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ゴブリン魂  作者: チャー丸
ユッティ's side story
258/534

107話



2013年 5月13日 月曜日


AM6:00


「わー!!」


殺されて異世界を終わったから叫んでしまった。


それにしても身体がビリビリする錯覚が起きている


実際はそんな事はないけど。


身体が感電するような感覚は人間界で起きても覚えていた。


…青魔族これで痛覚1/3なんでしょ?


…赤魔族だったら地獄だよ絶対。


…キッドがよく話してくれたジュンって人よく何回も死んだって前よく言ってたけど、よくこんなの耐えれたよ本当に。


…ってかキッドも腹斬ったんだよねー。


…無理だー。私には絶対無理だー。


…痛いの辛いよ。


…異世界楽しいけど、痛いのなんとかならないかな?


「そうだ!キッド置いて来ちゃった。」


キッドをダンジョンの前に放置したまま、帰還した事を思い出し、ベッドから飛び起きた。


「痛っ!!」


あまりに急激に動いたので首が痛い。


…どうしよう。


…キッド心配したかな?


…またオレのせいとか思ってないといいけど、、。


とりあえずキャビネットのマスカットの残りを少し食べ、薬を飲み、


そろりそろり、病室を抜け出して5階に向かった。


まるで抜き足差し足!泥棒のような気持ちがする。


足音を立てずゆっくり歩いていると。


「ヒッー!」


誰かに肩を叩かれ声が出てしまった。


振り向くとジャイがいた。


「ジャイ!ちょっとビックリするでしょ!」


「ユッティ挙動不審者だな全く、この時間はオレのIDか看護婦さんの許可が無いと入れないから行っても無駄だぞ。一緒に行くか?」


「もちろん。」


ジャイを先頭で自動ドアをスキャンして入っていく。


普段はこの時間には来ないし、解放時間中しか来ないから閉まってる時は初めてだった。


扉があった事すら気がつかないそんな構造だけど、患者に会うのにIDカードが必要とか見ると、そういう人がたくさんいるんだなと思って周りを見渡してしまう。


だからその扉も解放中は、壁に入っていき、まるで隔離してる感じがしなかったのかもしれない。


自分が特別な所に入院している、そんな気持ちの敷居や、お見舞いに来た人がそう思わないように、小泉先生の配慮がなされているのかもしれないそう思った。


そしてナースステーションを抜け、キッドの部屋の前に来た。


しゃがみながら最低限の、顔を下の方から出して部屋を覗いてみた。


その上で私の背中に手を置いて、ジャイもキッドを覗いている。


キッドはもうすでに起きていて、寝巻きで、窓際に立ち窓に片手をついて、ため息をついていた。


『マスカット、、、。はぁ、、。大丈夫かな?会いたいな。早く、、、。』


「今キッド、マスカットって言わなかったか?ユッティ。」


「ちょっとジャイ重い背中!体重かけす」


「うわーー。」

「やべーー。」


ジャイの体重かけすぎで前につんのめり、転び、その声でキッドに見つかってしまった。


「ちょっとジャイ!見つかっちゃったじゃん!」


キッドが口を開く。


「おい!おまえ、、いや、、ユッティ!ジャイ!もう顔も見たくないって言ったろ?早く出てけよ。」


「はーいごめんなさい!ほらジャイ!行くよ!」


「おぅおぅ。帰ろう帰ろう。」


そう言ってキッドの部屋を離れる2人は顔もみたく無いと言われたのに笑っていた。


理由は多分2人とも一緒だと思う。


…少しずつだけど変わってる。


…嬉しい!


