ベラ、エイダにもの申す
ベラとエイダの契約時の会話。
翌朝、ダンとベラはエイダと面会し、これまでの献身を労われ、報酬の約束をした。また、街との交流を継続する旨をエイダから述べられ、何人かを人足や下働きとして長期的に雇用したいという申し出に、目を輝かせた。その選定をロズと話し合うよう求められ、退席を促される。ダンはすぐに部屋を出たが、ベラはなぜかそこに留まった。
ベラが、決意を秘めた表情でエイダに話しかけた。
「あの、ご主人様、無礼になるかもしれないんだが、言いたいことがあるんだ。あのお嬢様のことだよ」
エイダはわずかに眉を上げたが、「えぇ、どうぞ」と許した。
「あんな暗い石造りの部屋にずっといるのは体に毒だよ!また熱を出して起き上がれなくなったって言うじゃないか! お嬢さまが寝起きするようなきれいな部屋はまだできてないみたいだけど、仮の部屋でもいいから、移してやって欲しいんだよ」
「……ベラ、あなたがあの子を思ってくれているのはよく分かりました。ですが、こちらにも事情があるのです。……あの部屋に置くのは、あの子を守るためのこと。わたくし達も、あの子が住みやすいように考えているところよ。都から侍女も一人連れてきたので、あの子の世話はその者に任せています。心配しないで、熱は下がりましたよ」
ベラは納得できない顔をしたが、ぐっとこらえたようだった。エイダは優しく微笑んで「ありがとう、ベラ」と感謝を伝えて再び退席を促した。ベラは一礼して、部屋を辞した。
これまでのメルへの仕打ちを糾弾されたようで胸が痛い。わたくしは、なんて莫迦なことを……。
エイダは立ち上がり、牢へと向かった。