√140話 (×回目)
〜〜〜〜ルート's side story〜〜〜〜
×回目の2013年6月1日 AM6:00
僕は刑事さんの管轄する警察署に移送されて来た。
…やってやったぞマスカット。
…泣けばいい。
…僕だっていずれは100万倍辛い世界に行くんだ。
…味わえよ!そんな100万倍なんかより何万分の1くらい辛い異世界を、、、。
…僕の方がまだ全然辛いだろ?
…あんな事をしても何しても!
…犯罪も確定して、
…最愛の人とは触れ合えず、
…最愛の人と僕の子供は僕のせいで犯罪者の子供や彼女と後ろ指を指されるんだ。
…そんな僕は、死んだら100万倍辛い世界が待ってる!
…この人間界の世界のどこに救いがあるんだよ。
『いつ救われるんだ僕は!!うわー。』
『なんの為に生まれて来たんだいったい!!!!』
【ガン!ガン!ガン!】
『こんな、、、人生、、、を送りたくて、、、生まれてきた、、、訳じゃ、、、無いのに。』
絶望を抱き、鉄格子を掴んで少し経つと、
「大君。大丈夫かい?」
鉄格子の扉の前でしゃがみこむ僕が見上げると、そこには安達さんの姿があった。
『安達さん。早く取調室へ連れてって下さい、、、。』
「遅くなってすまないね。大君。6時ぴったりに来る予定だったのだけど、6時過ぎに神様からいきなり電話があってね。」
…神様?
…未来を知る神様の事?
…あの4人の誰かか?
『神様って、、ひょっとして、。』
「聞きたいかい?じゃあ取調室でゆっくり話そう。今日は差し入れもあるんだ。行こうか?」
『はい。』
そう言うと取調室に連れていかれる。
後ろからついて来る若い刑事の佐伯さんは、
また安達さんは勝手な事ばかりしてという気持ちが顔に出ていた。
「佐伯君。いつも悪いね。6時から7時は私の時間という事で、、、。」
「所長が来る前に終わらせて下さいよ。」
【ギー!バタン!】
そしてお互いが座る。
「はい。大君差し入れだ。」
…なんだこれ?パン?
『ピザですか?』
「違うよ。兄ちゃん焼きと呼ばれてるパンだね。昨日は甘かったでしょ?今日はピザ風兄ちゃん焼きの差し入れだよ。さぁ食べよう。」
僕と刑事さんは一緒にパンを食べ始めた。
パンは少し冷め気味だったけど、暖かった。
僕が今の1番欲する心の暖かさが冷めぎみのパンから感じて、胸が熱くなるのがわかった。
「大君!簡単にできるパンだけど美味しいでしょ?」
『はい。とても、、、。』
こんなパンを食べてしまうと自分がブレてしまう気がした。
マスカットを陥れるという決意が。
人の優しさに触れると、それに連動して、
自分の中に封印したはずの優しい心が殻を破りでてきそうになるのを必死に!感情で抑え込む!
僕ははめられた!
僕は騙されたんだ!
という感情を脳から出して、殻を破りかけていた、優しさの心にまた蓋をした。
元々そう言う性格では無いのかもしれない。
受け入れられない理不尽な人生のはけ口をあの3人に向けているのかも知れない。
でも、
それでも、僕がクリアスキルの話をした時に、言ってくれれば、ここまで敵対する事も無かったはず。
そう思うのだ。
兄ちゃん焼きならぬものを食べ終わり、安達さんが話し出す。
「大君。神様と名乗るものが今日事件が起こるから逮捕して欲しいと言うんだ。大君はどう思うかね。」
『それはこないだ名前を挙げた人達ですか?』
「そうだね。そうなるかな。本名は前に言ったように教えられないけど、その1人が神様から手紙が来たって言うのさ。今日事件が起こるから協力お願いしますと。」
どうしても安達さんの前だと非常な人間になれない。
まるで神様が人間界でこれ以上恨みを買う事をするなと言っているかの様に。
たとえ裏でキッド、マスカット、ジャイが手を引いてるとしても、
『事件が起こるなら事件を解決してあげればいいんじゃないですか?』
兄ちゃん焼きなんて、パンなんて食べたせいだろうか?
意外な回答が自分から出た。
『安達さんはその人達に利用されてムカついたりしてるんですか?』
「いや、そんな事は無い。ただビックリしてるだけだよ。でもどうして、神様なんて回りくどい事をするのかそこは引っかかるけどね。大君はその名前の人を恨んでいるのかな?」
『、、、、、、、はい。でも今は半分わかりません。』
「そうかぁ。私は人間界でその人達に会った事があると言ったね。その人達は人を救うのに一生懸命な人達だった。みんな周りの目など、気にせず人助けをしていたんだ。初めは刑事の私をからかうなんてと思いで、指定された場所に行ったんだよ。そしたら女の子が乗った車が事故したんだ、、、。ただ、その女の子はなぜかヘルメットをしていた。なぜ、事故を把握していたなら事故を起きない様にしなかったのかそれは未だに謎だ。手紙に事件の内容を人に話さない様に、そうしたらまた手紙や連絡が来る。あなたの正義感を信じて!と書いてあった。そしてこれを見て欲しい。」
安達さんが名刺を出して机に置いた。
僕からしたらなんの変哲もない安達警部と書いた名刺だった。
「大君!私はまだ警部じゃないんだ、まだそこまで昇進していないんだ。複製した物かとも考えたが、私の吸ってるタバコの匂いがしたんだよ。これが初めての手紙と一緒に入っていたんだ。」
…未来から持ってきたのか?
