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The next dream  作者: 夢見月
2/4

二日目?

今日明日中って書いておきながら日付的にはもう明後日!?

ま、まだ寝ていないので明日です! 今日はまだ今日なんです!!


って、なんだかわけのわからない言い訳をしている人がいるそうですよ?

 目が覚めたのは、日の出の少し前だった。

「すぅ……すぅ……」

 起き上がろうとしたら、隣から静かな寝息が聞こえた。ゆっくりと首を回すと、机で眠っていたはずの謎猫さんの姿があった。

 ……ネコ耳少女というより猫だな。

 謎猫さんを起こさないようにベッドから抜け出し、朝食の準備をしておく。


***


「ふわぁ~……」

 謎猫さんが起きたのは、窓から朝日が差し込んできた頃で、外からは鳥のさえずりも聞こえた。

「おはようございます、謎猫さん。朝ごはんもう少し待ってくださいね」

「ありがとうございます…………どうして私はここで寝ているのでしょう??」

 無意識の行動だったらしい。

「僕が起きた時にはもうそこにいましたよ。目玉焼きは半熟かかた焼き、どっちがいいですか?」

「うーん、なんでもいいですよ♪」

 トースターにバターを塗った食パンを入れる。焼く前にバターを塗っておくと、パンに染み込んで食べたときに口の中にジュワっと広がる。ただ、柔らかいパンにバターを塗るのは少し難しいことが難点だ。

 お湯を沸かしてインスタントのコーンスープも作る。

 軽く熱したフライパンに薄く油をひき、卵二個を割りいれる。少し固まったら塩、こしょうを少々振りかけ、コップに半分ほどの水を流しいれ、ふたをして蒸し焼きにする。

 目玉焼きの焼き加減は好みが分かれるところだが、謎猫さんが何でもいいと言うので、自分の好みに合わせてかた焼きにした。

 目玉焼きを焼いたフライパンに油をひきなおし、ウィンナーソーセージを炒める。

 パンは二センチ×二センチ、スープはティースプーン一杯、目玉焼きは白身と黄身のバランスを考えつつ十円玉大、ウィンナーソーセージは数ミリ幅でスライスした。

「おまたせしました。朝ごはんできましたよ」

 謎猫さんが寝ていた(はずの)タオルを一旦片付け、朝食を並べる。

「いただきます♪」

「いただきます」

 熱いスープをすすってから食パンを食べる。謎猫さんにはやはり少し大きかったようだ。

「一晩眠って、何か思い出しましたか?」

「ふぁい? ……あ、ふぃえ、ほふにはひも」

 謎猫さんは口いっぱいにパンを詰め込んでいた。

「飲み込んでからしゃべってください」

 スープでパンを流し込んでいる。

「失礼しましたっ! あ、特に何も想い出せていないです……たぶん?」

 睡眠時、人は記憶の整理をする。眠れば何か思い出せるかと考えたが、残念ながら記憶は戻っていないらしい。このネコ耳少女が謎猫さんであるならば、元々ネコ耳少女であったかどうかは別として、少なくとも小説を書いていたという記憶はあったはずだ。

(まさか……謎猫さんの化身とかじゃないよな?)

「なんですか?」

「いえ、なんでもないですよ」

 現実問題、目の前の謎猫さんが記憶を取り戻さない限り、リアル手乗りネコ耳少女観察日記を始めることになる。

 まぁ、それはそれで楽しそうだからいいか。

「ごちそうさまでしたっ♪」

「おそまつさまです」

 少し量が多かったかと思ったが、謎猫さんは完食してくれた。

「今日はどうしますか? 僕は一日予定無いので、なんでもできますよ」

 洗い物をしながら聞く。

「うーん、そうですね~」

 腕を組んで考えている。

「お出かけしたいです♪」

 うーん、外出か。

 今度はこっちが考えるばんだった。

 少なくとも、自分の認識ではこの世界に手乗りサイズのネコ耳少女は存在しない。謎猫さんに失礼だが、存在が広く認められていないという点では幽霊やUMAと変わらない存在だ。

