110.2話
私とキッドは赤い弱いモンスターしかいない狩場で、2人で狩りまくった。
前回2人で狩りをした場所に比べもうそれはそれは余裕で、これが赤い狩場なんだと実感した。
多分私が初めて転生されて来た時に狩ったモンスター達、あれも多分赤い狩場のモンスター達だったと思う。
『疲れたな。これだけ数が多いと。』
…でも楽しかった。死ぬ心配無いし。
私は笑顔で頷いた。
『マスカットめっちゃ楽しかったって顔だな。まぁオレもめっちゃ楽しかったけど。さて次どこ行くか?』
そう言うとキッドが地図を広げた。
私は西の方にある緑色の狩場を指差した。
別にそこに行きたい訳じゃなくてどのくらい強いモンスターがいるか?それが聞きたくて。
やはり指した場所が緑の狩場でキッドは案の定ビックリした顔で見られた。
『緑?緑は無理だろ?あのな赤の狩場を数字で言うと1として、完全に赤みが無くなり青の狩場を2、そして緑の狩場を数字で3とするだろ?』
…でたー!キッドの異世界ドヤ顔講座。
…ちゃんと言葉が伝わらなくてもちゃんと聞きたい事を説明してくれる事が素敵。
…ヤバっ。ちゃんと聞かなきゃ。
『赤と青の中間の狩場!数字にしたら1.5ってとこだな。ここらへんからモンスターがただ真っ直ぐ向かって来なくて、連携を取る!背後に回るし、タイミングを合わして攻撃をしてきたりする。そして青の狩場!赤が完全に無く数字にすると2以上になると、モンスターも魔法を使ってくる!まっ青の2.0だとその狩場の広さによるけど1体か多くて2体だな。そのくらいなら近接戦をしながらでも目視で確認しながら戦えるけど緑なんてそりゃもう何体魔法使うやついるかわかんねーし、未知過ぎて確実に死ぬな!オレとジャイが2人で行けるのが数字にして、2.3くらいの狩場だ。赤→青→緑→黒の4段階って話だが、森にランダムに発生する黒の上!金があるって前にプレイヤーが言っていたが、誰も信用しなかった。そいつは金がある!ただ1対1のボスバトルになるって言っていた。周りはカモフラージュされていて、入るといきなり広くなるらしい!そして10からカウントダウンが始まる!恐ろしくて逃げて来たって言ってたけど、その話を聞いてからその金を見たやつはいないから金があるのか無いのかは謎だ。マップに1回写れば次から写るのかもわかんねー。
あくまで予想だが赤〜黒までは0.1刻みみたいに狩場があり、4の次はもし金があるなら、0.1刻みは無く5しか無い!そんな感じだ。わかったか?それを踏まえてマスカットさてオレが調べた狩場の中でどこに行きたい?』
笑顔でマップを開いて来た。
…ここでしょ?
私は緑の狩場を指した。
『マスカットおまえ、オレに死ねと?』
「キュキュキュキュキュー!キュー!」
「(はははは!冗談!冗談!)」
私は大笑いして、キッドの肩をボンボン叩いた。
『けっ!そのノリ嫌いじゃねーけどな。はっははは。痛えーし全く馬鹿力だな。』
私は昨日の狩場を指した。
『この狩場昨日より青が濃いぞ!ってか青だな!2.0くらいだと思う!多分昨日より強いし、何体か魔法使うやつもいると思うそれでも行くか?』
…そっか難易度が毎日変わるんだっけ?
…キッドとジャイで2.2の狩場を狩っていたなら私とキッドで2.0なら大丈夫でしょ?
私は笑顔で力こぶを見せて任せろポーズで応えた。
『力強いな。マスカットおまえにとっても、魔法を使う相手との戦闘はいい練習になると思うぜ!じゃあ行くか!』
そしてキッドがマップを腰に丸めてしまった途端、狩場の反対側の西側からプレイヤーの気配がした。
『やべープレイヤーが来ちまった!マスカット走るぞ!』
ピンチなはずのセリフを言ってるキッドの顔はセリフの内容とはまるで違い楽しそうに笑っていた。
『ついてこれんのか?マスカット!図体デカイからな!おまえ。はははは。』
…私を響みたいに言わないでくれる。
フライングして前を走るキッドに私の特技の跳躍で一気にキッドの真後ろに飛んだ!
