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あの子によく似た彼女

 違う。源五郎丸亜矢じゃない。目鼻立ちはよく似ているが、亜矢より数歳は年上みたい。

「す、すいません。人違いです」

 頭を下げた。だが、彼女は去らずに、近寄って来た。

「君、どうしたの? 腕から血がでているわよ。服も汚れているし」

 腕を触ってみた。血が止まらず、滴れ落ちている。ズキズキ痛む。

「痛そうね。大丈夫? 家はこの近く? 送っていってあげようか?」

 すんだ声。 声も似ている。

「家? あ、あの、ここ、どこなのですか? 迷ったみたいで……」

「ここ? 青空町2よ」

「え? 青空町の2? 嘘だろ?」

 高校のある住所だ。でも、地方都市の郊外。こんなに近代的な街ではない。どうなってる? あの世? 異世界? 頭の中がグルグルする。

「本当に大丈夫? 顔真っ青よ。何か訳あり?」

 何て言ったらいいのかすら分からない。

 そんな俺を彼女はジッと見る。

「なら、とらあえず、うちに来る? すぐそこのマンションなの」

「え?!」

 ビックリした。見ず知らずの男を?

「そ、そんな、大丈夫です」

 彼女はクスクスと明るく笑いながら言った。

「安心して、おそったりしないから。怪我も治療しなきゃ。来なさい!」

 

 彼女のマンションは本当にすぐ近くだった。シックな外観な高層マンション。 行くあてのない俺はひな鳥のように付いていった。1DKの部屋はモデルハウスのように綺麗。でも、何か違和感がある。何なのだろう? 部屋を見わたしていたら、隣室に行っていた彼女が手に何かを持ち戻って来た。

「さ、腕を出して」

 柔らかい布で傷を拭くと、スプレーを吹きかけた。サァッと痛みがひいた。傷の上に薄い膜がはり、一瞬で傷が目立たなくなった。

「これで大丈夫ね」

「これって、何ですか?」

「え? 普通の傷薬だけど?」

 こんな薬見た事ない。

「服も汚れているけど、洗ってあげようか?」

「いえ、いいです。大丈夫です」

 慌てて首を左右に振った。さすがにそこまでは……

「君も令和ファッション好きなの? 着こなしているね。センスいい」

「れ、令和ファッション?」

「今、若い子に流行っているよね。レトロ可愛いって」 

 訳がわからない。頭上に?をつけていると、

 グルルルル……

 盛大にお腹が鳴った。

「あら? お腹すいてるの?」

 めちゃ、はずい。

 彼女は部屋の端に行くと、引き出しからサイコロを取り出すと、直ぐ上に置かれた黒い箱に入れた。それを見ていて、ハッとした。この部屋の違和感。家電家具がないのだ。冷蔵庫も電子レンジもテレビもない。その時、黒い箱を開け、中のトレーを引き出した。トレーの上にはホカホカのオムライス。

「うお?!」

「何? 急にスットンキョウな声あげて」

「え? だって、サイコロが? これって……手品?」

 ケラケラと声をあげて笑う。

「君って、面白いね。新鮮」

 バカにされているのだろうか?

「さ、食べて」

 オムライスが目の前に差し出された。美味しそうな香り。こわごわ口に運ぶ。うまい! よく知っているチキンライスにホワホワ卵。思わず、ガツガツ食べた。

 そんな様子を彼女はジッと見つめている。急に恥ずかしくなった。

 お腹がすいているからといって、がっつき過ぎた。スプーンを止めた。

「全部食べなさい」

 そう言った後、恍惚とした目になった。

「気持ちいい食べ方ね。食は最大の欲求、楽しまなくてはね」

 源五郎丸亜矢に似た顔で言われると、ますますドキマギして食べれない。華奢なのに胸がある所も似ている。

「こ、これって、さっきのサイコロみたいな奴ですよね?」

 話を変える。

「キューブじゃない。え? 本当に知らないの? 冗談じゃなくて?」

 頷く。

「君、日本人よね…… いや、もう、どんな国にでも…… それに、迷ったって……」

 彼女は、突然、真面目な顔つきになると、俺の全身を観察するように見て来た。

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