 つまり、人に見られるのはまずい。

 だが、いつまでも部屋に引きこもっていれば、戻る記憶も戻らないだろう。

「分かりました。でもその前に二ついいですか?」

「なんでしょう?」

「まず一つ。僕以外の人に見られないようにしてください」

「分かりました。もう一つは?」

「寝ぐせ直してください」

「はにゃ!?」


***


 寝ぐせをなおした謎猫さんを上着のポケットに入れ、鍵を閉めて外に出る。

 特に目的地があるわけではないようなので、ぶらぶらと外を歩く。

 謎猫さんはポケットから顔をのぞかせているが、時折人とすれ違うと上手く隠れていた。

 今日は雪は降っていなかったが、気温は低く、夜には雪が降る予報だった。

 歩いては休憩を繰り返し、腕時計で時間を確認すると、正午ちょっと前だった。

 一度帰っても良かったのだが、せっかく外に出てきたので何か外で食べようと思う。

「しばらく隠れていてくださいね」

 スーパーの前に、焼き芋の屋台があったので、そこで焼き芋を一本買う。

 人気のない河原へ降り、謎猫さんにもポケットから出てもらう。

「お昼ごはんですかー?」

「お昼ごはんですよー」

 紙袋から焼き芋を取り出し、半分にわる。

「良いにおいです♪」

 謎猫さんが鼻をひくつかせながら言った。

 指先ほどの大きさにちぎったものを渡す。

「熱いので気をつけてくださいね?」

 焼き芋からはまだ湯気がたちのぼっている。

「ありがとうございます!」

 口いっぱいに頬張る謎猫さんを横目に、自分も焼き芋を食べる。

「ふぁふぁいへふぅ~」(あまいです~)

 安納芋というだけあって、砂糖や生クリームは入っていないがまるでスイートポテトのように甘かった。

「ぅ……ふぐっ!? ゲホッゲホッ」

 食感としては、普通のサツマイモに比べ、もったりと喉に貼りつく感じだったのだが、それを口いっぱいに頬張った謎猫さんが喉を詰まらせてしまったらしい。

「大丈夫ですか? 牛乳飲みます?」

 一応、紙パックの牛乳も買っておいた。

「い、いただきます…………いただきたいのですがっ!」

 謎猫さんに対してストローが大きすぎるため、上手く紙パックから牛乳を飲めないでいるようだ。

「お皿とかないし……あ、そうだ」

 自分の持っていた焼き芋を一度袋に戻し、左手の手のひらに牛乳を出して差し出す。

「ちょっ、くすぐったいです!」

 コップのように飲むことができないので、猫のように顔を近づけて舐めるように飲むので、手のひらがくすぐったい。

 人間が手乗り猫になったというより、猫が手乗り人間になったような印象を受ける。以前、どこかで謎猫さんが「肉球でキーボードを打つのは難しい」と書いていたが、もしかしたら冗談ではないのかもしれない……。

 なんてことを考えていたら謎猫さんが復活したようだ。

「にゃふぅ……助かりました~」

「気をつけてくださいね?」

「はい……って、はわわっ!?」

「どうしました?」

「なんか……恥ずかしい姿を見られてしまったような……」

 謎猫さんが少し顔を赤くする。

「とっても猫さんでしたね」

「言わないでください~」

 川で手を洗い、今度は慎重に食べ始めた謎猫さんと並んで食べる。

 無事、焼き芋を食べ終わり、再び歩き出す。

「どこか行きたいところとか、やりたいこととか、ありますか?」

 う~ん、とポケットのなかで唸る。しばらく考えたのち、再び口を開いた。

「歌を歌いたいです♪」

「じゃぁカラオケですね」

 カラオケボックスのある学校方面へ向かう。


**


「いらっしゃいませ」

 入店前に謎猫さんには再びポケットに隠れていてもらう。

「三時間パックでお願いします」

 夜まで歌えるフリータイムというものもあったが、そんなに遅くまで歌うつもりはないので、三時間パックにしておく。

「一名様でよろしかったでしょうか?」

 いえ、と答えかけて、言いとどまる。

 ポケットの謎猫さんを人数に入れると二人なのだが、当然ながら店員さんに謎猫さんを見せるわけにはいかない。黙っていれば一人分の料金で入れるのだろうが、そんなズルはしたくない。

