103話(6/30挿絵追加)
タクシーのメーターが720円から上がり始めた。
…電車で9分って結構な距離なのかな?
…首と腰が痛いなぁ。
…痛み止めが、切れてきてる。
私はポケットを探し始めた。
…そうだ痛み止めの薬カバンの中だよー。
…マズったー。
…痛いなぁ。
だいたい病院まで後2キロくらいの所でタクシーのメーターが私の所持金を超えた。
それでもタクシーは止まらない。
「運転手さん。私2150円しかお金無いよ。」
「大丈夫。近くまで行ってあげますから。」
そういうと運転手さんはタクシーメーターを止めてくれた。
「運転手さん。」
「いんですよ。急いでいるんでしょ。」
そう言うとタクシーは止まらず進んでくれた。
「運転手さんありがとう。」
「いえいえ。」
…超助かるー。
…首痛かったし。
…今10時22分かぁ?
…ギリギリ間に合いそうかな?
…よかった。
しかし後1キロくらいの所で、タクシーが止まる!
運命が私を行かせないかのように。
牙を向いて容赦無く襲う。
「お客さん。もう歩いた方が早いかもしれません。」
そう言われ前を見ると長蛇の列の渋滞の最後尾に並んでいる。
「わかった。運転手さんありがとう。私これしかないけど、いい?」
「いいですよ。また利用してくださいね。」
扉が開いた。
…首が痛いなぁ。薬持ってくればよかった。
「ありがとう。助かりました。」
降りたらタクシーはUターンして運転手さんは手を振りながら帰って行った。
私はその運転手さんにお辞儀をして、渋滞の先の方へ向かい走り出した。
…10時25分!!
…ギリギリかもしれない!
…私がマスカットになったのは、キッドを救うためなのに、
…間に合わないなんて、シャレにならないよ。
私は首を揺らさないようにして、走った。
激しく走ると内側から、突かれたような痛みにウッって声が出てしまう。
その度に歩き、首を抑えながら走ると、歩くを繰り返しそれでも私の中でそれがめいいっぱいの速さで病院に向かった。
そして、やっと病院の玄関まで着いた
「何これ、10時40分!このまま病室に向かうとあの時とほとんど同じ時間じゃない!」
「ユッティ!」
入り口で駐車場の方からジャイが走って来た!
「何やってたの!!とりあえず走ろう!もう来てるかもしれないキッドのお母さんが。」
私とジャイが、病室に向かい走り出す。
「すまない!こんな遅くなるはずじゃなかったんだ。隣の病院に呼ばれてな。10時には帰ってこれるはずが、いつも混まないとこで、渋滞にはまってな。緑さんに頼んでおいたは置いたんだが、渋滞にはまったあたりで携帯が、切れて。」
「ジャイ!私のメッセージ聞いた?」
「いや!まだだが、なんか入れたのか?」
「そう。ちょうどいいや!携帯貸して。」
「走りながらかよ。ホラっ。」
「後で返すね。」
走りながらまるでバトンのように携帯を受け取った。
私の病室を超えた。
なんの因果か時間は前回病室を出た時間とぴったり一緒になった。
もしキッドが飛び降りた時の私のゴーストとジャイのゴーストがいれば、病室の前でぴったり、重なると思う!
…これじゃ何も変わらないじゃない!
前回と同じ時間に同じ行動を取っていた。
…これじゃ死んじゃう。
…キッドが。
キッドが泊まる病室に走る!
5階まで来てやはり怒鳴り声が聞こえた。
「来るなよ!母ちゃん!オレの事産まなきゃよかったんだろ!」
「貴光!私はそんな事言った事も思った事もないわ!なんで、、、。」
「その一言から始まったんだ!!地獄が!たったその一言がどれだけ傷つくかわかってるのかよー!!あの地獄のような中で1番キツイセリフだったぞ!おい!わかってるのかって聞いてるんだ!?」
「貴光。お母さんそんな事思った事無いって、、。産んでよかった。いつもそう思ってるわよ。0点だって貴光は貴光だもの、、、いったい何があったの?」
キッドのお母さんが、キッドに近づこうと1歩前に出た。
「そうか?ハルねぇの足を取りに来たんだろ?母ちゃん!」
「貴光いい加減にしなさい!言ってもいい冗談と悪い冗談があるでしょう?」
また1歩前に進む。
…ダメ!このままじゃ。
…痛いっ!
…こんな時に首がっ!
進むとキッドがやはり前回同様にベッドから立ち上がり病室の窓を開けた!
「今回は4人か?他の仲間はどうした?それ以上進んだら殺される前に飛ぶぞ!」
「美由紀さん。ダメだ本気だキッドは!」
「誠さん!うちの貴光はそんな事しないわ。誰より優しい子だから。」
…あの時と同じだ。
…これで死んだらもう私にもう手はないよ。
…だめだって。
声が出ない。
助けたい!でも私が1歩を踏み出してもキッドは飛んでしまう気がして踏み出せない
死んじゃダメだと言ってもキッドにとって今敵にしか見えない私の声はキッドの心に届かない
…もう、、。私はどうすれば
…どうすればよかったの?
…神様、、、。
また目の前からキッドがいなくなりそうな気がしてしょうがない。
運命に逆らいながら必死にもがいて、
私なりに頑張って、
それでも何も出来ない自分に、
今回は涙が溢れて来た。
前回は流さなかった、涙が。
そして、あの時同様キッドのお母さんが私より先に1歩踏み出してしまった。
「やっぱりこの世界でも誰1人オレの頼みを聞いてくれないんだな。わかった。」
そう言うと、キッドはまた窓の方を向き5階の窓にまた手を伸ばしてしまった。
「キッドーーー!!!!!」




