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妖狐のオタ日和~現代妖怪伝奇譚~  作者: 天々
第二章 理と理
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第十一伝 人と妖怪~器と依り代~その終

エンカンターダの挑発に伊耶那美が姿を現し、神VS神の一色触発の危機へと陥る状況になったミカドだったが、なんとか切り抜けた後、ナオ達と居酒屋で語らう4人の楽しい時間は過ぎて・・・・・・

  伊耶那美命(いざなみのみこと )・・・・・・日本神話では有名な神である。

 天地開闢の時に生まれ、 伊邪那岐命(いざなぎのみこと )を夫とし、日本を形作った神。

 近年ではゲーム等でも出てくるため、一般的には伊耶那美(いざなみ)と呼ばれる事が多い。

 その神が今、異国の神の前に立っていた。

 『妖や精霊だけかと思うたが、神も宿しておったか』

 エンカンターダが伊耶那美の後ろにいる青年を見つめる。

 神と言うだけあって、彼女の眼にはミカドが数多の妖怪と精霊が憑いていることをすぐに察知した。

 「どいつこいつも勝手に憑いて来ただけだ。 契約もしてないのに勝手に出てくるわ、厄介な仕事を持ってくるわ・・・・・・迷惑してるんだ」

 「そう言うな。 私の本当の姿を見て、きれいだと言った者はミカドしかおらん」

 『あぁ、確かにそうね。 あんたの旦那は黄泉の国のあなたの姿を一瞬だけ見て、叫んで逃げたものね』

 「あんなのを旦那にした昔の自分を殴りに行きたいわ。

 しかも私が命を賭して生んだ子を逆上して殺してくれたし、あいつは逆シャアのハサウ〇イか!っての

 というか、伊邪那岐は絶対受けね。」

 「お前ら、どこの主婦の会話だ! というか、片方は主腐じゃねーか!

