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ちょっと時間止めてくる  作者: 神崎竜
第1章 旅立ち
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第1話 エアナとの出会い

第1話です。書いてみると、意外と長くなりそうです……

気づいたら目の前に真っ青な夏空が広がっている。


あれ、おっかしーな。確か俺、ついさっきまで仕事していて、家に歩いて帰っていて。少女の声がしたから振り向いたら通り魔風の長身フードがいて。ついうっかり飛び出して、それで……。


そう、タケルは車に轢かれたはずなのだ。それが、こうして青空を見上げているところを見ると。


「死んだのか?ここは、天国か?」


ゆっくり、自分の状況を確認する。上下紺のスーツで革靴。ダウンジャケットを羽織っている。紺色のネクタイをし、カッターシャツを着ている。手持ち鞄の中には、スマホ、パソコン、タブレット端末、仕事用のノート2冊、ペンケース、家の鍵、大正製菓の板チョコ、駄菓子のハクサイ三郎が入っている。


タケルは、広い草原の丘に大の字で横たわっていた。空は青く澄み渡り、日差しが心地よい。いや、むしろこの格好ではかなり暑いというのが正解か。遠くには、てっぺんが白くなっている山々が見える。とにかく、牧歌的なのどかな風景がひろがっていた。なるほど、改めて確認しても、天国に来たと聞いて納得できる状況だ。


「そっか、死んだのか…。」


今のところ、実感がない。今は周りへの興味が上回った。

タケルは起き上がると、なだらかな丘をとりあえず下ることにした。誰か、他にも人がいるかもしれない。ここらの状況について話を聞こう。


ぶらぶら歩いていると、すぐ近くの茂みから1つの影が飛び出して来た。


「ポケモンかよ!」


状況からそうつっこんだが、出て来たのはあんまりにもかわいくない生き物だった。

タケルはこの生き物をこれまで見たことがない。体長は60cmほど。全身が土気色をしており、頭には小さなツノが2本あり、二足歩行で、腰にボロ切れをまとい、手に何やらバットのようなものを持っている。友好的な動物でないのは雰囲気で読み取れた。


「まじか。天国にも悪魔っているのかな。」


悪魔というより、RPGで出てくるゴブリンそのものの格好だ。とりあえず、ゴブリンと呼ぶことにした。数歩の距離に出現したゴブリンは、驚いたようにこちらを見た後、手にした棒を振りかぶって飛び上がり、タケルの頭めがけて襲いかかって来た。あまりの速さに、タケルは


「あ、やべ!!」


といって鞄で顔を守るのが精一杯だった。


ばしいっ


衝撃音。しかし、タケルには衝撃がこない。恐る恐る目を開けると、目の前には若い女性と、女性の顔の高さで浮遊している小動物の後ろ姿があった。先ほどのゴブリンは、数m向こうに吹き飛ばされている。


「ちょっと、大丈夫、あなた。」


女性が話しかけて来た。目があって、タケルは思わず息を飲んでしまった。顔がこれでもかというほど整っていた。歳は18歳くらい。黄緑のショートヘアーに、水色の大きな輝く瞳。肌は白色。中世ヨーロッパの普段着チックな白いローブを着ていた。声はハキハキしていて、活気がある。


「はっ、いかん。見とれていた。俺はロリ属性はねーぞ。」


「え、何言ってるの?!」


「エアナ、危ない!」


白い小動物がそう叫ぶと同時に、吹き飛ばされていたはずのゴブリンが起き上がって、エアナと呼ばれた女性に襲いかかっていた。

小動物(とりあえずシルエットが猫っぽいから猫と呼ぶ)が眩く光る黄色の円盤状の何かを空中に出現させ、ゴブリンの棒を塞いでいた。


「 エアナ、油断しすぎ!」

「ごめん、レイ」


そして、女性が右手をかざし、ゴブリンに狙いを定めた。


「プレス!」


女性が叫ぶと同時に、掌を向けられていたゴブリンが吹き飛んだ。ゴブリンは目を白黒させながら、草むらの中に逃げていった。


「あ、危なかった……。君、ありがとう!」

「バカ言ってないで、早く逃げるのよ!こっち来て!」

「え、ちょ」

「そして、君じゃなくて、私はエアナ!」

「あ、はい、エアナ…さん??」


少し調子を狂わせながら、エアナはタケルの腕を掴み、丘を駆け下りていった。眼下に、街が見えて来た。


これが、タケルとエアナの出会いだった。

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