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ゴブリン魂  作者: チャー丸
ユッティ's side story
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104話



前回とずっと同じ時間が流れて来たけど、なぜかキッドが手摺りを持ったまま、飛び降りない。


既に前回では飛び降りた時間を越した。


『ダメだ!死ねねーよ。』


キッドが前回と違う行動をしていた!


…なんで、、。


…神様が救ってくれたの、、?


『今のオレの周りはこんなオレを殺そうとする全く信用出来ないやつらばかりだけど、そういえばまだ、オレの為に死んでくれた信用出来る奴がいるんだった。』


…キッド、、、。


『でっかい図体の癖にすげー優しい奴でさ。』


…キッドそれって、、、。


『オレはそいつと、狩りに行かなきゃいけねーんだ、、。約束したからな。だから、死ねない、、、。オレは今はそいつとの約束を守るまで死ぬわけにはいかない。』


…無駄じゃなかった、、。


…無駄じゃなかったよ。


…嬉しい、、、、。


…マスカットが私って知らなくても、、、。


…嬉しい、、、。


…思いが届いたよ、、。


…顔なんか知らなくても、、。


…キッドの為に青魔族になってよかった。


…神様!想いが歴史を、動かしたよ。


キッドのお母さんが足から崩れた。


「もう、お母さんの、、お母さんの前から先に、、、、いなくならないで、、、、お父さんも、、、先に逝って、、、遥も、、、足を怪我をして、、、貴光まで、、、いなくなったら、、、お母さんだって、、、お母さんだってもう自分の人生を呪うしかないわ、、、、。頑張って頑張っても、、、報われない人生だったって、、、、0点でもいい、、、、

先生に学校に呼び出されても、、、お母さん構わない、、、、元気で笑っていてくれればそれで、、、。」


「ジャイ!お母さんを。」


「わかってる!!」


私はジャイとお母さんを支えて病室の外へ向かった。


向かいながら振り返ると、キッドは窓から遠くを見つめている。


誰かを思うように。


廊下に出ると


「遅くなりましたすいません。」


看護婦さんの緑さんが来た。


「緑さんどうして、こんな遅くに。」


ジャイが驚いていた。


「神取先生。なんか行こう行こうとすると色々頼まれたり、呼ばれたり、見えない誰かに邪魔されているのかと思うくらいでした。先生今は木戸君どうですか?」


「さっきまでやばかったが、今は大丈夫そうだ。やはり、うちらは落ち着くまで側に行かない方がいいかもしれないな。」


「今落ち着いているなら、昨日よりちょっと弱い鎮静剤にしときますか?先生」


「そうだな。それで様子を見よう。」


「わかりました。交換して来ます。」


「緑さん!!」


私は去っていく緑さんを呼び止めた。


「薬の投与が終わったら、バルコニーのペット同伴化のスペースにキッド連れて来て貰えませんか?キッドの友達が来ると思います。きっとキッドにとっていい方向に向かうと思います!」


「いいよ。わかった。唯ちゃん待ってて」


そして緑さんは薬の交換にここから離れて行った。


「美由紀さん。遥さん。色々説明しますから、私の所へ来てください。」


ジャイがそういうと放心状態のキッドのお母さんと遥お姉さんもここから、連れて歩いて離れていく。


「お母さん!遥お姉さん!必ず昔の元気なキッドに戻しますから。」


「、、、、、、、、。」


何も言わず振り返り、会釈だけされて、ジャイ達3人もここからいなくなり廊下に私1人になった。


…私みたいに生き残ったからハッピーエンドって訳じゃないんだね。


…これからだね。


…これから始まるんだ。


…私がマスカットとして、キッドを、昔のあのキッドに戻してあげなきゃ。


私はみんなが来るべき1階のバルコニーに自分の部屋により、痛み止めの薬を飲んでから向かった。


バルコニーでは色んな植物が咲いていて、車イスを押しながら散歩してる人、椅子に座り入院してる人とそのお見舞いに来た人で、サンドイッチを食べてる人様々の人が庭園のようなバルコニーで、時間を過ごしていた。


周りを見渡してもまだ、私しか来ていなかった。


1人でベンチに座り、痛いながらに首を上に向けてみた。


そこには私の病室もキッドの病室も見えた。


…あんな所から飛んだんだね、、。


…あそこから飛ぶくらい私達が嫌いなんだ、、、。


…はぁ、、、。


…あの公園でキスしてくれて、私に生きて欲しいって言ったキッドは、私には本気に見えた。


…15分だけだったけどお互いが強い強い絆で結ばれたような気がしたんだけどなぁ。


…なんでこうも上手くいかないんだろ?