 小説版のハサ〇ェイは初恋相手を殺してるからな!」

 思わず、二人の会話に割って入るミカド。

 「で、どうするの? 私と戦うの?」

 『やめておく。 と言うより、もとより戦う気など毛頭ないのは伊耶那美もわかるじゃろ』

 「なら、神子の中に戻れ。 伊邪那美も、安い挑発に乗ってほいほい出てくるな」

 ミカドの言葉を聞いた伊邪那美は彼の影の中に消えていく。

 「その少女の安全は保証するし、力を悪用することはないから神子の中に戻ってくれないか?」

 ミカドの言葉を聞いた彼女は暫く考えた後に口を開いた。

 『その少女を頼む。

 それと・・・・・・こいつを貰ってくれ』

 彼女はそう言って、指先で魔法陣を空中に描くと、タヌキほどの大きさでナマズのような顔の竜が出てきた。

 「ぴぎゅ~っ!」

 片方は体格に合った翼、もう片方は体格に合わず小さな翼で精一杯動かしながらフラフラ、ヨロヨロとミカドの前に来る竜。

 「こいつは?」

 『バクナワと言えばわかるか?』

 ミカドはバクナワと呼ばれた竜の喉元を撫でながら口を開いた。

 「7個あった月を飴玉と勘違いして6個も飲み込んだ竜だったな」

 『やはり博識じゃな。 この神子を守ってくれた礼じゃ。 受け取るがいい』

 エンカンターダはそう言って、満足そうな笑みを浮かべた。

 「神子を守った報酬が竜って・・・・・・貰い過ぎだろ?」

 喉元から、首全体を撫でつけるミカドはそう言った。

 『言ったじゃろ? この神子の力は強いとな。 悪用する人間が多くて困ってると』

 「そういう事か・・・・・・」

 ミカドは彼女の思惑に察しがついたように呟いた。

 『そういう事じゃ。

 ではさらばじゃ、霊帝の写身(うつしみ )よ。 願わくば向こうの世界で酒でも交わそうぞ』

 エンカンターダはそう言って消えた。

 「やれやれ・・・・・・面倒事がまた増えたな・・・・・・」

 呟くミカド。

 「ぴきゅぅ~?」

 バクナワが瞳をウルっとさせて鳴く。

 「心配するな。

 ちゃんと世話してやるから、これからよろしくな」

 諦めモードのミカドはそう言って、スマホを取り出して電話をかけた。

 「あぁ、俺だ。 そうだな、久しぶりだな・・・・・・」

 面倒くさそうに電話の相手と話すミカド。

 「悪いが面倒な子を頼みたい・・・・・・そう神子だ・・・・・・今、川崎駅の裏通りの雑居ビルでXXXってとこだ・・・・・・あぁ、頼む・・・・・・ありがとう・・・・・・お義母(かあ)さん・・・・・・」

 通話を終了させると同時に、タバコに火をつけるミカド。

 「あとはここをどう片付けるべきか・・・・・・」

 紫煙を吐きながら吐露するミカドにバクナワが(おもむろ)に転がっていた腕の一部に噛みついた。

 「おい、そんなの食べたら・・・・・・」

 ゴックン

 腹壊すぞと言おうと瞬間にバクナワが噛みついた腕を丸飲みにした。

 そして、バクナワは次の身体の一部へと行き・・・・・・

 パクッ!

 ゴックン!

 パクッ!

 ゴックン!

 繰り返される光景に呆れた顔で見るミカド。

 最後に転がっていた腕を飲み込むバクナワ。

 ゴックン!

 「ゲフッ!

 ぷぎゅ~っ」

 大きなゲップをし、おなか一杯になったと言わんばかりの竜は大きくなった腹をポンと小さな前足で叩いた。

 「お前なぁ、食べ過ぎには注意しろよ?」

 どこかズレた発言をするミカドにキャンっ!と鳴くバクナワ。

 「みぃ~ちゃん、来たよぉ~」

 と扉を開けたのは、猫耳がついた初老の女性だった。

 「悪いな・・・・・・お義母さん、この少女の事を頼む」

 ミカドは女性にそう言って、神子の少女を指した。

 「じゃ、あとは任せて、あなたは行きなさい。

 待たせてるんでしょ? トモダチ」

 「いいのか?」

 「いいのよ。 親ってのはね、元気な子の顔が見れただけでも嬉しいのよ」

 ありがとう・・・・・・そう呟いて、その場を後にして、タマ達と合流したのだった。

 

 「かいつまんで話すとこんなとこだ」

 上記の出来事を要点だけを纏めて話したミカド。

 「お主・・・・・・それで我等に納得しろと?」

 タマが呆れた顔で言った。

 「ナオと同じ勝負? いや、ナオの方が勝ってるかしら?」

 と、キエリ。

 「お前と言う奴は・・・・・・」

 呆れて何も言う事ができないナオ。

 「きゅるるぅ~」

 と嬉しそうにバクナワはミカドの顔を舐めている。

 「葛葉、悪いがバクナワを連れて先に帰ってくれるか?」

 「わかりました。 マスター」

 ミカドの指示に返事をしてバクナワを抱いて帰宅する葛葉を見送る4人。

 

 場所は変わり、大衆居酒屋の一角に4人はいた。

 「修学旅行の時、ミカのクラスだけ何故か、カメラが壊れてな~。

 それでインスタントカメラでクラス写真を撮ったんだよな~」

 ビールと色々なつまみが並んだテーブルにナオが上機嫌に言った。

 「あぁ、あの時は場所が悪かったからな。

 集団自決した防空壕の入り口の前で神子が写真撮影したらどうなるかなんて、明白だろう?」

 「そんな体験したんですか?」

 心霊体験などするものではないが、そこはやはり人の性か。

 キエリは興味津々に聞き入っては質問をする。

 「そういえば、理ってありますよね?

