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妖狐のオタ日和~現代妖怪伝奇譚~  作者: 天々
第一章 現代妖怪生誕
5/11

第五伝 妖怪 カメ子~現代妖怪討魔伝~終

カメ子編完結です。

 帝達が夏コミで大暴れしてから数ヶ月後。

 深夜にも関わらず、人が賑わう繁華街。

 高層ビルからの明かりも消える事はない大都会、東京。

 眠る事を知らない街は今日も人を引き寄せ、妖怪は人に引き寄せられる。


 車道を走る黄金色に輝く獣。大きさは平均的な軽自動車ぐらいある。

 それが街中の車道を堂々と車よりも早く走っているのだ。

 「おい、アレはなんだ?」

 「映画の撮影か?」

 「あんでっかい虎がいるのか?」

 「バカ、あれは狐だろ」

 「人が乗ってただろ?」

 それ見た人々が思い思いの言葉を口にする。

 

 「主よ、人目が付き始めたぞ」

 黄金色の獣が背中に乗る男に言った。

 「タマ、気にするな」

 タマと呼ばれた獣の正体はは獣化形態になったタマである。

 背中に乗ってる人物は当然、帝である。

 実体化して町中に逃げた妖怪を追っているのだ。


 「ちぃ・・・・・・タマ、もう少し早く走れ!」

 最近運動してないから太って動きが鈍くなったんじゃないかと呟き交じりに言われた。

 「むぅ・・・・・・主よ、しっかり捕まっとれ!」

 不機嫌そうに返事を返すタマは一気に加速する。

 「ぐ・・・・・・」

 その速さに振り落とされそうになるもしっかりとタマの身体を掴む帝。


 「お待たせしましたマスター!」

 そう言って、飛んで来たのは、手の平サイズになってどこかの博麗神社のような巫女の衣装を着ている葛葉だった。

 「童女よ、産女(うぶめ)はどうした?」

 葛葉の声を聞いたタマが問う。

 「この先、左に曲がった所の袋小路で、拘束しました」

 「上出来だ!」

 タマの問いに答えた葛葉にすぐに言葉を言う帝。

 タマはそのままの速度で、左に曲がり、袋小路に入る。

 

 袋小路に入るや否や、帝はタマの背に立ったかと思ったら、すぐにその背を蹴りジャンプし、拘束された産女の前に出る。

 「お子はどこぉ・・・・・・私の大切な赤ちゃんは・・・・・・どこ?」

 拘束されながらも我が子を欲する産女。

 「俺はお前の悲しみを癒す事も忘れさせる事もできない・・・・・・そして、紛らわす事もできないが・・・・・・・」

 帝はそう言って、無光を赤子の人形に変化させ産女に抱かせる。


 産女・・・・・・それは妊娠中に何らかの事故、または病気により、我が子を産めずこの世をさった女性達の未練が集合し、実体化した妖怪である。


 「あぁ・・・・・・ありがとう・・・・・・私の赤ちゃん・・・・・・」

 帝から赤子の人形になった無光を受け取る産女。

 無光が変化した赤子の人形は人形と言うより、ゴーレムやアニメに出てくるサイボーグや人造人間に近い変化をしている。帝がそうイメージして変化させたのにはわけがあった。

 「だぁだぁ・・・・・・まぁ・・・まぁ・・・」

 人形は産女に抱かれるとすぐに反応する。

 「初めまして・・・・・・産まれてきてくれてありがとうね・・・・・・」

 我が子を抱けなかった産女・・・・・・赤子を抱きあやし始めると産女の体が少しずつ透明になり、その体から光の粒が出て、天へと消えていく。

 

 そして、もう反応しない人形がコトンと地に落ち、その様子を見た帝達の三人は上を仰ぎ見て、産女の最後の光の粒が夜空へと消えていくの見届けた。

 「逝ったか・・・・・・」

 そう呟いた直後だった。

 パシャッ!パシャッ!

 シャッター音と共にフラッシュに気づき、振り向く。

 「誰だッ?」

 帝はそう言って、無光を無言で呼び寄せて瞬時に刀に変化させ構える。

 タマ、葛葉も戦闘態勢に入る。

 「む・・・・・・お主は・・・・・・」

 タマはすぐに気が付いたようだ。

 「さすが、仙狐と言われるタマさん・・・・・・お気づきになられましたか」

 そう言って、カメラを持った女性が近づき、街灯に照らされた場所で止まる。

 「お前は・・・・・・」

 あっけに取られ、無光を鞘にしまう帝。

 「お久しぶりです。皆さん御健勝でうれしい限りです」

 そう言って一礼した女性。

 「とりあえず、そのカメラに入ってるデータをもらいましょうか?

 あまり世間では広められたくはない事なので・・・・・・」

 と、葛葉はそう言って、等身大になり手を差し出す。

 「いやいや、童女よ。それでは我等が悪徳政治家か不正をやっている会社員かその社長としか受け取られん」

 タマはそう言うや、獣から人の姿に変わる。人の姿と言っても、頭には狐の耳がピンと立っている。

 尻尾はないが。


 「とりあえず、事情を話せてもらえば、非常に助かる」

 そう言って、帝は煙草を取り出して、火を点けた。

 「俺はあんたと付喪神になったカメラ男をちゃんと門に通したし、閻魔のババァに確認も取れている。 ここにいる事に疑問は多少あるが・・・・・・」

 と言って、吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れる帝。

 カメラを持った女性は、夏コミの会場で暴れた(と言ってもほとんど帝達が暴れていたが)付喪神のカメラ男の最初の持ち主である女性である。

 門を出現させた帝は二人に門を通り、閻魔様に会う事を伝え、そこから先は閻魔様の裁量次第と言う事になったのだが・・・・・・どうしてこうなった!


