裏2.3話
そこには、僕を前にパンチで倒したジュンもいた。
僕は昨日のゴブリンとの戦いで、
強者の気持ちを知った。
…今日もなにも出来ないと思っているがいい。
…僕は昨日異世界で倒されたあの弱いゴブリンとは違うんだ。
…昨日真っ二つに切ったゴブリンはただ、戦い方が下手過ぎただけだ。
…あのゴブリンが、待ち伏せしていきなり攻撃してきたら僕も苦戦していたんだ。
…こっちの世界でも、異世界でも、考えて戦った方が勝つに決まってる。
…始めはやられた振りで僕が何も変わっていないところをわからせて、油断した所で一気に行こう!
…この戦闘ではそれしかない!
「シンよぅ。何勝手に学校休んでんだよ。」
「ブツブツブツブツ。」
「はぁ?毎回聞こえねーんだよ。てめえなんかいてもいなくてもいんだよ。」
…聞こえないって言われても元々声は小さいんだ。
…まるでこいつあの時のカズキだな。弱い者をバカにしてからかって、、。
…やはり異世界とこっちの世界は違うようで同じだ。
そう言うと先輩の拳が僕の腹にボディーブローを打ってくる。
「ウッ!ブツブツブツブツブツブツ、、。」
…現実世界はやっぱり痛いな!
…殴られただけでこの痛みか、、。
…プレイヤーとしてダメージを受けても異世界だと1/3の痛さだから耐えられるけど、こっちは長引くとヤバイかな。
「あっ?すいませんって言ってんのか?すいませんじゃねんだよー。オラ5000円で勘弁してやっから出せ。」
「ブツブツブツブツ。」
…あーうるさい!耳元でピーチクパーチク!
「金出さなきゃ、ここで脱げ!
おらっ!全部脱いでみろってんだよ!」
「ブツブツブツブツブツブツ。」
「だから聞こえるように喋れってんだろ?あん?じゃあダンゴ虫食うか?脱ぐかどっちかしろ?」
…そろそろだな。
…地面のダンゴ虫を探しに視線を外したその時がやる時だ。
僕は誰もわからないようにこっそり、
ポケットに腕を入れた。
心臓がドキドキする。
何に対して心臓が高鳴っているかわからない。
自分が変われる事にか、、。
こいつが倒されてモンスターみたいに横になる姿を見れる事か、
今はわからないが、
もう脳内のアドレナリンが止まらない。
やつが下を向いた!
…今しかない!
そう思った時だった。
『お前、見ててイライラすんだよ!』
ジュンのまたあのパンチだった。
世界が歪んだ。
目の前の景色がぼやける。
「おいおぃ!いーねー。ジュンこう!
なんだよジュンこうタイマン以外じゃ、キワパン使わないって言ってなかったっけ?
久しぶりにみたけど。この膝から砕け落ちる感じたまんねーよ!
なんだよ、後輩のくせに最後においしいとこ持ってくんだからなぁ、。
でもそこがgoodjobだぜ。
あー。ジュンこうのキワパンで超スッキリした。今日は帰んべ。」
『はいっ、、。』
そう言って、、。あいつらは満足気に行ってしまった。
…そうか、あの先輩はボスでもなくカズキ的な立ち位置だったのか?
…ジュン!お前が異世界での僕だな!
…毎回毎回!
…くっそー!あんなにモンスター倒したのにこっちの世界じゃ、僕は結局昨日のゴブリンと一緒じゃないか、、、。
意識がなくなりかけながら、
こっちの世界での最強のパーティが楽しそうに弱者を狩って去っていく。
その楽しそうな話声がかすかに聞こえる
「ジュン、お前やっぱりスゲェな。同い年とは思えねーよ。オレが女なら惚れてるわ。」
『そんなことねぇーよ。』
…そうか、僕はこっちの世界では
ゴブリンなんだ!
…ゴブリンならゴブリンの意地をこっちの世界でみせてやる!
そう思いながら意識が遠のいた。
起きた時はもう暗く、
僕は自分がまだ何も出来ないゴブリンと一緒なんだと実感しながら家路に向かい帰った。
秋風が
ため息と一緒に自信もさらっていく、
そんな夜闇の帰り道だった。