⑮場面ごとに感情の波をより分ける為には、無視をしなければならない波が存在する。それが、何を生かすか、何を殺すかの。
コニャック、気づいているかしら?感情の波というのは、……感情というのは、感覚の芽なの。大きく大きく感覚が感情の波の中で芽生えることもあれば、……小さく、小さく、感覚が芽生えることもあるの。
……それはね、解るかしら?コニャック。
……その感覚の芽を拾うことが出来るのは、その感覚の芽を意識出来た主体者の……『その時』でしかないの。
……それは、そうね、運のようなものなのかもしれないわ。……面白さを気づくきっかけなんて、殆ど奇跡みたいなものよ。
……コニャック、解るかしら?その感覚の芽を拾った時、人はその感覚を面白いと感じ、……そして、生涯、それに縛られるのよ。
……神経があり、感覚があり、感情がある人たちの中で、……人それぞれの方、個々で、面白いと感じるものが違うのは、……感情の波の中で拾った感覚の芽がどのようなものであるかが人によって違うからよ。
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……コニャック、難しい顔をしているわね。ごめんなさい。もう少し砕いて説明できるように試みてみるわ。
……たとえば、コニャックが嬉しいと感情を思うタイミングが違うのは、嬉しいと思うまでにそこに物語という過程があるからよ。
それは、その感情に至るまでの歴史があるの。コニャック、あなたが生まれ落ちて、今のあなたの個として形成されるまでに起きたあらゆるあなたの歴史、変化、あなたの中での感情の記録の中で、拾ってきた感覚の芽がそれは嬉しいことだとカテゴリー分けしたからこそ、あなたはその出来事を嬉しいと受け取ったの。
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ややこしいかしら。感情というのは、シンプルなものではないわ。何故シンプルではないのかというと、大人になっていくにつれて、大きく振れる時の中での感情の波、変化の中の感覚の芽を人はそれぞれ記憶していて、常にカテゴリー分けを怠らないから。だから、感受性豊かな人とあまりそういったことに興味のない方に分かれる。
人によっては、そのようなことを解らなくとも違う方法で生き抜いているから構わないの。違う能力で。
感受性が豊かな人は、他者をよく観察して、様々な人の感情の波を見てきた方だわ。……数多くのカテゴリーを分ける中で、そのことに楽しみを見出す方もいらっしゃるかもしれない。別の娯楽で楽しみを見出す方もいらっしゃるかもしれない。全ては枝分かれしていく。