そして走りながら後ろからキッドをお姫様抱っこし、
更に足に力を入れ空を飛ぶイメージで跳躍した。
『こいつは気持ちいいぜ!マスカット!ヒュー!』
高さこそ大して飛べないがそれでも人間では味わえないくらいは飛んでいた。
飛んだ瞬間やはり自分の中で何が消耗して行く感覚がわかる。
…これがMPが減ってる感じなのかな?
2人を風が斬りながら跳躍し池の方へ向かっていた。
だいぶ池の方まで跳躍し戻り、もうプレイヤーはいないだろうってとこでキッドを下ろした。
『最高だった!風を感じてバイクに近い感覚で気持ちよかった!また、たまに乗せてくれ。』
そう言われながらアゴと頰をご褒美でゴロゴロされる。
…結構疲れるのあれ意外とね。
…飛ぶんだけど疲れて走れなくなるから結局初めから走ってた方が早いのかも。
…抱っこして飛んだからMPかなり使ってるのかな?
…でも飛べちゃうとこがさすが異世界!!
…走ってもあまり疲れない異世界なのに。
…無理して飛ぶと疲労感がヤバイね。
…ったく!私がお姫様抱っこされたいよ!もう!
…でもまさか私がする方なんて
…なんか笑える。
「キュキュキュ。」
「(あはははは。)」
『いつでも楽しそうだな。さて、魔族村通りだぜ!北上するか?』
私は頷き。
ちょっと跳躍で疲労がまだ回復しないままペースを落として北上を始めた。
そして、マップ上では青の狩場に踏み込み、キッドと中くらいの大きさの狩場のモンスターを狩った。
無傷とはいかなかったが、キッドからHPカプセルを貰っていたから飲みながら戦いなんとか倒した。
魔法を使うモンスターはあのダンジョン以来だったけど、あそこまで魔法詠唱するような強力な魔法を使うモンスターはいなかった。魔法を使うとはいえ思ったよりは大した事は無かった。
やはり近寄ってこないのはあの土偶と一緒だったけど、
あまりにも近づき過ぎると魔法を使うモンスターも実力行使に攻撃に出る!
この行動は今後の土偶対策の参考になった。
HPカプセルはキッドと私で4個消費した。
キッドいわく上々だそうで、確実に強くなっている気がしていた。
そして魔族村通りまで戻ってきた。
『あー!疲れたなぁ。』
伸びをしてるキッドの奥に何かが見えた!
…プレイヤーだ!
私はキッドの後ろに隠れた。
隠れたとはいえこの大きい体が隠れきれる訳がない。
その私の行動にキッドがそっちをみてサーベルみたいな細剣を抜いた。
『ジャイ、、、、。』
キッドが、剣を下に下ろした。
…やっぱりこのプレイヤーがジャイなんだ!
