2.3話
「げんぞー。やつは連れてきてるか?」
「ハイっす。谷口先輩。」
…シンじゃないか。学校に来てんのか?
…あいも変わらず、タニセン気に入らない奴いたら体育館裏って、昭和のヤンキー漫画じゃないんだから、
そこで胸ぐらを掴まれてる男!
そいつの名前はシン。
そう!これが偶然かどうかとはわからない。
夢ならば昨日で終わりだから、
別に気にする事もないのだが、
あの痛みだけが、
また真実なんだと思わざるを得ないとさせている。
真実なのならば、そのシンという
名前を聞いて、苛立ちをがわきだってくるのが自分でもわかった。
「シンよぅ。何かってに学校休んでんだよ」
「ブツブツブツブツ。」
「はぁ?毎回聞こえねーんだよ。てめえなんかいてもいなくてもいんだよ。」
そう言うと先輩の拳がシンの腹にボディーブローが飛ぶ。
「ウッ!ブツブツブツブツブツブツ、、。」
「あっ?すいませんって言ってんのか?すいませんじゃねんだよー。オラ5000円で勘弁してやっから、出せ。」
「ブツブツブツブツ。」
「金出さなきゃ、ここで脱げ!
おらっ!全部脱いでみろってんだよ!」
「ブツブツブツブツブツブツ。」
『だから聞こえるように喋れってんだろ?あん?じゃあダンゴ虫食うか、脱ぐかどっちかしろ?』
オレはこの光景をみているのが、
もの凄く嫌いだ!
自分で選択しこちら側に立ってるとはいえ嫌いだ。
しかし、げんぞーはオレとは違い楽しそうだ。
今まで生きてきた境遇の違いなのかもしれない!
でもオレには見ていられない。
かと行って谷口先輩に刃向かおうとも思えない。
オレは見ていられなくなって、
とっさに前に出た
そしてシンの胸ぐらを掴み、
最低限の力で、相手が失神するように、
顎先めがけて拳をフルスィングした。
『おまぇ見ててイライラすんだよ!』
これぞ、極めワンパン
通称キワパン!
ワンパンでかならず失神させるから、キワパン
何故かそう言われている。
「おいおぃ!いーねー。ジュンこう!
なんだよジュンこうタイマン以外じゃ、キワパン使わないって言ってなかったっけ?
久しぶりにみたけど。この膝から、砕け落ちる感じたまんねーよ!
なんだよ、後輩のくせに最後においしいとこ持ってくんだからなぁ、。
でもそこが、goodjobだせ。
あージュンこうのキワパンで超スッキリした。今日はかえんべ。」
『はいっ、、。』
「ジュンおまえやっぱりスゲェな。同い年とは思えねーよ。オレが女なら惚れてるわ。」
げんぞーが肩に手を回してくる。
『そんなことねぇーよ。』
…そんなことねぇーんだ。
そう思い振り返ると、シンはその場でたおれていた。
…すまん。またオレのせいで。
かなり前に一度だけ、シンにキワパンを使ってのしたことがあった。
あの時オレがワンパンで、のしてなかったらシンにはもしかしたら違う未来があっのかもしれない。
…すまん。オレはお前の犠牲の上にこの立ち位置にいる。
…それだけは忘れない。忘れないからな。
なぜいきなり殴りつけたか、自分でもわからない行動だった。
もどかしい昔の自分でも見てるようにイライラしていたのか、
昨日の夢の世界の言動を思い出しイライラしていたのかはわからない。
タニセンが、これからエスカレートしていくのをキワパンで、のしておけば、それ以上やられないと思ったのだろうか?
気がついたら拳を握りシンの前に立っていた。
まるで感情が抑えられず拳を握った、昨日の夢のように、、。
今日も組みたくもない奴らに肩を組まれ
下校をする。
秋風が
ため息と一緒に幸せもさらっていく、
そんな夕日の帰り道だった。