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妖狐のオタ日和~現代妖怪伝奇譚~  作者: 天々
第二章 理と理
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第九伝 人と妖怪~器と依り代~その四

大変遅くなりました。

 タマとナオは手掛かりを見つけられず、夜の街を歩いていた。

 「うむ、ここで消えとる。 困ったのぉ・・・・・・」

 立ち止まるタマにナオは周囲を見回す。

 「なぁ、さっきから俺の感があまりよくないと訴えているんだが?」

 「なんじゃ、人間にしては鋭い感覚をしとるではいか、お姉さんは感心したぞ」

 ふふんと鼻を鳴らし、ニヤニヤしながらナオを見た後、タマは周囲を見回す。

 「なにかいるのか?」

 ナオの問いにタマはどこからともなく錫杖を手にして口を開く。

 「人ならざる者がおる。

 心配せんでええが、お主も少しばかり体験させてやろうかと思うてな」

 タマはそう言って、錫杖の先を地面にこつんと当てる。

 「なっ!」

 「少しばかりお主の感覚を引き上げた。これが我と帝が見ている世界じゃ」

 先程まで人間以外なにもいなかったはずの町中に突如として、異形の者達がナオの視界に入る。

 「てか、なんだよこの数は!

 町中にいる人間よりも多いじゃねーか!」

 「人の中のありとあらゆる心に住み着き、食い付き、貪り食い、喰らい尽くす。それが妖怪じゃ。

 心の内に秘めた欲の数ほど妖怪は無数に群がり喰い尽くす。

 この数で驚くなかれ、帝と我はこの数十倍を相手にすることもあるのじゃぞ」

 「あいつ・・・・・・俺にはそんな事を一度も言わなかったぞ・・・・・・」

 「しかも、時と場合によっては一対多数じゃからな」

 「あいつ本当は人間辞めてんじゃねーだろうな・・・・・・で、どうするんだ?