そこには魔族村の方から歩いてくる、あのプレイヤーの村でジャイなんじゃないかな?と思った男性プレイヤーがいた。
そしてジャイが近づきながら、話しかけて来た。
「別におまえらをつけてた訳じゃないんだ。たまたまだ。邪魔したな。」
そう言うと手を上げながら私とキッドの横を通り過ぎて行く。
そのジャイは私が見たことないくらい寂しそうな顔だった。
…こんな顔するんだ、、。
…ジャイ、、。
…少しかわいそう。
そんな背中を見てキッドが声をかけた。
『ジャイちょっと待てよ。』
ジャイが立ち止まる。
立ち止まるが顔はこちらを見ない。
「どうした?あまり顔みたくないんだろ?」
『ちょっと話出来ないか?ここ、またモンスターが復活するまで15分位時間あるし。』
「オレはかまわないが、、いいのか?無理してるならプレイヤーの村に帰るが、、、。」
キッドが拳を握る。
『おまえはオレを裏切らないジャイか?』
「ああ。もちろんだ!」
向こうを向いて話していたジャイが質問の内容に振り返る。
『もし、オレが穴に落とされ火を投げ入れられたらどうする?』
「一緒に入ってやる!」
『もしオレが仲間みんなに殺される現場を見かけたらどうする?』
「例えオレも殺されても、やったやつと戦って仇取ってやる!」
『もしオレがこの先誰1人信用出来ない人間になったらどうする?』
「オレは死ぬまでおまえを信じる!オレだけは、、、おまえを見捨てない、、。」
『もしオレが、、、、オレが、、、』
「もういいっ。キッド。もういいって。すまなかった夢の中のオレがおまえに酷い事したみたいで、、、。」
ジャイが近づき涙ぐむキッドを抱きしめた。
『辛かった、、、、。ジャイ!』
「分かってる、、、。」
『おまえが先頭に、、なって、、、、みんなを引き連れて、、、。』
「すまない、、、すまない、。」
『オレなんか、、、産まなきゃ、、、よかった、、、って言われたんだ、、、。』
「そんな、、、事は断じて無い!!オレはおまえに救われたんだ、、、。いなきゃいけない、、、、。いてもらわなきゃいけない、、、いてもらわないと困る、、困るんだ、、キッド、、。」
『ジャイ、、、オレは、、、おまえを信じて、、、また笑っていいかな?』
「ああ、オレだけじゃない、おまえの周りに出て来た夢のみんなはみんなおまえが大好きだ!オレが信用出来たらまたみんなを好きになって笑ってくれ、オレに奇跡を見せてくれたあの笑顔で、、、。」
『ジャイ!』
「キッド!」
2人の熱い抱擁は見てる私の涙腺すら刺激した。
…もう、、。貰い泣きしちゃうよ。2人共。
…馬鹿、、、。
…状況しらないはずの私が泣いてたら絶対変だし。
悲しい事や辛いことには強い私だけど、
嬉しい事や感動することにはめっぽう弱い事を今日!今!再認識させられ、私はキッドとジャイがハグする方から回れ右して1人魔族村を向き必死で耐えていた。
今目の前に繰り広げられた光景がそのうち、人間界でまた笑えるみんなに繋がる1歩に見えたから。
キッドが自分から頑張って前に進み、
ジャイもそれに歩みよった。
後は時間だけ、時間だけがなんとかしてくれる。
いろんな傷も時間が癒すの法則!
異世界ではその時間が急速に加速する世界!
心の傷を急速に癒す世界!
キッドはこの異世界にきて、心の傷を2回癒して貰ってる。
…青神様。
…良くなってきてる。
…私だけのおかげじゃないけど、
…みんなのおかげで私のキッドが少しずつまた戻ろうとしてる!
…私をこの現場に、異世界に招待してくれてありがとう。
…私に取って異世界の思い出は絶対捨てられない宝物だよ。
…青神様私は卒業したら、私の願いは記憶保持のお願いにします。
なんだかんだやっていたら、目の前にモンスターが復活を始めた。
15分が経ったようだ。
『異世界では今日から3人だな!』
キッドがサーベルみたいな細剣を抜く!
「やっぱりこの3人になったな。これ以上は訳有って言えないけどな。」
ジャイも両手で武器を構えた。
…楽しいよ!
…この3人で狩りが出来るなんて、
…みんなが見てる世界に私がいて、
…その3人の中の1人、
…聞いていたマスカットが私で本当によかった。
…本当に嬉しいよ。
私もアックスハンマーを構えた。
『オレらは最先端だ!あんなモンスター秒殺だぜ!なぁジャイ!マスカット!』
「もちろんだぜ!」
「キューー!!」
「(当然でしょ!)」
ジャイが私を見て笑った。
キッドはモンスターをみて笑ってた。
私はそんな2人をみて笑顔になった。
『行くぞー!!』
みんなが笑顔でモンスターに突っ込んで走って行く
私の3日目はそんな涙あり、笑顔ありの異世界は波乱を巻き込みまだまだ続くのである。




