135.1話
…3回目の螺旋階段。
…これで終わりにしたいな。
今日も幻想的に虹色に輝く階段。
初めての時は乙女チックにワクワクした私。
3回も来ると普通になんとも思わない。
『前回は僕やられたけど、自分の事は自分で守る感じで行こう!』
「まぁ、前回と同じでいい感じっすねー。」
『だってパンタ強制しても聞かないでしょ?』
「間違いないっすねー。ははは。多分でも今日はいける気がするっすねー。ルートっち死にそうになったら、オレとマスカっちの側でお願いっすよー!遠いと死にそうな時間に合わないっすから!」
『わかった。その時は2人共頼むね。』
ルートが下まで着いて弓を構える!
「今回もバッサバッサと行くっすよー」
パンタも下に着いて、死神が持ってそうな鎌を構えた。
パンタは初めは気に入らなかったけど、まぁ嫌悪感は感じないくらいにはなった。
それに戦いのセンスがなかなかいい。
今回の戦闘のキーマンになる事は間違いなかった。
私もフロアーに着いた。
そしてみんな同様、武器を構える。
また天井から巨大デジタル時計が降りて来た。
…始まる!
【コケコッコー!!】
『行くよー!!』
私達は強くなった自分達を見せつけるように武器を使い戦いをした。
前に比べて、階段の5、10のモンスターを倒した時に消えて行く階段の光の消え方のペースが早い!
それほど私達が13日で強くなったという事だった。
そして、40分が過ぎた時に既に残り5体になった。
そう私達はついに195体倒したのだった。
誰もがこのまま倒せると思っていた。
『後5体!僕はもうカプセル残り無しだけど!ギリギリいけそうだね!2人とも!』
「キュキュキュッーキュキュ!」
「このまま畳み込んじゃおう!」
ルートが嬉しそうに笑う。
しかしパンタの返答は無い!
「マスカッチ!残り3体オレとルートっちで右行くっすから!左2体いけるっすか?」
「キュー!」
「余裕!」
パンタには、言葉が伝わらないけど私の行動で余裕って言葉は多分伝わったみたいだった。
…ここでは死ねない!
…私ならやれる!
そう言い聞かせ、
ハンマー側にひっくり返し、1体を壁に吹き飛ばしてる間に、もう1体を斧側にひっくり返し斬った!
…これで196!
そしてすかさず向かって来る吹き飛ばしたもう1体!
確実に仕留める為に斧の技の回転斬りで一刀両断にした。
…やった!
「キュー!」
「やった!」
「キュキュキュッー!キュキュ!」
「やったよ。ルート!パンタ!」
そう私の分のモンスターを倒して、振り返ると
ルートが倒れていた。
「キュー!」
「ルート!」
「ダメっすよ!ルートっちこんなスキル手に入れたら!」
『パンタおまぇ!』
「痛いっすか?痛いっすよね?通常痛覚っすもんね!生き返られたら困るんすよ!ルートっち!」
「キューーー!」
「ルートーー!」
私はルートに向かって走り出そうと1歩を踏み出した時!
「バイバイっすルートっち!200体倒せず残念っした!」
「キューー!」
「やめろーー」
【グサっ!】
私の前でルートがパンタに殺された。
周りの虹色のランプは普通の光に戻り、敵のモンスターは霧の様に消えていく。
…なんで、、、。
…なんで、、、。
…やっとここまで来たのに、
「キューーー!!」
「なんでよ!!」
「うわーマスカッチ怒ってるっすね!」
【アホーアホー!】
私は3回目のアホー鳥の鳴き声をパンタのせいで聞いた。
しかし今日はまだ戦いが終わりそうに無い!
パンタが私に鎌を向けた。
「オレがルートっち殺すのみられちまったっすからねー!マスカッチ!あんたはここで死んで貰うっす!」
そう言うと全力でパンタが鎌を振り上げ走って来る!
「キューーー!!キューーー!!」
「なんでよ!!なんでこうなるの!!」
鎌が全力で私の首を斬りに来る!
【カキーン!】
…死ねない!
…この事をみんなに伝えないと。
…みんなの希望を裏切ったパンタを!
…生きて帰るんだ!
…パンタを殺してでも!
