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美男美女だらけ……ここは、あの世?

 目の前がチカチカする。やたら明るい。デザインにこった店が並んでいる。繁華街のようだ。道には多くの人が行きかいしている。

 ここはどこだ? いつの間にこんな所に? たしか……俺は……学校の近くで……

 ハッとした。

 そうだ。道路に飛び出して……ひかれた? これは幻覚か? それとも?

 ふと視線を感じる。見ると、同世代ぐらいの女の子がこちらを伺っている。二人とも綺麗な顔立ち。アイドルみたい。何なんだ? 何でそんなに見てくる?  何気に辺りを見わたした。そして、

「アレ?」

 と思った。ここに居る人たち、みんな、美形だ。細面で色白、目も涼し気で鼻筋が通っている。手足も長く、スラリとしている。全体的に線が細い。男も女も。特に若い男が顕著な気がする。まるで、全員がジャ〇-ズのアイドルみたい。いや、それより、マネキンっぽい。

「……死んだのか? ここって、あの世?」

 思っていたのと全く違う。三途の川も花畑もない。やたら近代的。

「本当に……あの世?」

 呆然としていると、俺を見ていた二人の女の子が近づいて来た。

「ねぇ、ちょっと、いいかな?」

 ツインテールの子が言った。アニメ声。

「は? 俺?」

 低いしゃがれ声が出た。

 女の子たちが奇声をあげる。目がかがやく。

「きゃあ! ステキ! 男らしい声!」

「お、俺の声が?」

 そんな事、初めて言われた。

 白く細い手をそっと伸ばしてくる。喉をなでる。何かを確かめるように、愛おしむように。

「ゴクリ」

 思わず喉がなった。

「すごい! こんなにハッキリと喉仏が……それに」

 指があごを登る。ゾクゾクとした快感が走る。あごから耳に指がはう。

「ヒゲがこんなに濃いい。ああ、なんて、男らしいの」

 恍惚とした瞳。

「何よ! ミカ! ミカばっか、ずるい!」

 もう一人の赤毛の女の子が叫んだ。

 途端、「罰ゲームだよ。キモ!」 奥田ミカの声が頭に響いた。

 ミカにからかわれて、罵倒にされ、源五郎丸と四宮のツーショットを見せらた。その上、あの世に来てまでバカにされるのか!

「お願い。私と付き合って。なんなら、二人一緒でもいいよ」

 二人がすり寄って来る。

「いい加減にしろ!  バカにするな!」  

 二人を払いのけた。すると、今度は、三十歳ぐらいのゴージャスな女が立ちふさがった。豊かなバストに引き締まったウエスト、プンと高そうな香水の香りがする。

「あんなガキじゃダメよね。私なら、絶対、満足させて、あ げ る」

 どこまでからかったら気が済む!

 この女も避けようとして、ギョッとした。周りの人たちが俺を見ている。アイドル並みのイケメンたちも。探るような、羨むような目で。

 たまらず逃げた。今日は逃げてばかりだ。こんなあの世ってあるのか?

  人込みをかき分け、建物と建物の間の狭い路地に逃げ込んだ。その時、建物の角で腕を擦った。

「いて!」

 鋭い痛みが走る。腕を押さえ路地を進んだ。上手くまけたのか誰もおって来ない。ホッとする。反対側に抜けると、街路樹の並ぶ綺麗な遊歩道にでた。遊歩道の向こうは広い道路。音もなくスポーツカーが走っている。そして、その向こうは近代的なビル群。

 ズキズキと痛みが腕をおそう。リアルな痛み。

「本当に、どうなってんだよ。まさか、ラノベみたく異世界に来たとか……」

 その時、コツコツと足音がした。遊歩道を誰かが来る。とっさに路地に身を隠した。人が通り過ぎていくのを伺った。若い女。そして、その横顔に息を飲んだ。  丸顔の童顔、垂れ目がちの大きな瞳。源五郎丸亜矢だ。こんな所で彼女に会うなんて! 

「源五郎丸さん!」

 路地から飛び出すと、大声で呼んだ。

 女性はゆっくりと振り返った。

「あ……」

 俺は固まってしまった。


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