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The next dream  作者: 夢見月
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一日目!

今回は謎猫さん(http://mypage.syosetu.com/571010/)との(一方的な)コラボです!

主人公は夢見月こと私を自己投影してみました。私のようで私でない「僕」と、謎猫さんというなろう作家二人の共演? になります!


謎猫さんへ。

ご協力ありがとうございました!

 日常という言葉には人によって様々な解釈があるのだと思う。

 恋人と過ごす日々。仕事に勤しむ日々。森の奥で過ごす日々。

 そのどれもが日常であり、また、ひとからみれば非日常なのであった。

 平日は学校へ通い、授業を受け、放課後は図書室で過ごし、帰宅して夕食をとってお風呂に入って寝る。そしてまた学校へ行く。週末は買い物に行く以外は家で過ごし、気まぐれに小説を書いてはネットに投稿する。

 少なくとも、僕の日常はこんな感じで過ぎていく。


***


 朝は七時過ぎに起床し、やや急いで学校へ行く支度をする。

 アパートを出て、階段を降りて駐輪場へ行き、自転車で学校へ向かう。

 クラスではあまり話さず、休み時間は本を読む。

 放課後は、特に用事が無い限りは図書室へ足を運び、自分が持ってきているのとは違う本を読む。二冊同時進行で読むことにはもう慣れた。

 下校時刻まで図書室で本を読み、自転車で帰宅する。特に足りないものもないのでスーパーへは寄らず、そのままアパートに帰る。

 駐輪場に自転車をとめ、外階段をのぼって二階の自分の部屋へ入る。

 今日は昨日作っておいたシチューを温めて食べる。

 課題などもないので、お風呂に入り、明日の用意をカバンに詰め、パソコンを立ち上げて自分の小説のアクセス解析を見る。今日も目立った動きは無い。

 パソコンを落とし、布団をしいて寝る。

 今日もいつも通りの一日だった。


***


 最近、オンライン小説を読み始めた。

 今まで、買った本を読むことばかりで、自分ではネットに投稿しておきながら自分が誰かの作品を読むことは無かった。

 読み始めたきっかけ、というものも特には無く、ただなんとなく読んでみただけのことだった。

 だから、どうしてその作品に辿り着いたのかも覚えてはいない。こんなことを言っては作者さんに失礼なのだが、書店で売っている小説と比べると、文章力も高いとはいえず、内容も物足りなさを感じていた。投稿履歴を見ると、ごく最近書き始めたようだった。

「謎猫……ねぇ」

 それ以来、その作者、謎猫さんが小説を投稿するたびに、読んで、感想を送るようになっていた。

 なぜなのかは分からない。もっと多くの人がおもしろいと言っているような作品もサイトの中ではたくさんあるはずなのに、僕は謎猫さんの作品に、なにか、言葉では言い表せないような不思議な魅力を感じていたのだった。

 謎猫さんの投稿する作品は、なんてことのない日常を書いたものが多かった。

 別に、世界を救ったりだとか、未知の生物と戦ったりとか、魔法や超能力が使えたりとか、そういったものは全くなくて、ただただ過ぎていく風景。

 起承転結の、転が抜けている。はじめはそう感じていた。

 しばらくして、謎猫さんからも僕の作品に対する感想やメッセージが送られてくるようになった。


***


 今日も学校へ行く。いつも通り授業を受けて、放課後になる。文字にすると三十文字もないが、他になにもないのだからしょうがない。年が明けても、雪が降っても、何かが変わることは無かった。

 もしかしたら、謎猫さんなら、こんな毎日でも小説にしてしまうのだろうか。

 学校が嫌いなわけではないが、金曜日の帰り途は不思議と足取りが軽くなる。いつもなら土曜か日曜に食料品を買いに行くのだが、今週末はゆっくり過ごそうと思っていたので放課後に図書室には寄らず、スーパーに寄ってから帰ることにした。


