√141.1話
〜〜〜〜ルート's side story〜〜〜〜
雨に濡れながら、青い狩り場に向かった。
そして魔族のダンジョンを超え脇道に入る。
あの青い狩り場に向かう為に。
当然僕の体は全身発光していた。
暗くなりかけた空は雨雲のせいか、いつもより暗くなるのが早い様な気がする。
茂みをわけて入って行った。
そこにマップ上で青に光る狩り場があった。
一歩一歩その開けた狩り場に向かうと、狩り場の真ん中に、マスカットがいた。
…マスカット!ひょっとして1人で60、70体のモンスターを倒しながら待ってたのか?
青のマップの狩り場にモンスターが1体もいない。
いない訳ない場所にモンスターがいないという事は、誰かが狩ったしか考えられない状況で、でもそこにはマスカットしかいなかった。
…半端ないな!
…ここからストロングアローで狙撃するか?
…そんな卑怯な事で勝って意味なんか無い!
…昨日の僕ならそれで満足したかもしれない!
…でもマスカットの言い分を聞かないと、無いなら無いでそれで、戦うまでだ。
…マスカットはクズだったという事が確定するだけだ!
…もやもやしたまま、帰れない!
僕は狩り場に入って行った。
『マスカット!』
マスカットが僕の光に気が付き振り向いた。
そして僕からマスカットがいる真ん中付近に近づいて行った。
「ルート!」
『ジャイとキッドはいないのか?』
「いないよ。ってか、キッドはもう異世界にはいないよ。あの日にルートを斬った日に卒業した。」
…なんでだ?
…僕の仲間に殺されたのか?
…留置場にいるからその時の状況が全くわからない。
『僕の信用する人に安達さんって刑事さんがいる!その人に言われた。事件は思い違いや勘違いで起こる事も多々あるって。なんか言うことはあるのか?マスカット!』
お互いが向き合い5mくらいの位置でそこから動かず、ずぶ濡れで話しをしている。
「ルートを騙したくて騙した訳じゃない!」
『じゃあなんでいきなり斬った!おまえら4年4ヶ月過去に来てるんだろ?』
「ルートはクリアスキル4の、中身を知らないから!あの本は使ってる本人に、過去に来てる事、未来を知ってる様な事を言っちゃいけないの。」
…そうなのか?
『じゃあなんで、ジャイとマスカットはそれを知ってる?』
「正確にはバレていいのは3人まで!4人にバレたら多分100万倍辛い世界から帰って来れない、、、。だから、、、ルートの話を聞いても言えなかった、、、、。でも、、、なんとかしたかったの、、、。あのダンジョンでもう1つ同じクリアスキル4の本が、出ればいい、、、私はそれを祈った、、、祈ったのに、、、最悪な結果になった、、、、。私達3人の中に人生を馬鹿にする様な行動をする人はいないよルート、、。人の死や自分の死を越えてここにいるんだから!救えるなら、、、救いたいと思ったからリスクを承知であの池で仲間になったんじゃない。キッドを守らなきゃいけなくて、泣きながら斬りたくも無いルート斬ったんだよ、、、。」
…そんな、、、。
…そうだったのか。
…信じていいのか?
…マスカットを。
…僕を斬って、仲間を斬って、自分の仲間を取ったんだぞ!あいつは。
…でも、、、。
…もし、僕が逆の立場なら同じ事をしたかもしれないな。
…僕以外の仲間みんなも同じ事をしたのかもしれない。
…安達さんが僕の担当の刑事さんで良かった。
…もう行こう。
…マスカットを受け入れて、自分の運命を受け入れる時が来たのかな。
…こんななりたくなかった運命を認めても涙は流すな僕!。
…きっと多分この先たくさん流す事はあるはずだから。
…涙が勿体無い、、、。
僕は腹を決めた。
今日もう異世界を卒業する決意を。
『マスカット!僕と本気で戦ってくれないか?僕はこの先、刑務所に入り、死んだら100万倍辛い世界が待ってるんだ。戦って勝って自信をつけて卒業する。だからって手を抜いたら一生恨む。いいかな?』
いつの間にか普通の喋り方に戻っていた。
そして完全に日が暮れた。
異世界の夜はライトが無くても行動できるくらい明るいとはいえ、雨雲のせいでかなり暗い。
「ルート、、、。」
そう言ってマスカットが近づいて来た。
…なんだよ。
…戦ってくれないのか?
そしてマスカットがうつむきながら僕の前に来た。
「ルートこれ。渡さなきゃいけない物があるの。」
そう言ってマスカットが手渡して来た。
『おい、、、これって、、、。』
「ごめん、、、、。ごめん、、、ルート、、、私達があなたに、、してあげ、、、られるの、、、これしか無いの。ごめん、、、渡すか迷ったけど、、、キッドが、、、5日間、、、100万倍辛い世界に、、、いってるの、、、その世界は、、、信用したみんなから、、、殺され続ける、、、世界なんだって、、、。」
『でも、マスカット、おまえ、、、これ使ったらどうなるか、、、。』
「わかってるよ!わかってるよ!でもルート、、、がそんな辛い世界に行って欲しく無いから、、、私達がクリアスキル4を先に、、、先に使っちゃったから、、、これしか無くて、、、。渡す私だって辛いよ、、、。大切な仲間だもん。」
その言葉を聞いて迷いも無くなった。
…安達さん!
