6.4話
シンは完全に場の空気にのまれてる!
…いける!!顎だ!顎!
練習していた成果か、想像通りのシンの動きに、難なく
右フックを顎先に入れてやった。
ちょっと浅いような気がしたが、
いけた感触があった。
シンすまないなんて、この時は考えている暇はない!
シンが膝から、崩れ落ちるのがわかる!
が、その時にはもうオレは、
げんぞーにターゲットを変え、
げんぞーに向かって行っていた!
…いける!いけるぞ!
自分の中でアドレナリンが、分泌してるのが、よくわかる!
初めて人を殴ったせいだろうか?
初めて人を自力で征圧したせいだろうか?
今なら誰にでも負けないような錯覚に陥る。
まさにこういう状態をトランス状態とでもいうのだろうか、。
…おれなら、やれる!
そのままの勢いでげんぞーに向かっていく。
『おらーー!来いやー!』
あまりの気迫にげんぞーが、若干ビックリしている。
ただしそれも数秒!
さすがは喧嘩した事ある人間、
すぐに気持ちをスイッチして、
臨戦態勢に入っている。
調子に乗るんじゃねーと言わんばかりの先制ストレートが、
顔に目掛けて飛んでくる!!
ストレートかフックかはわからないが、ただ、顔にパンチが来ると予想していたので交わすのは造作も無い!
げんぞーのストレートを下に交わす!
…いける!この態勢からアッパーはキツイ!
オレはげんぞーの腹にどでかい一発を決めた!
喧嘩慣れしたげんぞーがこれでダウンするはずもないのはすぐに想像出来た!
…顎だ!顎!
げんぞーが腹を抑え、前かがみになっている。
…オレはやれてる!
…オレなら、決められる!
やつは右手で腹を抑えていて、左手は空いている状態だ!
…右で行ったら止められる可能性がある!ここは左しかねぇ!
利き手では無い為あまり得意ではない
左手で、渾身の左フックを頬から顎にかけて!一撃放った!
いけた気がした。
また、膝から、崩れ落ちる!
今回はげんぞーが崩れ落ちるのを見ていた。
周りの空気は完全に今オレが支配しているのがわかる!
なんだかわからないが今オレを中心に世界が回っているような、そんな感覚だ。
さっきまでヤジを飛ばしていた、
ギャラリーは、なんだこいつは、って顔でオレを見ていた。
でもタニセンは、この高校で負け無しの噂はオレの耳にも入ってはいた
だが、この時だけは、怖くなかった。
アドレナリンのせいか、気分が高まっているせいかはわからない。
この人に勝てば一生自分に自信がつくような気がした。
家で必死にやって来た素振りや
相手を倒す研究の勉強が
この自分が信じてやって来た事が実り
2人をネジ伏せた事が、
今タニセンという巨大な敵に向かう、自分の背中を押してくれていた。
…ダッシュからのワンパンで決めてやる!
『よっしゃー来いやー。』
そして、オレは叫び、
猿山のボス事、タニセンに、
向かって行った。