***


 買い物袋をカゴに載せ、自転車を漕ぐ。いつもより早く家につきそうだ。少しぐらい図書室に寄っていても良かったかもしれない。

 自転車を駐輪場にとめ、外階段をのぼって自分の部屋へ向かう。

「?」

 扉の前に、なにやら小包が置かれていた。ポストに入らなかった郵便物だろうか。それにしては、差出人などが一切書かれていないのはおかしい。もちろん心当たりは無く、中身は謎だ。

 持ち上げてみるが、重くも無く軽くも無く、なんとも微妙な重さだった。

 軽く振ってみるが、全く音はせず、ずいぶんと丁寧に梱包されているようだ。

「ん、あれ?」

 そこまでやってから、妙な既視感を覚えた。ただ、扉の前に小包が置かれていた経験なんかない。

 しかし、いつだったか、確かに扉の前の小包を空けた覚えがある。気がする。

 とりあえず小包を持って部屋に入る。

 電気をつけて荷物を下ろし、食品を冷蔵庫に入れる。

 夕食を作り始めるにもまだ早いので、この小包を空けてみることにした。

 中には、緩衝材に包まれたもう一回り小さな白い箱が入っていた。

「…………!」

 ようやく既視感の正体がわかった。今のこのシチュエーションは、三年前に書いた小説の冒頭と似ている。

「手乗り、か」

 その小説の中では、この箱には手乗りサイズのネコ耳少女が入っていて、そこから一年と半年間、後にナズナと、後から登場するスズナと名付けた二人と暮らしていく。

 だが、それは僕が書いた小説の中の話であって、今僕が生きているこの世界ではない。当然、手乗りサイズのネコ耳少女が実在するという話しを聞いたことも無い。

 差出人等が書かれていないことは気になるが、まぁ箱を空けてしまえば少なくともこれが何なのかはわかるだろう。

 箱の構造は印籠箱と言われるもので、上下を気にしつつふたを開ける。

「…………」

 例えば、目の前で血の滴るナイフを持った大男がいたとしたら。あるいは、長髪で白いワンピースを着た半透明の少女がいたとしたら。

 反射的に悲鳴をあげてその場を逃げ出すという人がほとんどだと思う。

 なら、もし目の前に自分が三年前に書いた物語と同じように、手乗りサイズのネコ耳少女が存在するとしたら?

 僕はいたって冷静だった。

 もちろん、なぜこんなことになっているのか、不思議には思ったが、今どんなに考えても分からないことは分かっていたので考えないことにした。

 理由は分からないが小説に書いたキャラクターが作者である自分の元にやってきたのではないか、と思った。

 ネコ耳少女はまだ箱の中で眠っている。

 毛並みは少し固めの黒ストレートで、長さは肩に掛からない程度のミィディアムヘアー。もちろんネコ耳少女というからには人間の耳ではなく、ネコ耳。背中からはしっぽが覗いている。

 黒猫なら当てはまるのは「スズナ」だが、このネコ耳少女の印象は、僕のスズナのイメージとは少し違う。そもそも、服装に見覚え、もとい書き覚えがない。

 上は淡い水色のカーディガンに、胸元には桜色のリボン。下はリボンと同じ桜色のプリーツスカート。当時の僕では思いつきそうにないコーディネートだった。ただ、カーディガンは大きさがあっていないのか、袖が少し余ってしまっていた。