 あれって結局なんですか?」

 キエリはそう言って、タマとミカドに質問をぶつけた。

 「そのまんまの意味じゃ」

 「そのままの意味だな」

 『わかるかっ!』

 同じ返答をするタマとミカドに思わず二人がツッコミを入れる。

 「あえて言うなら、人の理に妖怪の理は通じない」

 「逆も然りじゃ。 我等の理に人の理は通じない」

 『だからわかるかっ!』

 具体的な例えが欲しいと言う二人。

 「具体的な例えか・・・・・・そうだなぁ・・・・・・

 簡単に言ってしまえば、俺が見ている現実とナオとキエリが見ている現実が違うって事が理かな」

 幼少期から霊感が強かったミカドは普通の人と比べても見ている世界が違う。

 それと同じでナオが見てきた世界、キエリが見てきた世界、どれもが現実で実際に存在する世界。

 理はありのままの状態を受け止める事。

 俺達が言う人の理とは、妖怪が存在し、人に危害を加える事もあれば、助けてくれる事もある。

 それが人の理」

 「似たようなもんじゃよ。

 妖怪の理とは、人は捕食対象じゃったり、いたずらの対象じゃったりと多種多様じゃ、人の世界に溶け込む者もおれば、害をなす者もおるし、人に恋をする者もおる。

 つまりは・・・・・・」

 『解釈の問題(じゃ) 』

 結局はその者の解釈の違いなのである。

 「なんとなくわかるような・・・・・・」

 「わからない・・・・・・ような?」

 ナオとキエリが首を傾げる。

 「俺達ですら理解しがたい時もある。 これで終わりだ」

 ミカドはそう言って、空になったジョッキを上げてお代わりを頼む。

 「次の質問です。 器と依り代の違いって何ですか?」

 キエリが質問をしてきた。

 これまた面倒な質問だと思うミカドとタマ。

 「器と言うのはそのまんまの意味だ。

 料理を作ったら何かに入れるだろう?

 神子も同じだ。

 降臨した何かを入れる為の人間の神子・・・・・・それが器だ」

 「依り代とは文字通りの意味じゃ。

 代替え品とか間に合わせの器とか、要は神子ではない誰かの身体を借りて降臨した何かを入れる器が依り代じゃ」

 「依り代の場合はすぐに限界がきてダメになるがな・・・・・・」

 「器も同じじゃろ・・・・・・相性が悪いとすぐにダメになる」

 それはつまり、命がなくなる事を意味していた。

 「それはつまり・・・・・・」

 ナオが言葉を濁す。

 「そうだ、考えている通りだ。

 さて、そろそろ時間だ。 ゴタゴタしが、やはり友達と飲めるのは楽しいかったよ」

 ミカドはそう言って、テーブルに置かれた伝票を持って、会計に行く。

 「わしも楽しかったぞ。 とくにナオ、お主と会えた事にの」

 タマは笑みを浮かべて、ミカドの方へと行ってしまう。

 「今日はすまなかったな・・・・・・こんな日になって」

 ナオは隣にいるキエリにそう言った。

 「いつもの事です・・・・・・」

 笑顔で言う彼女だったが、内心はわからない。

 「俺達はこのまま帰るが、どうする?」

 会計が終わったミカドが声をかけた。

 「あぁ、俺達も行くよ」

 その返事をナオがするとキエリも立ち上がり、四人は店を後にして別れた。


 「今日は悪かったな・・・・・・」

 「気にするでない。 あれだけ人が多い場所では引き寄せられてしまうのも必然じゃろ」

 腕を組みながら、歩くミカドとタマ。

 「特に、お主の場合は肉体がまだ安定しとらん・・・・・・人が神になり人に戻ったのじゃ。

 これから先もこういう事は多々ある」

 「そうだな・・・・・・」

 「だからの・・・・・・もう独りで先走るな・・・・・・お主は我の嫁じゃ・・・・・・あやつがお主を人に戻る事を許した意味を・・・・・・今もこうやって我が隣にいる意味・・・・・・お主に従う者達の想い、もう少し考えてほしいのじゃ」

 「わかった・・・・・・」

 その言葉を聞いて、ミカドはふと考える・・・・・・

 今日の出来事は自分が神から人に戻った事で起きた影響の一つではないかと・・・・・・だが、答えは出ない。

読んでいただきありがとうございました。

ブクマ、評価、感想、レビューなど頂けると作者のモチベが上がり、次回が早くなるかも知れません・・・・・・多分w

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