気づいたら異世界だった件
初めまして、神崎竜です。不定期に更新してまいりますので、のんびりと付き合っていただければと思います。少しでも、皆さんの人生のプラスになってくだされば幸いです。よろしくお願いします。
プロローグ「気づいたら異世界だった件」
目の前は綺麗な夏空だった。
エンドウ・タケルは26歳、社会人2年目。大学を卒業し、派遣会社の嘱託として働いている。会社の一大事業がひと段落し、就職後初めての長期休暇をもらった。といっても、5日しかないが……。
それでも、明日からの日々を思うと、タケルは開放感に包まれ、小さくスキップを刻みながら、意気揚々とすっかり暗くなった街中を家へと向かっていた。
ふと、誰かに声をかけられた気がした。
「気のせいか……?」
声のした方を振り向く。声の主と思われる若い女性はいなかったが、振り向いた先には、通りの反対車線で、手を繋いで歩く仲睦まじい親子の姿があった。
「あー、俺もあんな家庭を築きたいなあ……」
いつでも、理想だけは高く持っている。親子を眺めながら、漠然と思っていると、視界の端に、黒フードを深くかぶった長身の姿が映った。そのあからさまに怪しい出で立ちに、タケルの鳥肌が立つ。長身は、懐に手を入れると、足早に親子に向かって駆け出した。
「やばい!」
タケルはガードレールを飛び越えると、反対車線へ向かって疾走した。瞬間、クラクションの音が聞こえ、見ると、大型ダンプがすぐ目の前まで迫っており---
気づいたら目の前に真っ青な夏空が広がっていた。
次回から異世界での生活が始まります。