「ぅ……ん」

 ネコ耳少女が起きたらしい。

「ふわぁ~」

 小さな欠伸をして、余った袖で目元をこする。

「うゅ……?」

 上半身を起こし、まだ少し眠そうな目で辺りを見回していた。

「ジー…………」

 そして目が合った。

「えっと……おはよう?」

 とりあえず声をかけてみる。

「おはようございます♪」

 意思の疎通はできそうだ。

「いきなりでわるいんだけど、君は誰? スズナじゃないよね。どこから来たの?」

 疑問を解消するべく、いろいろと質問してみる。

「むゅぅ……実は、私にもよく分からないのです。あ、でもでも、そのスズナさんという方ではないと想いますよ?」

 よく分からない、というのはどういうことなのだろう。それも聞いてみる。

「にゃぅぅ……昨日、というか、さっき目が覚めるまでの出来事を何一つ思い出せないのです」

 つまり、記憶喪失、ということだろうか。まず間違いないのは、僕が生み出した存在ではなさそうだ。

「ええっと、今更ですけど、ここはどこですか?」

「僕の家。一軒家じゃなくて安アパートの一室だけど」

 そうなんですか。と少女が言ったきり、会話が途絶えてしまった。

「あのー、私はこれからどうすればよいのでしょう??」

 数秒ほど黙考してから、少女が再び口を開く。

 どうすればいいのか、と聞かれても、僕もどうしていいのか分からない。

 少女の記憶喪失が、一般的な健忘と同じものならば、時間がたてば徐々に記憶が戻ってくるはずだ。

 記憶が戻って、それからどうするかはその時に考えるとして、とりあえず、この少女を今の状態のまま外に放り出すわけにはいかない。

「とりあえず……」

 少女と目を合わす。

「しばらく泊っていきます?」

「にゃわわ……良いのですか?」

「もちろん。君の帰るべきところがわかるまで」

 そういえば、こんな喋り方をする人を知っているような……? 小中高クラスメイトを思い浮かべてみたが、思い出せる範囲では誰も当てはまらなかった。

「ふにゅん♪ ありがとうございます。にゃはは~♪」

 謎だらけのネコ耳少女がうれしそうに笑う。

「…………あ」

「ふにぇ? どうしたんですか?」

 思い出した。

「謎猫……さん?」

 通りで友人知人の誰にも当てはまらないわけだ。メッセージのやりとりはしても、僕は謎猫さんと直接会ったことがないのだから。

「謎猫?」

 ネコ耳少女は首をかしげている。ピンとは来なかったらしい。

「僕が最近読んでるネット小説の作者です。話し方が似てる、というか同じなんです」

 パソコンを立ち上げ、以前に謎猫さんから届いたメッセージを開いて見せる。

「なるほど……確かに、私の話し方と似てるかも??」

 ただ、このネコ耳少女が謎猫さんだとしても、ネット上のやりとりだけなので本名や連絡先、ましてや住所というような個人情報を交換することはない。つまり、謎猫さんの家族に連絡することも、家に送り届けることもできない。

 さて、どうしたものか……。

「あの…………」

「はい?」

「おなかすきました♪」

 時計を見てみると、いつも夕食を食べ始める時間だった。

「なにか食べたいものありますか?」

 なんでも、というわけにはいかないが、買い物をしてきたばかりなのでなんなとは作れる。

「ワッフルが食べたいです!」

「それ、ごはんじゃないですよね?」

「じゃぁ……なんでもいいですよ♪」

 なんでもいい、とはいうものの、謎猫さんの大きさは手乗りサイズ。普通に料理を作っても食べづらいかもしれない。例えば、スパゲティをゆでたとしても、謎猫さんにしてみれば自分の身長よりも麺一本の方が長い。

 米一粒にしても手のひらサイズだ。

 結局、パンプキンスープと、主食は小さくちぎれるパンにした。

 スープを普通の食器にいれると謎猫さんがスープの中に落ちてしまうのでスプーンによそった。


***


「にゃふぅ~。ごちそうさまでしたっ♪」

「おそまつさまでした」

 夕食を終え、後片付けをする。

「ふぁぁ……私、眠くなってきちゃいました~」

 謎猫さんが口に手をあてて欠伸をしている。

「ちょっとまっててくださいね」

 肌触りのよいシャーリング地のタオルを選んで机の上に敷く。掛け布団にも同じ素材のハンドタオルを用意した。

「ふにゅん♪ ふわふわです~♪ おやすみなさい……zzz」

 謎猫さんが眠ってしまったので、自分もさっさと眠ってしまうことにした。





全三話の予定です。

第二話は今日明日中に投稿できると思います。

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