 結局、友人が後から来て途中で帰ってしまうので、僕が帰りに二人分払います、と説明した。

 部屋に入り、デンモクとマイクを謎猫さんに渡す。謎猫さんはマイクを持てないので、歌本でマイクの高さを調節した。

「謎猫さん、何歌うんですか?」

「えっとぉ、どんなのがあるんでしょう?」

 普通に会話をしていたので忘れかけていたが、謎猫さんは記憶が曖昧なのだ。歌を歌いたいと言うからには、歌うことは好きだったのだろうが、曲名等を忘れていてもなんら不思議ではない。

「そうですね、例えば…………」

 デンモクを操作して、ジャンル一覧を開く。

「あ、これならたぶん知ってます♪」

 謎猫さんが選んだのは、ボカロ曲だった。

「~♪」

 謎猫さんの歌声にはブレが無く、決して声量があるわけではないがとても明瞭で、特に高音域はずっと聞いていても嫌にならないような、そんな感じだった。

 記憶はその時のエピソードに、景色、香り、音を関連付ける。もしかしたら、以前に歌っていた時のことを想い出せるかもしれない。

「次、どうぞ!」

 謎猫さんと交互に歌っていき、時間は過ぎていった。


***


「にゃへへっ♪ 楽しかったです♪」

 三時間はあっと言う間に過ぎ、会計を済ませて今は外にいる。

「おやつ食べましょうか」

「はい♪」

 商店街でおやつを買い、再び河原へ行く。

「何を買ったのですか?」

「ワッフルですよ」

 昨日謎猫さんが食べたいと言っていたので買ってきた。

「やった♪」

 商店街で買ってきたばかりで、まだ温かいワッフルを並んで食べる。

「にゃっふるですね」

「にゃっふるですよ~♪」

 謎猫さんの造語を違和感なく受け入れているあたり、少しづつ記憶が戻っているのかもしれない。

「ごちそうさまでした!」

「そろそろ戻りましょうか。今晩食べたいもの、なにかリクエストはありますか?」

「うーん、そうですねぇ……ハンバーグが食べたいです♪」

 材料は昨日買っておいたものだけで作れそうなので、まっすぐ部屋に帰った。


***


 部屋に入り、上着を脱ぐ。

 冷蔵庫から合挽挽肉、卵、牛乳を取り出し、収納棚から玉ねぎ、食パンを出す。

 付け合わせ用に、じゃがいも、人参、ブロッコリーも出しておく。

 大きめの金属のボウルとフライパン、まな板、包丁、ピーラー、フライ返し、計量カップと軽量スプーンをキッチンに並べる。あらかじめ材料と調理道具を全て用意しておくと、調理中に慌てなくて済む。

 野菜を洗い、皮を剥く。人参とじゃがいもはピーラーで皮をむき、じゃがいもは包丁を使って芽を取る。玉ねぎは包丁で両端を切り落とし、そこから外側の茶色い皮をはがす。

「なにかお手伝いできることはありますか?」

 謎猫さんが手伝ってくれるそうなので、食パンを細かくしてもらう。乾燥パン粉を使っても良いのだが、あえて生の食パンからパン粉を作る。

「わかりました♪」

 机に少し底の深いお皿を出し、パン粉づくりは謎猫さんに任せる。

 その間に、玉ねぎをみじん切りにする。この時、あらかじめ電子レンジにかけておくと、切っても目が痛くならない。ただ、加熱しすぎると表面が柔らかくなり、切りにくくなるので注意する。

 玉ねぎと挽肉をボウルに入れ、そこに卵も割り入れ、塩、こしょうを適量入れる。

 謎猫さんからパン粉を受け取り、少量の牛乳を染み込ませてからボウルに入れる。

 あとは、これらを粘り気が出るまで手でよくこねる。こね終わったら、一つ分を手に取り、空気を抜くために数回、キャッチボールをするようなイメージで手のひらに叩きつける。