 この数を全員相手取るのか?」

 「安心せい、見えてる数の7割は我等に対し敵意はない。

 先程も言ったが帝はまだ人じゃよ。ある感情を失くしてしまってはいるがな」

 ナオと言葉に対し、タマはそう言って少し悲しそうに言った。

 「それは後で詳しく聞くとして、3割と言っても40はいるぞ」

 「お主は守ってやると言ったろ? 雑魚共が群がったところで、所詮は雑魚じゃ」

 タマはそう言って、ナオの周りに薄い膜を貼った。

 「結界じゃ。 お主はここで我の戦う姿を見て見惚れとれ」

 言うや否や、タマは一瞬でナオの前から消えると同時に、近くにいた犬の妖怪の前にいた。

 「まずは一匹目じゃ」

 呟くと同時に、手にしていた錫杖を妖怪の口の中へとズボッと言う音と共に刺した。

 「うぬら、見ているだけでは我は倒せんぞ? 最も、我を倒せるのは帝以外にいないがな!」

 そう言って、鮮血と共に錫杖を引き抜き、次々と妖怪達を倒すタマ。

 妖怪達もタマに反撃するも為す術なく屠られていく。

 ほんの数分で決着がついた。

 どす黒い血だまりの中に、返り血で顔や手、衣類も汚れているというのに、タマは不敵に立っていた。

 その光景にナオは言葉を失う。

 「なんじゃ、我がそんなに魅力的で美しくて見惚れてたのか?」

 ナオの視線に気づいたタマは横目でちらっと見てそう言った。

 「お前達はいつもこんな事を・・・・・・」

 「いつもではない。 帝や我みたいに強き者は力を悟られぬようにすることも可能じゃ」

 顔についた血を拭いながらタマはナオの質問に答えた。

 ナオは見惚れていたわけではない。

 タマの圧倒的な強さに対し、つくづく彼女が人間の味方で良かったと思い安堵したのだ。

 「我は帝の味方じゃ。 我が帝に惚れてなかったら、お主とて容赦はせん。 妖怪が人を殺すなど、象とアリの喧嘩なようなもんじゃ」

 その言葉を聞いて背中に走る寒気に震えぬように我慢するナオ。

 「あまり、その人を揶揄う(からか)とマスターが怒りますよ?」

 突然の声に二人が振り向くと葛葉がキエリを連れていた。

 「ナオさん、安心してください。マスターはそこの色欲いかず後家狐が敵になっても戦いますよ」

 「誰がいかず後家じゃ。 お主こそ、帝から離れて別の雄の所に行けばいいのではないか?」

 色欲は認めるんだと言う思いを隠しながら、キエリは苦笑を浮かべる。

 「帝はどうしたのじゃ? お主がエリを連れてきたという事は大方の予想はつくのじゃが・・・・・・」

 と錫杖を煙管に変え、狐火で火をつけ紫煙を吐きながらそう言った。

 葛葉とキエリはあの後の事を話す。

 メモを見た帝は葛葉を召喚し、キエリを二人の所へと言い残した後、自分達の前から去ったのだった。

 「ふむ・・・・・・あの超ド級変態妹の事で地雷を踏んだか・・・・・・半年は行方不明で帰ってこないじゃろうな」

 「「な!」」

 「冗談じゃ」

 「・・・・・・」

 冗談を言える状況ではないのはわかっているタマが敢えて言った冗談は状況を一層緊縛させた。

 「で、帝が去った後に変わった事はなかったのじゃな?

 銀髪の美女が現れたり、周囲が神聖な気に包まれたりとかはしておらんのじゃな?」

 「はい、特に変わった事もなくマスターは雑踏の中へと行きました」

 「手掛かりぐらい残しては・・・・・・いないよなぁ・・・・・・ミカの事だから、自分だけで片付けようとしている事ぐらいしかわからん」

 「仕方あるまい・・・・・・こういう時こそ文明の利器を使うかの・・・・・・ほれ、お主等も見とらんで、スマホでSNS系のサイトをチェックするのじゃ」

 「それよりも、町中の監視カメラをチェックすればいいのでは?」

 不思議な顔をしてキエリが聞いた。

 「帝が変装している場合もあるのじゃ。本人よりも不可解な現象が起きてないか川崎にタグが付いてる記事を検索した方が早いのじゃよ」

 タマは言いながらSNSサイトを検索する。

 変装とは言ったものの、帝が神の力を顕現させた姿を知っている彼女は、性別も容姿も変わってる可能性もあると考えていた。

(まずいな・・・・・・あの場所とも近い・・・・・・ミカドよ・・・・・・お主はどこにおるのじゃ・・・・・・)


 「お前ら、スマホの画面に噛り付いて何やってんだ?」

 そこに声をかけたのはミカドだった。

 「今お主を探しておるのじゃ! 我に話しかける暇があればお主も探せ!」

 タマの言葉を聞いたミカドはタマの頭に右手を置いて、口を開いた。

 「落ち着け。 幻影でも分身でもない。 本物だよ」

そう言って、彼女の頭なでなでするミカド。

「心配などしておらんからな。 お主はいつもこういう事件の時はフラフラとどこかに行き、独りで物事を解決しようとするのは知っておるからな」

彼女の顔は平静を保っていたが、両手で持っているスマホはプルプルと震えている。

それは彼女が不安を抱いていた証拠である。

「心配かけて悪かった。 気になる事があってな・・・・・・単独行動をしたんだ。

 ま、杞憂で終わったがな」

そう言って彼女の顔を撫でる。

二人のやり取りを見て、呆れた視線を送るナオとキエリ。

 「で、お主の右肩に乗ってる不細工な龍はなんじゃ?」

 機嫌を直したタマがミカドの姿を見て言った。

 「懐かれた」

 説明終わりという感じでミカドは煙草を取り出し、火をつける。

 「いや、ミカ、俺達はそいつの正体を知りたいんだが?」

 「見ようによってはブサカワの部類に入るかと・・・・・・」

 ナオとキエリがそう言ってミカドの右肩に乗っている存在を見つめる。

 「お前達、バクナワを知らないのか?」

 ミカドはそう言って溜息と一緒に紫煙を吐いた。

 「バクナワは、フィリピン諸島に伝わる龍だ。月を飴玉だと思って海から出てきて、飲み込んだ茶目っ気ある龍だ。

 詳細はWikipediaにも載ってるからそっちのほうが早いだろ」

 根本まで火種が迫ってきた煙草を携帯灰皿に押し込むミカド。

 「そいつに懐かれた事は置いておいて、事件の首謀者はどうした?」

 ナオがそう言って、ミカドを見つめる。

 「事件の首謀者は人じゃなかった。

 犯人はヌーノ・サ・プンソと言って、これもフィリピン神話に出てくる生き物で、ゴブリンに近い形態だ」

 彼の言葉はまだ続く。

 「ヌーノ・サ・プンソは塚に住むゴブリンと言われ、彼らの住居に足を踏み入れた人間には幸も不幸、両方もたらすと言われているが、今回は違った」

 ミカドはそう言って目をつぶり、約一時間前の出来事を振り返る。


読んで頂きありがとうございました。

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