5話
テルユキ様が持ってこられたタッパーの中身はポテトサラダでした。
「これ、好物なんだよね」
そう言ってマヒロ様はポテトサラダを召し上がられます。
他にわたくしが刻みマヒロ様が炒められた人参の金平、レタスの上に乗せられた鶏肉の照り焼き、玉ねぎと卵の中華スープ、炊き立てのご飯が本日の夕飯となります。
マヒロ様のお食事が終わられ、食後のお茶をお飲みになっている時でした。
「タカユキ……タカくんはさ、テルくんのお兄さんで、私と同い年だったんだ」
少し冷めた湯呑を手で包むように持たれてマヒロ様がおっしゃいます。
「小学校で同じクラスになって、家も近くて。学校が終わってからも遊ぶようになったんだ。弟のテルくんとも仲良くなって、三人で一緒に育った」
「はい」
「私のところは小さい時に母と父が離婚してて。父に引き取られたんだけれど、やっぱり行き届かないところも多くて、タカくんのところのお母さんからも気にかけてもらってて、このポテトサラダみたいにたまに差し入れ貰ったりしてた。代わりに、花屋やってるタカくんところが忙しい時には、タカくんとテルくんがうちにきて父さんが面倒見たり」
家族ぐるみで親密なお付き合いをされているようでした。
「もう、三年前かな。突然見つかった病気で、タカくん手術するってなったんだ。けど、タカくんは戻ってこれなかった」
テルユキさまがおっしゃられていた命日が近い、というのはそのことだったのでしょう。
「テルくんも、実の兄がいなくなってつらいはずなのに、こうして気を使わせてしまってる」
そしてマヒロ様は俯かれてしまいました。
ふと、外からパラパラという音が響いてきました。雨が降り出したようでした。
「雨、降ってきたね」
「そうでございますね」
「片づけ、しようか」
「かしこまりました」
片づけが終わった後、マヒロ様は仕事があるといってガレージへと再び籠られました。