5.8話
時が一刻一刻と過ぎていく。
オレは走った。
みんなに迷惑をかけまいと、
しばらく走ったらスキルで消した光が体にうっすら光だし、
すぐにいつも通りの光に戻った。
どうやらスキルの効力が切れたらしい。
こうなるとどうしようもない。
右も左もわからない森の中で、
ただ死ぬ為だけにそこに居る存在。
それは、とても不安で、
すごく孤独で、
心が張り裂けそうだった。
そんなこっちの心境などお構いなしで、
第1波が来る
【ヒュー!グサっ!】
『うぁー、なんだこれ、ボーガンか?ちくしょう腕が、、、。』
かなり遠方からの遠方射撃の第1波はボーガンだった。
撃ったらしきプレイヤーがどんどん距離を詰めてくる。
「みんなここら辺にいるぞ!」
その声が聞こえた直後、
空に花火みたいなものが上がる。
『なんだこれ?ちくしょう、発煙弾か?徹底的に追い詰める気だな、、』
逃げる前方から人の足跡が聞こえる!
その数複数!
『ヤバイ、ヤバイ!』
これはヤバイ!挟まれると
必死に耳を澄ました。
しかし、周りに全て耳を澄まし聞いても、人の声、足跡がいない方角は皆無だった。
あの発煙弾からたった2分も経ってない。
…どうしよう。どうしよう。
「こっちだ!居たぞー。みんなで囲め」
これぞ、絶対絶命だ。
もう、どうせ死ぬ事を覚悟したオレは、なぜか向かっていく事はせず、
両手を上げて投降のポーズを取った。
これなら、会話が通じないプレイヤーにもわかるかもしれないと、
そう考えた苦渋の案だった。
そうしてる間にも発煙弾を撃ったリーダーらしき、やつの他にどんどん人が集まり、あれよあれよで、20人に囲まれた。
「こいつか最近噂の星4ゴブリンは。」
「張ってて良かったですね。グロックリーダー。」
ダメだ見逃してくれそうもない。
こうなればプライドもくそもない!
オレは、土下座し命ごいをした。
「こいつ、土下座してますぜ。」
「なにーこいつ人間みたい!おもしろーい。」
「レーネ!ストップ魔法長めでイケるか?」
「はい!はぁーー。」
…なんだこれ?体が動かない。
「おいゴブリン。おまえみたいのは色々見てきた。もう逃げれないと確信すると最後に暴れるんだろ?
だから、おまえの体を動かさないようにしてやった。
はははー。おまえはゴブリンらしくその体勢で死ねばいい。
仲間達よ、こいつに1人1人傷を与えろ!そうじゃないと、倒した時に4倍経験値が入らないからな。間違っても最後のオレまで殺すなよ!」
1人1人がオレの前に立つ!
…誰か助けて、、。
魔法のせいで声も出ない。
「はい1人目!」
「うひょーラッキー。エイ!」
手に剣が突き刺さる。
…痛い痛すぎる。
「はい2人目、、」
【グサっ!】
脇腹を軽く刺された。
もう拷問以外のなにものでもない。
囲まれてる向こうに初日に俺を斬った4人パーティがこっちをみている。
…頼む助けて、、、。
その瞬間オレの記憶が人間界にフラッシュバックする、、、。
この光景は、まさにタニセンにシンがボコボコにされている状態とまるっきり一緒だった。
…シン、、。助けてくれ、、。
…シン。うっ!
8人目の遊びの攻撃で耳を斬られた!
…もう殺してくれ。
…いっそ殺してくれ。
…神様、オレはこんな酷い事をされるほど人間界で酷い事をしたんですか?
…神様、、。
9人、10人、11人の所でもう痛みで意識を失った。
「はーいゴブリン君!だめだよ、回復魔法かけてー。」
そういうと、リーダーの仲間がオレに回復魔法をかける。
傷が少し回復した。
「だめだよ。死んじゃ!じゃ、後半戦行こうか。」
…もう地獄だった。
最後のリーダーの番になった時には酷い姿になっていた。
まだ遠くであのパーティのシンはオレをみている。
…シン、、、。助けて、、。
…助けてくれる訳ないか、あの時オレ逃げたもんな。
…自業自得だな、、。ははは。
「ハーイ全員攻撃した?じゃ最後みんなで一斉に刺してあげよー!せーの」
【ブス!ブチ!ズバっ!ブス!】
…シン、、あの時のおまえの気持ちはこんなにもこんなにも心細かったんだな。
…どれだけオレに助けて欲しいと願ったか今ならわかるよ。
…マジ、ごめんな。シン。明日からオレ変わるから。だから、そんな顔でオレを見ないでくれよ。
…シン、、。
こうして、3日目の異世界の旅は
またも死という形で幕を閉じたのだった。