 「わかりました・・・・・・」

 女性はそう言って話し始める。


 簡単に話すと、あの後、カメラ男と女性は閻魔様に出会うが、すぐに女性の身体に幽体と魂が消滅してしまう異変が起きた。

 事態を察知した閻魔は、女性とカメラ男を同化させ、最悪の事態は免れたと言う事だった。

 

 「と言う事でして、私とあのカメラは切っても切れない関係に、文字通りになりました」

 と、付喪神となったカメラを片手に嬉しそうに笑う女性。

 「あのババァ・・・・・・人に優先事項だとか言ってただ働きさせた挙句にこのオチかよ」

 帝はそう呟いて、新たに火を点けた煙草を携帯灰皿に押し込んだ。

 「次は絶対にあのババァからの依頼なんて受けない!」

 「儂を呼んだか?小僧」

 「「「!?」」」

 

 小学生にしか見えない少女がそこにいた。

 どこかの白書に出てくるキャラと違い、おしゃぶりはしてない。

 地獄のような炎を連想させる真紅のワンピースに一本一本が蜘蛛の糸のように細い白髪を一本に束ねている。

 大きなお友達が喜びそうな整った顔に不格好なっている五センチはあるかと言うピンヒールを履いている美少女。

 そう彼女こそ、地獄の番人とも言われる存在・・・・・・閻魔大王その人である。


 「え、ええええ、えええ、閻魔様、なぜ、このような場所に?」

 取り乱したのは葛葉である。

 「葛葉よ、取り乱すでない・・・・・・こやつの事じゃ・・・・・・大方、我が嫁を掻っ攫いにまた来たのじゃろう?」

 と、臨戦態勢に入るタマ。

 その体からは今に爆発しそうな妖気が満ち溢れている。

 女性に関してはいつの間にか土下座し、そのまま硬直している。

 「呼んではいないが、来たんなら丁度いい。そのむかつく顔面を百発殴らせろ」

 落ち着いているようでいて心の中ではかなりキレている帝。


 「百発で小僧の気が済むとは思わんから遠慮しとく。

 それと、仙狐ともあろう存在(もの)がいきなりガンを飛ばすでない。

 それに・・・・・・」

 少しの沈黙の間に帝を見つめてにやりと笑いながら口を開く。

 「小僧を取り合いしとうにも、相手が沢山いるのでは、無謀じゃろ?

 ウリエル、ガブリエル、ミカエル、ラファエル、それにセラフィムじゃろ・・・・・・それに加えて、その他諸々の女神達じゃ。儂に勝ち目がないのは明白じゃ。勝てん戦はしない主義じゃ」

 周囲の視線が一気に帝に集まるもそれを平然として煙草に火を点ける帝。


 「冗談はさておいて、今回の件に弁明するならば、儂の落ち度よ。

 彼女の身体が弱すぎて盆の期間だけと定めたがそれでも長過ぎたのじゃよ。

 彼女等は悪くない」

 閻魔が頭を下げた。

 「そ、そ、そ、そ、そんな勿体ないお言葉・・・・・・気にしていませんので、お顔をお上げください!」

 テンパる葛葉。

 閻魔様より力が強いはずだが、社会的立場(この場合は霊的な立場か?)が高位に者に対しては身をわきまえる彼女とあくまでも対等かそれ以上だという事を貫くタマと帝。


 「事情はわかった・・・・・・彼女に妖気があるのも納得できた」

 帝はそう言って新たな煙草に火を点ける。

 「彼女が人に害を加えない限り退治もしない、関与もしない・・・・・・その言葉を聞きたくて直で来たんだろ?」

 続けざまに言う帝に対し、閻魔は頭を上げ、もう一度、頭を下げる。帝にむかって。

 「すまない」

 「あんたはあんたの、俺は俺のできる事をしたんだ。胸を張れ。閻魔がそう簡単に人間に頭を下げるな。

 そんなあんたは見たくない」

 帝はそう言って、笑う。

 「そこの妖怪、聞いての通りだ。

 閻魔が態々、お前を気にして、たかが人間に頭を下げた。その意味をこの先ずっと心の中でしこりとして残して、生活していくんだ。 わかったらちゃんと立て」

 嫌な役を押し付けられながらも帝はそう言って、彼女が立ち上がるの見る。

 「それと、人前で泣くなよ。 泣き虫な妖怪はごまんといるが、子泣き爺以外泣く妖怪なんぞ増やしたくないからな」

 彼女の目から伝うぽろぽろと流れる滴をみて帝がそう言った。

 「ありがとうございます・・・・・・」

 彼女は涙を流しながら、帝に頭を下げた。


 「もう一つだけ言わせてもらえれば、あのカメラ・・・・・・本当の意味であんたと一緒になれたから後悔も未練もないと思うぞ。少なくとも俺があいつなら惚れた相手がどんな形であれ存在してくれているのは嬉しいもんだ・・・・・・ま、残された者はいたたまれんがな・・・・・・」

 そう言って帝は彼女に近づき、右手を差し出した。

 「今更だが、虚空帝だ。見ての通り、妖怪退治屋をしている。改めてよろしく、それとおかえり」

 彼女は差し出された帝の手を握り、笑顔で答える。

 「妖怪、カメ子です。人間の時は鹿目羅井(かめらい) 晶子(しょうこ)です。 よろしくお願いします・・・・・・ただいま」

 

 こうして、新たな妖怪、カメ子は誕生した。

 余談だが、あの夏の日、晶子とカメラ男を送った後、モンストにログイン後にサーバー過負荷で緊急メンテにより帝のツクヨミは運極に出来なかった。

お読みいただきありがとうございました。

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