…マスカットを心配してくれてたのも嬉しい。


…今日の顔も見たくないは私には全然応えないな。


「ユッティ!オレらの事、おまえからわざわざ、名前に変えてたな。」


「そうだね。」


2人の笑顔の原因はやはりそこだった。


「ユッティ、、キッド、マスカットって言ってたよな。」


ルンルン気分でスキップでジャイの前を歩く。


「ジャイ一緒に屋上行こ。いつも私屋上行くんだ。暇でしょ?」


「あぁ。特に予定は無いが、、。」


「じゃあ行こうよ。」


「わかった。」


そう言うと2人で屋上に向かった。


【ガチャガチャ。】


「うーんやっぱりここと、バルコニーは最高だね。」


「この時間に来たのは初めてだな。意外と気持ちいいな。」


「でしょ。」


2人で手すりまで歩いていき、お日様を眺めて朝から日光浴。


風が吹き抜けて2人の髪をなびかせる。


「キッドね。」


私は自分から切り出した。


「多分今マスカットと一緒に冒険してるんじゃないかな?」


「そんな感じの物言いだったな。昨日の異世界も一直線に村から飛び出して行った。てっきりオレの顔見たくないせいだとばかり思っていたが違ったのか?」


「それはどうかわかんないけど、きっとマスカットと出会ったんだよ。で今一緒に狩りをしてんじゃないかな?だから人間界のキッドが良くなった。そう考えれば辻褄が会うでしょ?」


「あっーー!!あいつか?ひょっとして!来たんだよ一瞬だけど村に筋肉ウサギみたいな変なやつ!」


…相変わらず言ってくれるねジャイ!


…目の前にいるのに!


…私を愛くるしく扱ってくれるのはキッドだけだなやっぱり!


「だから、そうならジャイあなたは異世界で無理に接触しないで、向こうから来るのを待った方がいいって!アンサー2の世界のジャイはマスカットと、キッド、ジャイで冒険したって言ってたんでしょ?焦ったらダメだって!絶対冒険出来るようになるんだって!私達は、そのキッドの変わりようを毎日6時に病室に見に来よう。多分少ししたら良くなってキッドから異世界で声かけてくれるってきっと!ねっ?」


「そうかぁ、じゃあその時まで狩場で1人でレベルでも上げとくかな?そういやな、最近4人組のパーティがいつも急いで村を走って出てくんだけどどこに行ってるのか気になるやつらがいるんだよな。まぁ結局みんな狩りに出るから遅かれ早かれ村に残るやつ以外はでるんだけどな。」


「ふーん。私に言われてもわかんないよ。」


「そりゃそうだ!でもなにわともあれ、改善の兆しが見えてよかった。これで心置き無くコンサートに行けるな!」


「そうだね。ジャイの泊まってる休憩室にプリンターとPCある?」


「ああ、あるぞいつもそこで作業するからな。ノート型だから持ち歩かない時以外は置いてある。」


「悪いんだけどコンテスト行った後戻って来たら貸して!後、退院するの来週でもいい?ジャイに負担かかるなら無理して退院するけど。」


「馬鹿だな無理してキッドの家とか行くから悪化するんだよ!外出って遠足じゃないんだぞ!走ったりするなよ。金は気にするな!学費生活費も気にするな。」


「ほんと?じゃあお小遣いちょうだい?」


「ユッティ無駄遣いしそうだからな、月2万な!今はオレがセシルさんのお父さん代理な!」


「2万もくれるの?とりあえずライブと、スケートと忙しくなりそうだね。」


「ははは。あまり無駄遣いするなよ!じゃあ8時に部屋まで迎えに行くから、病室で朝ごはん食って待ってろよ。オレも腹ごしらえして、用意して迎えに行くから。」


「はーい。」


そういうとジャイは戻って行った。


…月2万だって凄っ!


…私月5千円だったのに4倍だよ!4倍!


…そんな事より学校代とか本当申し訳ないよね。


…ジャイが、居なかったら編入しても通えないよ。寮費高いもん。


…大人になったら返さなきゃ。


…たくさん働いて。


…私は私のやり方でみんなを救うんだ。


…今はまだ何やりたいか決まってないけど。


今日も気持ちのいい天気。


「ユッティ様の参上だぞーー!!ふふふ。スッキリした!」


急に叫びたくなった。


「よっし!戻ろうと。」


私は病室に戻り、朝食を済ませ、着替え、迎えに来たジャイに連れられ、モングラン号の助手席に初めて座り、ジャイが間違えっぱなしのコンサートではなく、コンテスト会場に出発した。


…んっ?さっき外出って遠足じゃねーんだよって怒られたのに、


…これ遠足みたいなもんじゃないの?


そう思っても言わない私は優しいユッティなのである。

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