101話
響を先頭にみんな出来る限りの力で自転車を漕いだ。
キッドなら毎朝遅れそうになりながらダッシュで15分って言っていた道のりは自転車だと6分で着いた。
「はぁはぁ、結構、早く、、着いたな、、。」
「響!みんなのマラソン辞めたら体力落ちたんでは無いか?」
「シオンヌ息切れてねーの?相変わらず化け物だな。」
「私も、、結構、、キツイよ。」
「毎日走れば、あんなグデグデだった、ジャイさんだって走れるようになった。継続は力なりとはこの事だな。」
「みんなで走ってたんだっけ?」
みんなで自転車から響の持って来たカゴを持ち、学校の中に歩いて行く。
「そうだね。2月中旬から走り始めたけど、それは寒かったよ。オレもタカが言い出さなきゃ走ってなかったけどね。」
話しているとウサギ小屋に着いた。
「着いたねー。」
「あっ!そうそう今日中に全部返してくれって先生が言ってたよ。また土日ならそう言う理由なら持って行っていいけど、4匹持って行っていいのは今日だけだって、ウサギもストレスが溜まるみたい。」
「そうだよね。今日返すのかぁ。でも一緒に病院にウサギちゃん泊まるなんて出来ないと私も薄々思っていたから丁度いいかも。じゃあ病院にペット同伴可のスペースがあるから、そこでキッドに合わせてあげたい。」
「了解した。光君、響、ユッティ、カゴに入れるぞ。」
「ちょっと待ってシオンヌ。ラビ1号ってどれ?」
「私はよくわからないんだ。みんなと同じ係じゃなかったから。」
そう言うと光が1匹を抱いて連れて来た。
「この子がラビ1号。タカが1番好きだったウサギちゃんだよ。」
「かわいいー!!」
…色が異世界の私に似てるかな?
…でもなんか、他のうさぎより一回り大きくない?
「この子少し他の子より大きくない?」
「タカそいつばかりひいきにして、家から持ってきた野菜とか抱っこしながら食べさせてたから、ちょっと太ったんじゃないかな?」
「ふーん。そうなんだ。あなたがラビ1号なんだ。会いたかったよー。」
…可愛すぎるー。
…キッドが骨抜きにされるのがわかるなー。
「ユッティ!犬用ゲージに早く入れて運ばないとキッド待ってるんだろ?」
…そうだった!みんなには早く連れていきたいって伝えてあるんだった。
…まだ8時半!
…間に合うかも。
…キッドのお母さんが病院に来る前に病院に着けるかもしれない!
…私が未来を変える為に動いているから、キッドのお母さんが早く出た可能性だってある!
…だとしたら、ジャイにだって邪魔が入るかな?
…逆行してる本人しか止められないのかな?
…急がなきゃ!
…歴史の修正力になんか負けない!
「そうだね!早く入れよう!私このラビ1号でいい?」
「なんでもいいよ。みんな入れたか?」
全員が犬用ゲージにウサギを入れた!
みんなカゴにゲージを入れたり、荷台に縛ったりして用意万端。
ペダルを逆に回し、足をかけた!
「みんないける?」
みんな大丈夫って顔をしている。
「私ここから、駅までの道がわからないから、誰かよろしく。」
「じゃあオレが行く!飛ばしてもいいけどラビ達絶対落とすなよ!みんな大好きなラビ達だから!」
「わかってる!行こう!キッドがこのラビ達を待ってる!」
時間に追われながら、忙しなく動いていた。
でもまだ、8時36分!
間に合いそうな気がした。
…いける!
私なら変えられるそう思った!
駅には8時50分には着いた!
自転車効果が功を制した。
「9時発に乗れるね。」
「ユッティ!どうしてそんな急いでいるんだい?」
光は勘がいいと、聞いてはいたけど、やはり何か勘付いているのかな?
「友達が苦しんでいたら1秒でも早く駆けつけてあげたいと思わない?」
「そりゃもっともの意見だぜ!光!」
「そうだね!オレの思い違いかな?行こう!早くホームへ!」
みんなでウサギが入ったお出かけゲージを持って、電車のホームに向かった。
「ねぇ、響のうちってそんなに犬いるの?」
「そうだよ。婆ちゃん家が側にあってそこから2つ借りて来た。うちはコーギーとダックス。」
「コーギーかわいいよね。」
「響の腹の出方にそっくりな犬なんだろうな!」
「シオンヌ!まぁ否定はしないけど、コーギーとか、デブっとしててもかわいいだろ?オレの目指す路線はそこだぜ!」
「無理無理!」
みんなで口を合わせて、手を振った。
「ユッティ、生き物係も、響が初めやろうって言い出したんだよ。」
「そうなの?」
「タカとか初めは難色示してたんだけど、いざウサギのラビ達と触れ合ったら1番目をキラキラさせていたのはタカだったね。ラビ1号はオレのだから勝手に野菜あげんなよ!とか言ってたかな。」
「ははは、なんか言いそう!」
「そーいやあいつなテストの0点の紙食わそうとしてた!」
「あったねー!また0点かよオレのテストの紙ヤギみたいに食べて隠蔽してくんないかな?ラビ達とか言ってた!」
「えっー食べさせたの?」
「いやいや止めたよ。テストは近くの焼却炉に捨てに行ってた。ユッティはタカと同じ学校なの?」
「違うよ!でも友達。今私も入院してるんだ。今日は抜け出して来たけど。」
「その病院に木戸もいるのか?」
「そうだよ。でも私はもうじき退院だから何かしてあげたくて、、。」
「ユッティ、、、恋してるな?」
「シオンヌどうして?」
「なんとなく私もそんな時期があったから、、、。」
「どうだろうね?内緒だよ。」
「そうか、。」
【1番線電車が参ります!ホームの白線より下がってお待ち下さい。】
「ユッティ、上手くいくといいな。」
シオンヌがみんなに聞こえないように耳元で言った。
「うん。そうだね。」
電車が入って来て風圧で髪が乱れる。
…まだ9時!
…間に合いそうかな。
今回のキッド救出は、私の救出とは大きな違いがある!
私の救出は私のお父さんが異世界に行かなきゃ行けないから、事故に合わなきゃいけなかった。
でもキッドは違う!
普通に救えばいい!
誰かが異世界に行くとか必要ない!
ただ、死なないように動けばいい。
そんなに難しい事ではない。
鎮静剤を打つでもいいし、
キッドのお母さんに嫌われても、キッドお姉さんに嫌われても追い返すだけでなんとかなる!
どうやってもそんなに大変ではないはず
この時の私はそう思っていた。
電車の発車ベルが鳴る!
みんな9時発の電車に乗れた。
【電車が発車します閉まる扉にご注意下さい。】
【プシュー。】
そして、9時発の電車はジャイの病院の最寄り駅に向けてゆっくり走り出した。
私、光、響、シオンヌ、後はキッドの大好きなラビ4匹を乗せて、、、。