…こんな状況をしらないで嫌われた鈴木さんと、


…全ての事実を、知りながらこんな状況になってしまい、キッドに近づくと自殺しちゃうくらい嫌われてしまった私、


…どっちが残酷なのかな?


…なんでもしてあげたい、


…私よりキッドを大事にしてあげたい気持ちでいっぱいだけど、


…今は気持ちが通じ合えるのはマスカットの時だけかぁ、、、。


…しかも、マスカットの時話も出来ないし、、。


…もう1回あのキスがしたいな。


…私の事を大事に思ってくれたキッドと。、


…今そんな事言えないかぁ。


…無理だよね。わかってる。話すらまともに出来ないし。


…いつか、私の事を好きになってくれた時でいいや。


…きっと努力は無駄にならない!


…キッドが私の命を救った奇跡の努力みたいに。


…私も頑張ろ。


…努力が実を結ぶ事を信じて。


「ユッティ!」


「響、光、シオンヌ!」


響がゲージを2つ持ち、私の荷物は光が持ち、この病院に駆けつけてくれた。


「どうしたユッティ。元気がないぞ」


「シオンヌ大丈夫だよ。」


左を見るとガラス越しにキッドが緑さんが押す車イスに乗り、こちらに向かって来る。


「もう来ちゃったかぁ。じゃあ私は行かなきゃ。」


みんながなんで?みたいな顔で見ていた。


「ユッティ一緒にウサギと遊んでいかないのか?タカの友達なんだろ?」


「友達だからこそ、離れるんだよ。詳しくは後で私の部屋に来て。みんなで遊んでいる時は私の名前と、ジャイ、キッドのお母さん、後遥お姉さんの名前は出さないで、約束して。」


なんだかみんなよくわかってない感じだが光から返答があった。


「わかった。オレ達はどうしたらいい?」


「普通に接すれば大丈夫だと思う。あなた達3人とラビ達が1番のキッドの薬に今はなるはず。」


「わかった。後で病室に行くから。」


「うん。3階の×××号室。待ってる、。じゃあ後でね。」


キッドが病院の玄関を出てゆっくりこちらに緑さんに押されやって来る。


私も光が持って来たカバンを背負い、回れ右をしてキッドが来る玄関の方にに足を向け、1歩進み出す


私とキッドの距離が、


1秒毎に縮まる。



20m!


下を向きながら前に進む。


10m!


下を向いていても、キッドの顔は見えなくても車イスに乗せている足が見えた。


5m!


3m!


『おまえさ、2度とオレの視界に入んないでくれる?ムカつくから!』


0m!


横をすれ違う時にはもう私を全く見ないで3人だけしか視界に入ってない感じだった。


1m!


2m!


…反射するペンダントがキラキラ眩しすぎるよキッド、、、。


3m!


…いやーキッツいなぁ。今のは。


…負けない


…それでも負けないよ私!


…嫌われても負けないもん。


…泣かないもん。


…何?こんな時でもあのネックレスつけてんの、、、?


…卑怯だよ、、、。


…鈴木さん!あなたが救えばいいじゃん!


…あなたのみたいにいつもキッドの胸元で私の物みたいに。


…あっ、、、。まずい、、。


…ダメだ溢れそうだ。


…泣かない。


…私は泣かないもん。


…キッドはこんな辛い思いの100万倍辛い地獄の世界に5日もいたんだもん。


私はキッドがみんなの元に着く頃に病院の玄関に入り、


ガラス越しにキッドの様子を見ていた。


その時、キッドがラビ1号を持ち上げて笑った。


笑ったんだ。


あのキッドが。


私はその笑顔に、我慢していた涙が溢れた。


…頑張ろう。あの笑顔を取り戻すために、、


…笑えないわけじゃないんだね。


…こっちの、世界でも笑えるんだね。


…、、、よかった、、。


…、、、本当によかった。


…今日この時間にあなたの笑い顔が見れて、、、本当に、、、本当に、、、よかった。


袖で少しだけ溢れた涙を拭いながら、1人自分の病室に戻った。


悲しさでは耐えられた涙は、


嬉しさでは耐えられなかった。


そこにかすかな希望が見えたから、、、。




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