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妖狐のオタ日和~現代妖怪伝奇譚~  作者: 天々
第一章 現代妖怪生誕
2/11

第二伝 妖怪 カメ子~現代妖怪討魔伝~その2

遅くなりましたが第二話です。


 「腕がぁっー! 俺の腕がっ!」

 斬られた腕を抑えながらカメ子が叫ぶ。

 鮮血は収まるも傷口からボタボタと赤黒い液体がしたたり落ちている。

 「障害どころじゃねーぞ!」

 「誰か警察を!」

 帝の突然の行動に周囲がざわめく。

 「うるせーよ! 外野は黙って見てろ!」

 帝の声が重く響くと同時に周囲の喧騒が静まり、帝が手にしている太刀の切先をカメ子に向ける。

 「そのぐらいの傷で叫ぶんじゃねーよ! 純粋にイベントを楽しんでいたら見逃してやろうかと思ったが、お前の目が瞬きする時に妖気が漏れているのを知らないとでも?」

 帝は撮影をする無数のカメ子の中からこの男だけが妖怪なのかがわかった経緯を説明すると、上記の通りなのだが、妖気だけでは特定は難しい。

 そこでタマの鼻が役に立ったのだ。

 妖狐と言っても元は狐。獣である。

 人間よりも妖気や殺気などのその類には敏感であり、犬以上の嗅覚で嗅ぎ付けることも可能なのだ。

 撮影のポーズを変える際に帝はタマに耳打ちでどのカメ子が妖怪か聞きだし、カメ子を特定したのだ。

 「あんた一体何をしたのかわかってるのか!」

 帝と言葉を交わした係員が叫ぶ。

 「妖怪退治だ。イベントの運営会社からの依頼でこの会場に寄ってきた悪意あるモノを払うという契約で雇われた特殊係員だ。」

 「そんな・・・・・・じゃあ、あんたが、いやあんた達が例の特殊係員なのか。」

 係員の表情は曇ったままである。

 当然である。いくら、相手が妖怪と言えど、いきなり斬りかかると言うのは、人としてどうかと思う。

 ましてや、場所が場所である。白昼堂々と大衆の目があるところで退治する者など、そうはいない。

 「ちくしょう・・・・・・俺が何をしたっていうんだよ。

 俺はただ、レイヤーの写真を撮っていただけなのに・・・・・・」

 腕を斬り落とされた男がふらふらっと立ち上がり、そう呟くと男の周囲に異様な気が満ちた。

「あれ、なんだ・・・・・・急に力が入ら・・・・・・ない・・・・・・」

 帝の側に居た係員がそう行って、膝から崩れ落ち、意識を失い、帝達の騒ぎを遠巻きに見てるいる者達も次々と倒れて行く。

 「タマ、葛葉!」

 「張ってます!」

 「安心しろ。お主がそやつの腕を切り落とした時から結界は張っている!」

 帝の呼び声に同時に答える二人。

 上出来だと呟く帝は異様な気を放つ男を睨みつけ、剣を構え直していた。

 結界、本来の用途は悪しきモノが侵入を防ぎ、護る場みたいなものだが、帝達が張った結界は違う用途を持つのだが、彼女等が張った結界は悪しきモノが逃げられないようにする為の結界だった。

その結界を張った意味は当然、今から妖怪を封印するか滅してやるの意味であり、それを知っている妖怪は、逆に返り討ちにしてやるよ!と言わんばかりの禍々しき妖気を放ち、互いの生死を賭けて戦うのだ。

 もっとも、やろうと思えば、この結界は人間にも使えるし、当然、破壊もできる。

 「俺は・・・・・・オレハ・・・・・・タダレイヤータチヲトリタイダケダァッー!」

 カメ子の周囲の妖気が急速に高まり、彼の沸点が爆発したのと同時に彼が変貌した。

 「正体を見たかと思えば・・・・・・」

 変貌したカメ子の姿を見た三人は色々な意味で驚いていた

 「なんじゃ、お主のその有様は? 妖怪なら妖怪らしく、もうちょいと威厳があるような恰好なりをして欲しいもんじゃの。

 我もお主と同類だと思われてしまうではないか!」

 タマの言葉に笑いを堪える座敷童の葛葉の言葉が続く。

 「プッ・・・・・・わたくし腹筋崩壊しそうです・・・・・・妖怪と言っても多種多様ですからね。 まぁ、ただ、今回の妖怪は本当にそのまんまって感じで・・・・・・プッ・・・・・・ククク」

 「おい、お前達・・・・・・一応、あれでも付喪神の一種だぞ。

 まぁ、カメ子に化けてたから正体はカメラだとは思ったが・・・・・・まさか映画館の注意事項のCMで見るような恰好のままだったとは・・・・・・というより、お前、普通にその正体のまま会場来てたら良かったんじゃないか?」

 帝達の会話は決してカメ子を馬鹿にしているわけではない。

 ただカメ子の正体である妖怪の時の容姿がどうみてもNO MORE映画泥棒に出てくるカメラ男にしか見えないので、三人(この場合、一人と一体と一匹か?)無駄に人間に化けずに来いと言ったのだ。

 「どこまでも・・・・・・俺を馬鹿にするなー!」

 カメラ男が凄まじい妖気を発すると同時に結界全体がグラついた。

 「なっ! こやつ、我等の結界を揺るがす程の妖力があるのか!」

 「さすが付喪神と言ったところでしょうね。」

 タマの驚きに対し冷静に返す葛葉。

 付喪神・・・・・・有名な妖怪な種類であり、一般的な話では百年以上使い続けた物が妖力を得て妖怪化したものとされるが、物が妖怪化することにとって年数は関係ない。

 所有者の激しい思い入れ、憎悪、嫉妬、未練などが、妖怪化に結びつく事の方が多い。

 そしてカメラ男もまた、所有者からの激しい感情を受け、付喪神になった。

 神と言っても神と同格と言う事ではないが、そこらに祀られているお稲荷様やご神体の老木や、石よりも力は上であるのは確かであり、タマが張った結界を揺るがしたのは、火事場の馬鹿力的なものであると三人はすぐに推測するが相手を甘く見ないで鋭い視線をカメラ男に向ける。

 妖怪の中では中の中だが侮ると痛い目を見ることになる。

 なんせ、人に危害を加える妖怪の中で下の下でも人を殺せる力を持つ。

 「不本意かもしれないが、退治させてもらう!」

 帝はそう言って、刀を振りかぶり、袈裟斬りに振り下ろすも、その刃はカメラ男に届かなかった。

 カメラ男の再生した腕が、振り下ろされる刀の刃をしっかりと握っていたのだ。

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