを取り出した。壁一面に収納場所があるようだ。

 ブレスレットを俺の腕にはめる。

「これでここに自由に出入りできるし、買い物もオッケーよ。通話とかもね」

 進化したスマホか? ブレスレットをシゲシゲ見ていると、

「ねぇ、繁華街に居たのなら、女性にモーションかけられたのじゃない?」

 葵が意味有り気にほほえんだ。

「モ、モーションと言うか、からかわれましたけど」

「からかわれって、違うわよ。本気よ。だって……」

 俺の目を真っ直ぐ見てくる。

「太郎君、ものすごく魅力的だもの」

「は?」

 この人までからかのか?

「止めてください! これでも本気で傷ついているのですから!」

「違うって! からかってない。 本当よ。ね、あそこに居た人たちってどう思った?」

「……どうって…… 皆、すごく美形だった。アイドルみたいに」

「でしょう。特に若い男性が。女性にしてもいいような感じゃなかった?」

「そうですね。ツルッとしてて清潔感があって、お洒落で」

 葵はフッと口をゆがめた。

「ツルッとしてて清潔感か。あれね、ヒゲを生やしたくて生えないのよ。体毛などのムダ毛も。アゴの力も弱くて。それ以上に……生殖能力が、男性の生殖能力が弱くなってしまっているの」 

「男性の生殖能力が?」

「そう、ホルモンバランスが崩れ、中性化してしまったのよ」

 俺は啞然としながら、葵の説明を聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