第七伝 人と妖怪~器と依り代~その二
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華やかに光が躍る街に、不機嫌な顔したナオと上機嫌でニコニコしながらその後を歩くタマがいた。
帝達四人は逃亡者を探す事になったが二人一組で行動する事になったのだが、組合せが問題となった。
「俺とエリ、ミカと蒼空でいいだろう」
と言うナオに対し、帝とタマが反対した。
「ナオ、相手は妖怪かもしれん、俺とタマはともかく、お前とエリさんは妖怪について、無知すぎる。
俺とナオ、タマとエリで組むべきじゃないのか?」
「いや待て、我が主よ。
相手が妖と言う事は否定はせんが、その組合せはおかしいじゃろ?
怪しい飲み屋のスカウトが多いこの町で見目麗しい乙女二人が夜に歩くとは、変な虫が寄ってきたらどうするつもりじゃ?
一人一人を相手にしていたら、面倒じゃ」
「「乙女とか言うな!」」
帝の提案を否定し、新たな提案をするタマ。
ナオと帝の突っ込みが入るがタマは無視する。
「ここはお互いのパートーナーを入れ替えて行動するべきじゃろ」
それもそうかと納得する帝。
「まぁ、ちょうどいい機会ではあるか・・・・・・エリさんが問題なければだが」
とエリを見る帝。
「そうですね。特に問題はないかと・・・・・・では私と帝さん、ナオとタマさんで動いた方がベストでしょう」
エリはそう答えて、ナオの方をちらっと見た。
「探すだけなら、慣れてる方がいいかと思うのだが・・・・・・」
「探すだけならな・・・・・・俺とタマが正体不明だと言ってるのだ、友好的な妖怪の可能性もあるが、あの現場では襲い掛かってくる事もある。
俺とタマなら対処可能だが、お前や、エリさんはどうする?
この手の連中は人肉や血を好む傾向がある。
エリさんを五体満足で済ませる気なら条件を飲むしかあるまい?
心配すんなよ、いつも守る側が今回は守られる側になるだけだ。気楽に行け」
と、ナオの言葉に帝がそう言って納得させ、ナオとタマ、帝とエリと別れて別行動になったのだ。
「朴念仁よ、次の角を左じゃ」
タマが前を歩くナオに声をかけた。
「朴念仁言うな。 蒼空さん、俺にはちゃんと名前がある」
ナオが振り返り、タマにそう言った。
「我が嫁から聞いておるが、話を聞くと朴念仁ではないか?
それが嫌じゃというのであれば天然でどうじゃろうか?」
「どうしてそうなるんだよ! 俺は天然じゃない! あと公衆の面前で嫁とか言うな!」
「やれやれ、お主も、我が嫁以上に頑固者じゃのう・・・・・・あやつもお人好しで天然朴念仁じゃが、お主の方がある意味、一枚上手じゃな」
ナオはやれやれと言った感じで溜息を吐いた。
「はぁ・・・・・・好きに呼べ・・・・・・なんだってミカはこんな女が好きなんだよ・・・・・・」
その言葉を聞いたタマはキッと真顔になり、口を開く。
「簡単な事じゃ。
我が好きなだけであり、我が主もまた我が好きだからじゃ」
至極当然の答えを言うタマ。
「妖怪だろ? 人外だろ? 人を好きになってどうすんだよ!」
と、ナオの突っ込みが入る。
「これは面白いこと言うのぉ・・・・・・安心しろあやつは我の事を愛してなどおらんよ」
「は?」
タマの言葉に耳を疑うナオ。
「簡潔に表現すれば、帝は渡りをする鳥で、我は止まり木じゃよ」
「いや、意味わかんねーよ!」
「あやつは現人神じゃ。ま、本人は人と思っておるから、まだ人なのじゃろうが、帝は自分がすでに人と一線を画しておる存在じゃと認識しておる。
人とも妖とも違う存在が虚空帝と言う人間じゃよ」
タマの言葉はまだ続く。
「あやつは人でありながら、人と神と妖に限りなく近く、限りなく遠い存在。
帝が人でありながら、人ではないという事実をお主には伝えなかったのは、お主と会った時にはすでに現人神じゃった。無論、我と会った時もな。
今、お主に言えば受け入れてくれるじゃろうが、あやつと会った時はどうじゃ?」
「なら、どうして・・・・・・」
人である俺と対等で接してくれているんだ?という言葉が続かないナオ。
「答えは簡単じゃよ、人間・・・・・・いや、人としてお主が好きだからじゃ。
器が人間でその中身が神だと言われてもピンとはこぬもんじゃ。まぁ、神と言っても、色々じゃし。
我のように仙力が高まりいつのまにか、気がつけば神になるものいれば、神の修業がいやで逃げだし害のある妖怪になるやつもおるという事じゃ」
ようは個々の性格次第という事じゃ。と言葉で締めくくるタマ。
「話を戻すと、帝と言う渡り鳥は、我と言う心の羽を休める止まり木を見つけたという事じゃ。
どちらか一方の想いしか伝わらないのであればそれは愛ではなく恋じゃよ。
互い互いに想いを伝え、その思いを互いに想い続ける。我はそれが愛じゃと認識しておる。
今は我の想いしか帝に伝わっていない、一方的な我の恋じゃよ・・・・・・片思いと言うやつじゃ」
しばらく考え込むナオ・・・・・・帝との付き合いはタマよりも長い、互いに色々と相談してきた仲でもあり、また互いの家で飲み明かしたりという事もしていた。
自分にとっても帝と言う人間は親友であり対等でいられる存在であった。
「いつからだ・・・・・・いつからあいつは人じゃなくなった?」
「あやつが十歳の誕生日じゃったと我には言っていた」
ナオの問いにタマは平然と答えながら歩き出し、ナオの隣で止まる。
「人に戻る術はない。あやつは現人神としてこの先、天命を全うするまで生きる事しかできんのじゃ」
そう囁くタマにナオの表情は暗い。
「じゃが、生きてればいい事もある・・・・・・あやつは膨大な凡例を持って自分が愛される存在じゃと言う事を知れば、少しは明るくなるじゃろ。
我はその凡例を見せる存在の一つと言う事じゃよ」
少し、淋しそうに言うタマにナオは何も言えなかった。
「人として、俺にできることはあるのか?
