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妖狐のオタ日和~現代妖怪伝奇譚~  作者: 天々
第二章 理と理
8/11

第八伝 人と妖怪~器と依り代~その三

更新ペースが遅かったり、早かったりとまちまちですいません(´・ω・`)


8/5

追記しました。

「邪魔したな。渡したソレは」→「邪魔したな。渡したソレは好きに使え」

 女性が気付くとそこは四方に五芒星の魔法陣が描かれた部屋にいた。

 周りには呪術師が六人いて、呪文を唱えている。

 四肢は拘束され、生贄のように横たわっている彼女に声をかける人物がいた。

 「気が付いたようだな?」

 フードを目深に被り、腰まである十分に蓄えた髭の男がそう言った。

 「蓮よ。全霊門を潰されたお前には器となりて現人神になる以外の道はない。穀潰しはいらんのだよ」

 男がそう言うと、連と呼ばれた女性の瞳孔が開くと同時に彼女の肢体が脈打つように痙攣し始めた。

 「始まったな・・・・・・」


 蓮が負傷してから数年。

 半年ほど寝たきりになったものの今では生活に少々の支障が出るほどまでに回復していたのだが、食べられた顔の半分は元に戻る事もできず、その容姿のせいで職に就けないでいた。

 そして何より変化があったのは蓮の心だった。

 「今更遅いですが、私はもう帝兄様を無理矢理、家に連れ戻す事を望みませんし、復讐もしません。

 恨みがないと言えば嘘になりますが、私はそれ以上に大きなものを得ることができたと思っています。

 帝兄様の優しさに漬け込み、私は何も見てなかった・・・・・・自分自身の事も、周りの事も・・・・・・私はそれが恥ずかしい・・・・・・この歳になるまで流されていた自分が・・・・・・そして、今なら少しわかる気がします・・・・・・帝兄様がこの家を出て行った理由が・・・・・・」

 蓮はそう言って虚空家を後にし、自分で生活をし始めたのだ。

 文字通り、援助も何もない状況下での生活は大変だった。

 容姿にハンデがあるだけで、それはマイナスになるが、彼女は気にしなかった。

 幸い、小さな町工場の食堂で働く事が出来た。その生活にも慣れ始めた頃の出来事だった。

 蓮は虚空家の者に誘拐され、冒頭の出来事となる。


 遠のく意識の中で聞こえる声。

 「我が器となる娘よ。我が力を受けいれば全てが楽になる。

 そして、失ったモノ、全てを取り戻してやろう」

 それは悪魔の囁き。

 (いらない・・・・・・私もお義兄様と同じ器だけど、私はもう器じゃない!私の中から出て行け!)

 心の中で自分の意思を伝える蓮。

 意思の力だけで拒むが相手が良かったのか彼女は気に入られる。

 「ふははは、面白い娘よ。意思だけで我を拒むか。気に入った。娘よ、我を貸してやろう」

 (え?)

 突然の事に戸惑う彼女。

 「我はお主が気に入った。我は虚空蔵菩薩なり、浅はかな人に鉄槌を下そうと思うたが、意思の力だけで我を拒もうとするお主を気に入った。娘よ、名は?」

 いきなりの事に思考が追い付かない蓮。

 (れ・・・・・・蓮です)

 「蓮か・・・・・・良い名だ。

 我は今日より蓮と一つになりて、その力を貸し与えよう。 なに、心配はいらん、少々、人と価値観が違くなるだけだ」

 (え・・・・・・ちょ、待っ・・・・・・あっ!)

 そこで蓮の意識は完全になくなった。

 「失敗か・・・・・・帝といい、蓮といい・・・・・・虚空一族の恥だな・・・・・・これでは次代に笑われてしまう」

 蓮に語り掛けていた男がそう言って背を向け、ナイフを握る。

 「失敗作に用はない」

 そう言って、男が振り向いた瞬間だった。

 「失敗作か・・・・・・それはお前達のような欺瞞に満ちた人の事かえ?

 それとも、我が今、借りておるこの蓮と言う娘の事かえ?」

 蓮が起き上がり、男に向かってそう言った。

 拘束していた鎖はいつの間にか千切られていた。

 「蓮・・・・・・ではないな。

 何者だ?」

 男がそう言って、ナイフを右手で持ち、左手で呪印が施された札を構える。

 「痴れ者がっ!」

 蓮の身体を操っている何かがそう言うと、その場にいた人達、全員が壁に吸い寄せられるように張り付いた。

 「なっ!」

 「なにを驚いておる? 主等が望んだのだろう? この娘を器とし、神を宿す事に。

 悲願が叶ったではないか。もっと喜んだらどうだ?」

 押し付けられる力がさらに強くなる。

 「どうだ? 主等が望んだ力の一端は?」

 (やめて!)

 突然、彼女の頭の中に蓮の声が響いた。

 「この者達は、お主を殺そうとしたのだぞ?」

 (どんな理由であれ、簡単に力を見せてはダメよ!)

 彼女の問いに蓮が答える。

 「放っておけというのか? 

 ここで見せつけなければ、この先、一生付き纏われるぞ?いいのか?」

 (構わないわ!あなたは私を気に入ったのでしょう?なら、私の言葉をちゃんと聞いて!)

 「わかった」

 壁に押し付けられていた人達が、ふと力なく倒れた。

 「この程度で気を失うとは・・・・・・脆いものだな」

 (そう、人は脆いのよ・・・・・・だから、教えてあげる・・・・・・使い方、使う時と場所を・・・・・・)

 「連よ・・・・・・我に教えるというのか?」

 (そうよ・・・・・・過去の私は大きな間違えをして大切な人と袂を違えたけど、その人が教えてくれた事をあなたに教えてあげる。 さぁ、ここから出ましょう)

 「それは帝とかいう人間の事か?」

 (義兄様を知っているの?)