…やっぱり安達さんが言った通り、人の為に一生懸命な人達でした。
…僕は今日で終わりみたいです。
…それでも最後みんなの為にいなくなれるなら、、、
…でも、ミズ、、、。
…大輝、、、。
…もっと一緒にいたかった。
…ミズのラップをずっと聞いてたかった。
…僕より年上でしっかりしてて、最高の彼女で。
…大好きだった。
いつの間にかマスカットから貰った物に、雨じゃ無い雫が落ちていると、
周りで狩り場のモンスターが復活し始めていた。
『マスカット、、、、。最後のお願い聞いて貰えるかな?』
「、、、何?」
…マスカット目が真っ赤だな。
…僕を思って、、、。
…あんな思い出じゃ卒業出来ない!
『暗くて、大変だけど、僕と2人であの時みたいに狩りをして欲しいんだ!マスカットとの思い出をいい思い出で終わりたい、、。』
「ルート、、、。やろう。私達2人なら暗くても大丈夫だよ。」
2人で構えた。
暗い雨の中なのに、2人で洞窟でハニワと土偶に向かって行った時みたいに笑顔になっていた。
『行くよマスカット!』
「死んだら絶対ダメだからね!」
そうお互いに背中を預け青モンスター70体と戦った。
…でっかい背中だな。
…マスカット!
…本当に中学生かよ。
…楽しいな!
2人で次々と倒して行く。
…マスカットに使う予定だった矢だけどな!
『くらえ異世界最後の五月雨アロー!』
矢を全部放った。
矢と一緒に疑惑、怒り、憎しみ、全て矢に込めて全て飛ばした気がした。
暗いせいか時間がかかりはしたが70体一掃出来た。
マスカットも体がいつの間にか光っていた。
…後20分以内で終わりか。
…もう思い残す事は異世界には無いな。
僕はマスカットに近づいて小さい体で大きなマスカットを抱きしめた。
伝えなきゃいけない言葉があった。
『ありがとうマスカット。』
何も言わずマスカットの泣き声が聞こえた。
僕がマスカットから貰った物。
それはクリアスキル2の滅の本。
自分の存在を初めから生まれなかった事にして、殺した人間を生き返らせるそんなクリアスキルの本だ。
そこまでしかわからない。
それ以上は赤神様は詳しくは教えて貰ってない、というか教えてくれなかった。
だからこれを使えば僕はいなかった事になる。
その変わり殺した人間は生き返り歴史は神様により改変され、
僕は、100万倍辛い世界には行かなくてすむけど、、、。
みんなの記憶からも、僕の事は消えてしまう。
ミズと愛し合った記憶も。
初めてキスしたあの時も。
みんなと冒険した記憶もみんなの中から消える。
それでも僕は開かなくてはいけない。
人を殺してしまったから。
僕のせいで後ろ指を指され、一生会えず待つミズや大輝がかわいそう過ぎる。
大輝はもしかしたら消えてしまうかもしれない。
それでもミズは新しい恋をして、新しい男の人と幸せな生活をしてくれるはずだから。
大好きなみんなと、愛してる彼女の為に僕はこれを開くんだ。
『マスカット覚悟はもう出来たよ』
「うん。忘れない。絶対。」
『ありがとう。マスカット会えてよかった。』
「うん、、、、。忘れないから、、、、。」
そうして僕はクリアスキル2の本を開いた。
開いた瞬間本が光り、空に昇って周りの雲を全部蹴散らし、夜空を晴天にして本が降りてきた。
そして頭に声が聞こえてくる。
““““その選択をしたか。ルートよ。””””
““““では話していなかった、クリアスキル2の詳細を話そう。そもそもクリアスキルは全て必ずプレイヤーと親しくならないと手に入らない!罪を犯した赤魔族や自殺した青魔族だけで手に入るクリアスキルは無い!その中でどうやって赤魔族はクリアしなきゃいけないか、それはプレイヤーとの信頼と協力が不可欠。信頼を得て協力しながら赤魔族は異世界の情報をプレイヤーに提供し、プレイヤーはその情報から死なないように、狩りながら傷を癒す。だから大変なのだ。その中でルートおまえはクリアスキル2にたどり着いた。クリアスキル2〜4は個人でクリアして行くものだから異世界はこのままだ。だがしかし、クリアスキルはクリアスキル!消えるとはいえ、青魔族クリア同等の願いを聞こう。その期限は明日の夜1:59:59までだ。1:59:59までに人間界で本を開かない場合は願い無しと判断され、そのまま存在が無くなる。ルートはこの本を持ったまま人間界に帰るのだ!そして、消える準備の時間として20時間の猶予が与えられる。そして願いが決まり悔いが無くなった時点決まった願いを込めて本を開く。そうすると叶えられないものは無理だがなるべくは願いに沿えるよう神達でなんとかする。そんな感じだ。ルートよ。おまえはなかなか知識欲が深く、面白い赤魔族であった。よくここまでたどり着いた。以上だ。””””
そう頭に話しかける赤神様の会話が終わると、
本が光りを消し、ゆっくり僕の手元に降りて来た。
…そうか、僕はまだ人間界で1日生きれるのか?
…会えないと思っていたのに、、、。
…会える、、、。
…最後に一目大好きなミズと愛おしい大輝に。
残りの時間で頭に聞こえた内容をマスカットに伝えた。
伝えてもこの内容すら僕が本を開き次第忘れてしまうけどそれでも伝えた。
そして悔いが無いようにねと言われ、2人で隣同士で座った、、、。
僕とマスカットはその後一言も話す事は無かった。
そして2人でそれは綺麗な夜空を見つめ見上げたまま、
僕は最後の異世界を卒業したのだった。




