03 バレンタイン
【side:マコ→カナ】
街のあちこちに飾られたバレンタインの文字。
そういえば来週の日曜だったと、カレンダーを思い起こす。
お世話になっているバイト仲間と店長に何か買おうかと、服を買いに来たついでに近くにあったデパートに足を運んだ。
魅惑の地下スイーツ売り場も気になるけど、ここは日頃見かけない出店が多い特設会場にいってみよう。
なんでこういう催事って上にあるんだろうね。さっきチラリと見えた帽子可愛かった。後で見に行こうかな。
周囲をなんとなく見ながらエスカレーターでぐるぐると上を目指す。
まさか、そこでカナに会うなんて思いもしなかった。
♡ ♡ ♡
有名デパートのバレンタイン特設会場でチョコを選んでいる男の子を発見。
中学生っぽい。わっかーい。かーわいい♡
純粋そうなあの顔は受けだね。受一択。それ以外認めぬ。
女の子だらけの中で、男の子1人でチョコを買いに来るとは勇気ある子だなぁ。おねーさん、応援しちゃう。
なるほど。好きな男の子にあげるチョコを選びにきたのね。そうだろう、そうだろう。
市販を買うって事は料理には自信なしかな?それとも手作りもしたけど、念の為に買っちゃおうってやつ?いいね、いいね。健気だね。可愛いね。
相手は同級生かな?いや、先輩もいい。教師とか塾の先生もいい。歳の差に加えて教え子と教師という背徳感。誰にも内緒のお付き合い、秘密の恋愛。
いい。いいわ。いいわね。
師弟愛、良き良き。
授業中に不意に交わる視線。バレちゃいけないのに追ってしまうのを止められない。
特にイベントの時はドキドキよね。鞄の中のチョコをいつ渡そうかそわそわしちゃうよね。
人目につかない場所で渡さなきゃ。
体育館裏?体育館倉庫?ダメよバレンタインに汚い場所はNGだわ。もちろんトイレもNG。嫌いじゃないけど、このイベントじゃないのよ。
図書館。んー違うな。あっ、理科の準備室。うん、いいな。じゃあ、理科の先生って事で。
放課後に連れ込まれた準備室。もちろん攻めの先生が生徒に分からないように鍵をかけておくのはお約束。誰か来るかもなんて焦る姿を愛でるのは常識でしょ。
『先生。これ、受け取ってください』
『ありがとう。食べてもいいかな?』
『もちろんです』
『うん。美味しい。君も食べてごらん』
そう言って口移しでチョコを渡すのよ。とろけるチョコと恍惚な生徒。互いに汚れた口の端を舌で舐め合うの。うひょひょ。
『せんせぇ、僕をたべて?』
ハイ、キタ。定番台詞。
捕食カモンな兎ちゃんの上目遣いで我慢するバカはいないよね。据え膳喜んで召し上がれ♪
準備室の机に仰向けに押し倒される生徒と、のしかかる先生。
白衣を忘れちゃダメね。ここポイントよ。眼鏡も忘れちゃダメ。そして眼鏡はいざという時に外すのよ。あえて付けたままというのも萌ッス。
仰向けもいいけど、うつ伏せもいいわよね。ただ、体勢的に強姦っぽいのがなぁ。萌えシチュだけど、迷うなぁ。うつ伏せからの仰向けもいい。
抱き起こしてお膝の上で向かい合わせも良い。
うん。いいね。いいね。
チョコの口移しだけじゃ物足りないな。体にもかけちゃう?ビーチくんにかけて舐め回しちゃう?
理科の先生ってちょっと変態っぽいよね。マッドかS属性のどっちだよね。Sに見せかけたMってのも嫌いじゃないけどね。
あ、ダメダメ。思考が流れた。
チョコをかけるなら溶けやすいのがいいけど、学校に持ってくるぐらいだから、生チョコっぽいのは無理かな。合間に湯煎するのも間抜けだしぃ。
うーん。
「どうしたらいいと思う?」
「何が」
ぐりんと首を回して、隣に立つマコちゃんに話しかけたら、興味なさそうにホワイトチョコフラペチーノをズズッと啜っていた。
美味しそう。後で一口もらっちゃお。
「もぅ。だから。チョコプレイよ。チョコプレイ」
「いつそんな話に?」
「え?さっきからチョコプレイ考えてたし。DKの体にチョコかけて美味しく食べたり、先生の先生にチョコかけてしゃぶったり?」
「溶けたチョコって熱くない?せめてチョコシロップにしたげなよ。火傷しても病院行きづらいじゃない」
「それ!」
「は?」
「そうよ!チョコシロップ!それなら熱くない。火傷もない。とろけた具合も滴り具合も最高ですぞ。しかも甘いっ!その上、白と混ざったりして苦甘シロップ。うひゃひゃ。美味いだろ?と舐めさせる攻め。ぐはっ!良き良きですよ。マコちゃん天才」
感極まってハグしようとしたら、顔をアイアンクローで止められた。
いやん。いけず。
「おま、しばらく黙れ」
「いやん。ここで偶然出会うとか、もう運命じゃん。私とマコちゃんは切っても切れぬ仲なのね。私、愛されてるー」
「私には運の尽きだわ」
もぅ。そんな事言って、私への友チョコ買ってるの知ってるんだからね。さっき見ちゃったもん。
ひひひ。私も特別チョコを用意してるんだもんね。
「14日遊びに行くね♪」
「来てもいいけど、チョコバナナは持ってこないでよね」
「えーー!?去年よりリアルに作れるようになったのにぃ」
「そうかそうか。今年のチョコブラウニーは要らないのね」
「いやぁ!いる!食べるー!マコちゃんスイーツいるーー」
「はいはい。それじゃ帰るよ」
「んもぅ。照れ屋さんめ」
仕方ない。改良版チョコバナナは弟にあげることにしよう。……咥えてるとこ写真撮らせてもらえないかなぁ。出し入れする動画でもいいんだけどなぁ。
ど、う、し、よ、っか、なぁ。どの弱味をチラつかせたら言う事聞いてくれるかな?
あー、楽しみ。
とりあえず、帰ったら理科教師×生徒を描こうっと。
*終わり*
カナ「結局、あの男の子は誰へチョコをあげるんだろうね」
マコ「罰ゲームとかおつかいとかじゃない?」
カナ「それは面白く無いから無しで」