 「そうか、帝は蓮の兄か・・・・・・あやつの事は我々の間では有名な人間だよ。妖怪、精霊、天使、神に気に入られた人間としてな・・・・・・詳しくは追々話すとするとして、主の身体を返す」

 そう言って、蓮は自分の身体に意識が戻った事を確認する。

 「・・・力が戻って・・・・・・る?」

 (サービスだ。主の身体に住む代わりの家賃と思え)

 「私の身体はアパートか!」

 (冗談だ。我と一緒にいる以上、最低限の危機管理能力は持ってもらわんと困るのでな、潰れていた霊門は再生させてもらったが顔は・・・・・・すまぬ・・・・・・それだけはできんかった)

 「充分よ・・・・・・力を強制的に引き出されるよりかはマシだし、顔の件は私の自業自得」

 (ところで連よ、我の名だが、どうにも菩薩という名では些か支障があると思うて、先ほどから考えていたのだが、カーシャと言うのはどうだろうか?)

 「いい名前じゃない。虚空蔵菩薩と言うよりはそちらの方が似合ってますよ」

 そう言ってクスクスと笑う蓮は、その場を後にした。


 逃亡者を追う帝とキエリはある店の前で、立ち止まっていた。

 「あの、ここは?」

 キエリが言う。

 「顔は出したくなかったが、出さなくてはいけない状況だからな・・・・・・」

 はぁ~と言う溜息と共に店のドアを開ける帝。

 開いたドアから覗いた店内にキエリは目を見開いた。

 彼女の目に映ったのは、ボックス席でガマガエルの顔をして、ゲロゲロと笑う男や、猫の面をつけた女がカウンターでカクテルを飲んでいる姿。その他諸々、人とは違う特徴を持った人型の何かだった。

 「よ、妖怪?」

 「そうだ。ここは妖怪達の溜まり場だ」

 キエリの手を引いてこっちだと言い、帝達はカウンターの隅に移動した。

 「あら、珍しいお客さんだね。

 今日は仙狐は連れてないんだねぇ」

 蛇の様な二股になった舌をチロチロと出した、和装の女性がそう言った。

 「情報が欲しい。

 神か悪魔を宿す事を目的としたグループで最近、儀式を行った、又はその予定をしている」

 そう言って、一枚の札を差し出すと、和装の女性はそれをすっと受け取り、描かれている印を見る。

 「情報が少ないねぇ・・・・・・他にないのかい?」

 そう言って、札を懐にしまう。

 「子供だ。 犠牲者は子供だ」

 「ふむ・・・・・・となると・・・・・・あんたのお家以外に思いつかないんだけど?」

 「・・・・・・」

 睨む帝。

 「睨んだって、そうとしか思いつかないだもの。他にないわよ」

 「邪魔したな。渡したソレは好きに使え」

 そう言って、カウンターから離れると、思い出したように和装の女が言った。

 「そうそう、蓮ってあんたの妹さんだっけ? なんか大変な事になってるみたいだけど、聞かなくていいの?」

 その言葉に一瞬だけ止まった帝。

 「すでに袂を別った・・・・・・縁によって交わる事はない・・・・・・邪魔したな」

 振り返る事もなくそう言い放つと店のドアに手をかける。

 「これを・・・・・・」

 メイド姿の猫娘が小さなメモを帝に手渡した。

 「対価は等しくしないとねぇ・・・・・・」

 カウンターから聞こえた声に帝は振り返らず、メモを受け取り、店を後にする。

 「あ・・・・・・あの」

 しばらく歩いてるとキエリが声をかけた。

 「どうした?」

 「妹さん心配じゃないんですか?」

 その問いかけに帝は溜息を洩らし、煙草を取り出した。

 「あそこの店は人ならざるモノ達の溜まり場だ。

 あの中には人の動揺を誘う質が悪い連中もいる・・・・・・そんな事に一々、耳を傾けていたら心が壊れるぞ」

 帝はそう言って、煙草に火をつけて吸い始めた。

 さすがの帝も蓮の事になるとストレスが溜まるのだろうか、それとも一日中吸わなかった反動なのだろうかは定かではないが、今日初めての煙草を味わうように吸う帝。

 「でも、妹さんの事は確かめた方が・・・・・・」

 「そこまでだ。

 あいつと俺は袂を別ったんだ。それに俺は家を捨てた人間だ」

 帝はそう言って、過去に妹がしてきたこと、そして自分が妹にしたあの事件の事を語った。

 「あいつは俺の裏の部分だ。一歩間違えれば俺もああなっていた」

 「帝さんは救おうとしたんですね・・・・・・同じ器である彼女を、器という存在でなくなれば、普通の人と同じ様に暮らしていけると・・・・・・」

 「さあな。 当時はそこまで考えてなかったし、俺はあいつと向き合う事が出来なかった、ただのチキン野郎だよ」

 「形はどうあれ、その時はちゃんと向き合っていたんではないですか?」

 「やけに食いつくな? すでに終わった事だ。 時間は巻き戻せない」

 そう言い終わると、フィルター近くまで火種が迫った煙草を携帯灰皿に押し込んだ。

 「時間は巻き戻せなくても、これから作る事だってできます!」

 「くどい・・・・・・いいか?俺はすでにあいつを再起不能にしたんだよ。自分の手でな。

 今まで向き合わなかった事をその時初めて後悔したが、もう終わってしまった事で、俺とあいつの道が二度と交わる事もない!話は終わりだ」

 帝はそう言って、メモを見る。

読んで頂きありがとうございます

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