「私は未来多分警部になっているんではないかなんて、刑事としてありえない推測を立てたんだ。あの事故をみてしまったからね。非科学的な事も信じる様になった。それから私はその幻みたいな話を必死に調べた。そして君に会えた。そういう訳なんだよ。」
『僕が考えるに、必ずその誰かが4年4ヶ月過去に来てます!多分キッドってやつですね。そいつのカバンから本が出ましたから。キッドも僕同様、何か変えたい未来があるんじゃないですか?』
「いやー。大君おもしろい推理をするね。大君は刑事になっていたら私の同僚だった男と同じくらい腕利きの刑事になると思うよ。奇抜な発想をするやつでね、私の兄ちゃん焼きのパンはその男から教えてもらったんだ。元気な兄ちゃんになって欲しいからってしょっちゅうここに泊まっては調べ物してはそのパンを食べていてね、私も何回ご馳走になったものかと、、、。あぁ。ごめんごめん話が脱線してしまったね。続けて大君。」
『安達さんその3人の話を話しておきます。異世界は、心に傷を負った者!殺人関与者もしくは、殺人者、自殺した者で構成されています。』
「ほうほう。それで。」
『ジャイ、キッド、は知ってるって言ってましたね。』
「そうだね。話した事もある。」
『その2人は心に傷を持って異世界に来てます。中学生の女の子はマスカットって名前で自殺で異世界に来ています。』
「自殺?自殺はおかしいね。命を救われた女の子が、自殺なんて、そんな事があるのかい?益々先が読めない神様達だ。刑事は楽しいな大君。そもそも自殺して死なないのかい?」
『たまたま神様に選ばれた人がもう1度死ななかった事としてやり直せます。でも、異世界では罰として、30日魔族として心に傷を負った者に狩られる運命です。痛覚は1/3とはいえ多分痛いです。』
「多分?君は魔族ではないのかい?」
『僕は魔族は魔族なんですが、殺人関与者、殺人者として転生された魔族なんで罪は更に重く、痛覚は通常同等です。異世界では何回も死にました。悲鳴が止まらないくらいの痛さでした。』
「そうか、、、。」
【ドンドンドンドン!】
「安達さん。もうそろそろどうですか?」
相棒の刑事さんが取調室のドアを叩いている。
「佐伯君。後1分で構わないから。」
「わかりました。」
「若いのに怒られちゃったよ。」
『ははは。大変ですね安達さん。』
「大君!初めて笑ったね。」
『いつぐらいぶりか忘れました。そういやー異世界で笑ったなマスカットやあいつらに笑わされたな。』
「大君!君から見て、あの人達はそんなに信用出来ない人に見えるかい?」
『そんな事はないんですが、、、やられた事がやられた事ですし。』
「それについて、その人達と話はしたかい?」
『してないです、、、。』
「そんな私がそのみんなの肩を持つ訳じゃないんだけどね、1度話を聞いてみるのもいいと思うよ。異世界での大君の行動は自由だけど、もし何か誤解があるなら話しといた方がいい。事件は思い違いで始まる事も多々あるからね。あの時になんで話さなかったんだろうってよく聞くからね。」
『わかりました、、、。』
【ガチャ。】
安達さんの相棒の佐伯さんが入って来た。
「安達さん。そろそろパソコン覚えてくださいよ。自分、調書取るために安達さんの相棒してる訳じゃないんですよ。」
「いいじゃないか。私はね、話しをするのが専門だから、佐伯君は私のその話す技術を盗めば無敵になるよ。刑事が盗むとか言ってしまった!こりゃ愉快!はっはっは」
笑っているのは安達さんだけで、僕と佐伯さんはオヤジギャグに引き笑いだった。
そして、異世界ではなく、人間界で起きた事件の取り調べが始まり安達さんとの会話を佐伯さんがパソコンに調書として書いていく作業がまた始まった。
そしてそれは昼まで続き、安達さんは神様に呼ばれているせいで本日の取り調べは正午と言う早さで終わり、留置場の部屋に戻された。
…どうしようか、、、。
…マスカット、、、。
…僕はどうしたらいいんだ。
…なんで言わなかったんだろう?
…なぜ言わずにいきなり斬ったんだ?
…言えない理由があったのかな?
…知られたらいけない理由?
…僕や仲間みんなを斬らないといけない理由?
…なんだそれは。
…裏切らなくちゃいけない理由になる程の理由なのか?
…どっちにしても明日で異世界は終わりだ。
…とりあえず話は聞くにしても明日はマスカットと決闘はしよう!
…それが、僕の卒業式だ。
…これから長い長い道を行く僕が歩いてく勇気をマスカットに勝って手に入れる!
…その為に青魔族達は悪いが明日やはり全員狩る!
…万全の形でマスカットに挑まさせて貰う!
…これは復習じゃない!
…もう自分の為だ!
…これからの長いはずの刑務所生活!
…人のせいにしていたら多分乗り越えられない!
…刑務所で人に当たっていても体が持つ訳ない、、、。
…いつまでもひとのせいにしていられない。
…こんな風になりたいって臨んだ未来じゃないし、
…不運で乗ってしまったレールだけど、
…きっとそんなのは僕だけじゃないのかもしれない。
…受け入らなきゃいけないのか。
…人のせいにしてないで、
…そろそろ。
…受け入れるにはもう少し自分に自信が必要だ!
…その為には、やっぱり暗くなってから勝負だマスカット!
…それにしても人の気持ちをこれほどほぐしてしまう安達さんって凄いな。
…パンの効果なのかな?
…兄ちゃん焼きか?恐るべしだ。
そうして、留置場の夜は更けて行った。