鎌を斧側で跳ね上げ、
腕が上に上がったパンタに回転しながら、ハンマーでフルスイングした。
【バキッ!】
【ドゴーン!!】
パンタが柱まで飛んで行った。
「痛てて。」
パンタが起き上がり、カプセルを飲んだ。
「さすがマスカッチ!強いっすね!先生を殺すように簡単にいかないっすね!」
「キュキュキュキュッ?キュキュ?」
「あんたが殺したの?パンタ?」
「オレが殺したか聞いてるみたいっすね!マスカッチ!そうっすよ!みんなを巻き添いにしてオレが殺したんすよ!冥土の土産に聞かせてやるっす!恨みがあったんす!あの先生に!なんでいつもヘラヘラしてるかわかるっすか?オレはあいつのせいで怒る感情と泣く感情が無くなったんす!オレの親父はマスカッチと同じように自殺したっすよ!朝起きたら首つってたっす!長年かけて、原因を探したらあの先生にたどり着いたっす!先生ですが、脱法ハーブやら、薬物やらなんでも売買している裏では有名な人っした。親父は薬物が切れて衝動的に死んだっす!残されたオレはどうしたらいいっすか?泣いても泣いても戻ってこないっす!憎んでも憎んでも何も変わらない!いつの間にか笑うしか出来なくなったすーーー!!!!」
…パンタ、、。
そう話しながらゆっくり吹き飛ばされた柱から1歩ずつ、近づいてくる。
私も話を聞きながら臨戦態勢の構えで立っていた。
「だから殺したんす!毒で、さぞ苦しんだかもっすねー!ざまーっす!死体遺棄すら楽しかったすねー!ざまーっす!って思ったらつい笑ってしまったす!みんな引いてたっすけどねー!これでオレはもう死んでもいいと思ってたんすけど、やり切ったと思ってたっすけど、なぜか異世界に来たら、巻き添いにしたみんながいて、過去をやり直すなんて、バカな事を言うもんっすから、死ぬに死ねなくなっちまったすよ!せっかく殺したのに、しかしオレが殺したのになんでルートが赤魔族でオレがプレイヤーなんすかね?笑えません?しかもオレはもう100万倍辛い死後の世界確定みたいっすよ!緑神に言われたっす!ルート以外のプレイヤーはみんな先生殺しちまったのトラウマかもしんないっすけど、オレは親父の自殺かもっすね!まっ、そう言う事でルートっちには悪いっすけど、転生されて来た日は一緒でも、同じ過去を背負ってる訳じゃないんで、過去を改変されたら困るっす!100万倍辛い死後の世界でもなんでもあいつが死んだ事実を曲げられたら困るんすよ!!」
パンタが鎌を長く持ち、射程距離を長くして切りに来た。
私はこの青魔族の特性を活かして、後ろに飛び退いたが、皮1枚斬られた。
「なんすかね?こんな話する予定じゃなかったすけどね!円月斬り!」
…ヤバイ!
「キューー!」
「痛っー!!」
更に後ろに飛び退くも両肩を縦に斬られた
…ヤバイカプセル!
私はカプセル2つを一気に飲んだ!
…もう残りがない!
「どうすか?レベル32のオレはなかなか強いっしょ?想いが違うんすよ!」
鎌が横から体を真っ二つに斬りに来た。
【カキーン!】
「なんか言いたい事でもあるっすか?」
…あるよ!
…たくさんあるよ!
…今までその悩みを打ち明けた?
…パンタ!
…抱え込みすぎたんだよあなたは!
…私があなたの側にいてあげてれば気づいてあげられたかもしれない!
…私があなたの友達ならパンタから話す空気を作ってあげられたかもしれない!
「何泣いてんすか?青魔族のくせに!どうやって泣くかももうわかんねーっすよ!」
鍔迫り合いからお互いが3歩引いた。
「キューー!!」
「ちゃんと怒れてんじゃん!」
「キューー!!キュー!」
「ちゃんと怒れてんじゃん!パンター!」
「ムカつくんすよ!マスカッチあんた見てると、黙ってばかりで、ちゃんとなんかあったら言えっすよ!ちゃんと、、、あんた見てると捨てたもん思い出すっす、、。もう見ていたくないっす!だから本気で殺しにいくっすね!」
…昔なら救えたかもしれない!
…でも、今のあなたは無理!
…だって私はルートを、救いたい!
…パンタとルートならパンタがいなかったら、笑っていた未来があったかもしれないルートを。
私は回転斬りのポーズでパンタに構えた。
「回転斬りっすか?これも運命っすかね?オレの縦斬りの円月斬りと勝負っすね!」
お互いが構えた。
…パンタ悪いけど本気で行く!
「はぁーー!!!」
「キューーー!!」
【グサっ!!】
「キュー!」
「痛っー!」
…何これ刺されたの私?
…何に?
その瞬間視界がぼやける!
後ろで立てないパンタから声が聞こえる。
「ははは、、、。勝てないのわかって、、、たっすからね、、ぐはっ。、、、オレの武器の持つ部分に毒針が、、、あるっすよ、、、ははは、、、とっておき、、、最後に、、、みせる、、、もんっす、、、絶対みんなの、、、とこには、、、いかさ、、、」
パンタが煙みたいに消えていった。
…伝えなきゃ、、、。
…みんなが、、、
…みんなが私の真実を待ってる、、、。
…伝えないと、、、
…みんな、
…足が重い、、。
体力が1歩ずつ歩く度に減っていくのがわかる!
階段を手摺りに捕まりながら、必死で上った、、。
…上まで来たけど、、、。
…視界が、、、。
…意識もだ、、、。
…間に合うかな?
後5m、、、。
…もう立てない。
武器を片手で引きずり、片手で体を這って少しずつ。
…伝えないと、、、。
【ズリッ】
…私にしか出来ない、、、。
【ズサッ】
…後1歩、、、。
私は渾身の力で扉を開けた。
【ギギーーーー!!】
…もう1歩も動けない。
明るさで誰がいるかもわからない!
誰かが何かを言ってるのはわかるけどそれが誰だかもわからない。
…言わないと、、、。
「キュ、、、キュー、、、キュキュ、、、キュキュー、、、キュ。」
「ルート、、と、、、先生を、、、殺したのは、、、パンタ、、、。パンタに、、気をつけ、、、」
そうして、意識は薄れていき私は人間界に久しぶりに死で帰還する事になった
。