 形を整えたら火の通りにくい中央部を少しへこませる。

「やりますか?」

「やります!」

 謎猫さんにお肉を渡す。

 その間にフライパンを火にかけ、温めておく。

「できました♪」

 熱したフライパンに油をひき、そこにハンバーグを並べる。

 中まで火が通るように、じっくりと両面を焼き上げる。

 ハンバーグが焼けるまで時間があるので、付け合わせを作る。

 まず、適当な大きさに切ったじゃがいもを茹で、茹であがったら水を捨て、少し空煎りして水分を飛ばしてからボウルにあける。

 生クリームと粉チーズ、塩、こしょう、乾燥パセリをそれぞれ適量づつ入れ、ポテトマッシャーで混ぜつつ、つぶしていく。

 じゃがいもを茹でた鍋で、適当な大きさに切っておいた人参とブロッコリーを茹でる。

 これで付け合わせのマッシュポテトと温野菜ができた。

 ハンバーグに竹串を刺して、肉汁が透明になったのを確認したら、チーズをのせて少しだけとろけさせてから、付け合わせと一緒にお皿に盛り付ける。

「完成ですね♪」

「完成ですよ♪」

 机に運び、ナイフとフォークを出す。

 謎猫さんには、先が二つに分かれたプラスティック製のようじと、同じくプラスティック製の小さなナイフを用意した。どちらもフルーツを食べる時などに使うものだった。

「「いただきます」」

 ちゃんと火が通っているか確認するため、中央にナイフを入れる。テレビで見るように溢れだす肉汁は無いが、おいしそうに焼けていた。

「おいしいです~♪」

「おいしいですね♪」

 チーズもいい感じにとろけている。目分量で作ったが、ちゃんとおいしくできていた。

「お野菜おいしいです。まだありますか?」

「ええ。まだありますよ」

 その後も謎猫さんは温野菜を食べ続けていた。

「猫さんというより、うさぎさんみたいですね?」

「ふぇ?」

 野菜を齧る謎猫さんを眺めつつ、自分も食べ進めていく。野菜は謎猫さんが食べつくしそうな勢いなので、多めに作っておいたマッシュポテトをお代わりする。

「それで、何か想い出しました?」

「ふぇっふぉふぇふへぇ」

「食べてからでいいですよ」

 謎猫さんは口の中のものを飲み込み、両手に持っていたブロッコリーを皿に置いた。

「えっとですねぇ……そもそも私は何を忘れているのでしょう?」

「いや、知らないですけど……」

「知らないですよねぇ」

「…………」

「…………」

 まさか初めから何も知らない、なんてことは無いだろうな?

 そんな考えがふと頭によぎった。僕の中の謎猫さん像がどういうわけか具現化して目の前にいるんじゃないか、だから僕の知らないことは知らないんじゃないか。

 とか、そんなことを考えてしまうのは、常日頃からフィクションの世界に入り浸っている影響なのだろうか。

 やはり考えても分からない。

「ふにぇ?」

 ただ、今は首をかしげてブロッコリーにかじりついている謎猫さんを眺めているだけでいいと、なんとなくそう思うのだった。


***


 食べ終わった皿を片づけ、昨日と同じように机の上にタオルを敷く。

「電気消しますよ?」

「はい♪」

 既に布団、いや、タオルにくるまった謎猫さんを確認し、電気を消す。

 机に足をぶつけないように注意してベッドへ入る。

「おやすみなさい」

「ふにゅん♪ おやすみなさい♪」

 目を閉じると、一日歩いていたせいか、適度な疲労感と心地よい眠気に襲われ、何かを考える暇も無くすぐに眠ってしまったのだった。





次で最後になるかと思います。

ハンバーグの作り方、間違っていたらごめんなさい!

これ書いていたらなんだかお腹がすいてきちゃいました……。

寝る前に何か食べます!


次回はもう少し間が空くかと思います。

なにせまだ一文字も書けていないので…………。

次回! 謎猫さんの素顔がついに明かされる!?

おたのしみに!

にゃはは~♪

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