ミカにとって俺が友・・・・・・いや親友ならば、俺にできる事が・・・・・・」
「お主は充分やっている・・・・・・あやつがまだ人であり続けたいと想い思っているのはじゃな、ナオ、お主の存在が虚空 帝と言う存在にまだ人であり続けていいのじゃと思わせてくれているからじゃよ。
知っとるか? あやつ、お主の電話やメールだとめちゃくちゃ嬉しそうにしとるんじゃよ。
片思いの恋をしている我にはできんよ・・・・・・」
タマはそう言って最後の言葉を言う。
「この先も、これからも、支えてやってくれ。そして、我が嫁をよろしく頼む」
そう言って、タマはナオの肩をポンっと叩くと、追跡再開じゃと言って、ナオの腕に絡みつき、騒がしく踊る街をまた歩き始めた。
一方でこちらはナオとタマと別れて、別行動をとる帝とキエリ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言で歩く二人に会話はない。
「そこを歩く、お二人さん、どうだい、二人で込み込みで三千円ポッキリで、時間無制限で飲み放題だよ」
黒服の男が帝とキエリに声をかけたが二人は男を無視し、歩く。
「つれない態度だな〜。わかった!俺も男だ!二千円でどうだ!」
男が言うと、帝は立ち止まり、はぁ、と溜息を吐きながら、大声で言った。
「おーい!みんなー!聞いてくれー!
このお兄さんのお店が二千円で時間無制限飲み放題だってよー!」
その言葉を聞いた人達が男に群がってきた。
その様子を見た帝はキエリの右手を掴み、数十人の人集りを抜ける。
「すまない。少々強引な手を使わせてもらった」
そう言って彼はキエリの手を放した。
「挨拶が遅れてすまないな。こうして会うのは初めてだな。
はじめまして、虚空 帝だ。帝でいい」
そう言って、右腕をだし握手を求めるとキエリも同じようにその手を握る。
「こちらこそ、ナオのケータイ経由で色々とお世話になってます。 奇多無 ラエリです。コードネームはサヤです。 好きなように呼んでください」
何度かメールでやり取りをしているせいか、二人は初めて会ったという感覚が薄かった。
「強引な手と言うのは、呼び子さんを餌にした事ですか?」
「そうだ」
とキエリの疑問に簡単答えた後、強引な手の内容を教える。
「言霊を使い、人を呼び寄せたんだよ。
普通ならあんな事を言っても通り過ぎるだけだが、言霊を使えばああなる」
簡単な説明で済ませる帝。
「言葉に重みを持たせたって事でいいんですか?」
「そんなところだ」
そう言って、帝は後ろにを歩くキエリに向き直り、口を開く。
「ナオをよろしく頼む。
俺が言えるのはそれだけだ。
ま、あいつがあなたの手に負えなくなったらいつでも呼んでくれ。 あいつから抜け落ちたネジを拾い集めて締めに行って、墓穴に埋めてやる」
「それは嬉しいんですけどね・・・・・・埋めるのはどうかと・・・・・・恋ができなくなってしいますから」
それもそうかと笑顔で返す帝。
「恋か・・・・・・まさかナオにこんな可愛い恋人ができるとは・・・・・・色々あって、紆余曲折して、雨降って地固まるが如くか」
「帝さんには勝てません。 知ってますか? 彼、帝さんから連絡来るとすごい嬉しそうにするんですよ? まるで新しいおもちゃを与えたでっかい子犬みたいにはしゃぐんですからね」
事実、彼女は自分がいても、帝から連絡がくると妙にそわそわして、よそよそしくなるナオの姿を何度も見ている。
「それに帝さんだってタマさんって素敵な彼女がいるじゃないですか」
「あれは妖怪だ・・・・・・あいつの正体を見ただろう」
キエリがタマの正体を見た時の思い出し、自分の失態で彼女が機嫌を悪くしたのではないかと思うと表情が曇る。
「安心しろ。タマはあんな事されたぐらいで機嫌を悪くするほど、人ができちゃいないよ。
むしろ、今日のデートがこんな事になってしまった事に機嫌を悪くする程だ。 あれで神だと言うから呆れるよ」
帝のトゲのある言い方に対し、キエリはふふふ・・・と笑う。
「神様でも女の子です。 好きな人と一緒に楽しめる時間は長く過ごしたいと思うのは当然ですよ」
帝の言葉にキエリが返す。
「四六時中一緒にいるんだがな・・・・・・」
と、あきれながら呟く帝。
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