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ゴブリン魂  作者: チャー丸
第2章 キッド’s side story
218/534

76話


3月19日 AM 6:00




『異世界で寝て過ごすなんて、初めてだったな。』


「確かにな。でも異世界で寝るとオレらは2時に異世界に行って4時間しか寝てないはずなのに、10時間くらい寝た感覚だな。これはこれで使える気がする。」


『ははは。ジャイは忙しい人間だからな。そういう使い方もありかもな。ジャイの父ちゃん今日出棺か?』


「ああ本来ならば昨日の夜の予定だったけど、あれだけ参列者が増えればな。」


『行かなくていいのか?』


「朝8時だろ?無理だな。パートが待ってる。明日は休みだが今日はオレのタイムセールのティッシュを心なしに待つおばちゃん達がいる。そんな愛くるしいおばちゃん達をオレは裏切れない。」


『ははは。愛くるしいじゃなくて、熱苦しいの間違いじゃねーの?兄ちゃんに気を使うとこが相変わらず優しいな。』


「そんな事ないさ。清兄は清兄の道をもう進んだからもういいのさ。さて、用意して美由紀さんの朝ごはん食べに戻るか?」


『電車でか?』


「まさか。冗談だろ?」


そう言うとジャイが指で車の鍵を回している。


『マジでか?あの中の1台に乗れんのかよ?でも駐車場ないぞ家。』


「とりあえず、パートまで家に路駐して、パート先のスーパーに停めさせてもらうように主任さんに頼んでみるよ。オレの気分も、トラウマも、今日の天気と同じで全て晴れたからな。この車だな?ジャンバー持って来てるか?」


『ああ、大丈夫だ。』


「じゃあ行くか?」


そう言うとジャイの部屋を出てあのバイクが停まってる駐車場に来た。


バイクは未だ相変わらずカバーを被って、停まっている。


「キッドカバー持ってくれ。ビートルにカバー被せないと。」


『いいぜ。これだけカバー被せるんだな。これが1番安そうだけどな。』


「確かに1番安いかもしんないけど、他は金出せば代用が効くけど、この車だけは金出しても買えないからな。親父の車だから。」


『そうだな。思い出はプライスレスってやつか?』


【パサッ】


「よしっこれでいい。キッドこの車で行くぞ。」


『なんだこれっ?なんの車かわかんねーけど痺れるかっこよさだ。』


白い高そうな車という事はわかる。


とりあえず乗り込んだ。


なんだか乗った事のない高級車に胸のドキドキが止まらない。


「マセラティのグランカブリオって言うんだぜ。」


ジャイが屋根を開けてくれエンジンに火が入る。


もう、エンジン音、オープンカーに興奮以外何もない。


『最高に気持ちいいな。』


「じゃあ、出発だ。」


車はオレの家に向かい走り出す。


まだ朝6時ちょい、交通量もさほど、多くない。


そんな中、朝日が、2人を乗せたオープンカーを出迎える。


この朝日を浴び、楽しそうに運転する、ジャイを見た時、


なんかジャイの件が自分の中で終わりやっと、かたがついたそんな気がした。


『どうだった?小学生に戻った気分になってうちらとつるんでみて。』


「楽しかったな。女も酒も忘れて充実したのは久しぶりだ。」


『なんかやっと終わった気がするな。』


「まさかなこんな結果になるなんてな。不思議なもんだ。あれだけ、自分のやりたい事が出来ると思った事もあったオレが、今は親父のやっていた事を続けていきたいと思うようになったからな。また新しい病院で再スタートになっちまった。はははは。」


『ジャイには医者が似合ってるよ。』


「そうか?そう言われちゃやらなきゃな。」


『でもこれから歴史を変えながら、未来に進んで行く上で医者のジャイは強力な味方になりそうだ。マジこれからもよろしく頼むわ!』


「もちろんだ。こんな楽しい事がまだまだ続くなんてワクワクする!でもな色々動ける刑事か警察の仲間が欲しいな。救急の方は関君が協力してくれると思う。」


『その人達に、オレが未来から来た事を言うのか?』


「いやそれはリスキーだな。3人に教えて誰かにオレみたいに勘付かれたら終わりだろ?オレが未来から来たって言ってもいんだが、それは、その場その場だな。」


『ジャイ!あの刑事な、前の未来でジュンが、死んだ病院に来てたかもしんない!あの時は気が動転してたから、よく覚えてなかったけど、名刺貰ったんだ。』


財布を引っ張り出した。


『ほらー!安達って書いてある!』


「この未来ではここに勤務してるのか?今はここ一帯の刑事だぞ。しかも見てみろ?今より出世してる。この名刺を上手く使えないかな?他に未来から持って来たものは何かあるか?これからはそういう物が相手を信用させる武器になる。」


『異世界の本と、洋服と、携帯かな?』


「キッド携帯持ってんのか?」


『いや持って来れたんだけど、電源入らないんだよ。でもこの世界じゃまだ売って無いスマホだぜ。』


「そうかそれはその携帯が発売されるまでは武器になるな。未来から来た立派な証拠になる。」


『そうか、、。それは考えもしなかった。なるほどな。今までは未来から来た事をわからないようわからないように、救っていくつもりだったから、それを持って武器にするのは考えもしなかった。仲間が1人増えただけで、行動範囲が大幅に広がるな。』


「ああ。でもそれだけにリスキーなんだ。なんで、このスマホを持ってる?本当に未来から来たなんて、なったらたとえそれがオレって事でばれても、世間に顔が割れてしまう。そしたら、隠れて行動が出来なくなるから、言わないで行動できればそれに越した事は無い。」


『そうだな。』


「これ使えよ。とりあえず無いと不便だろ?」


ジャイがスマホを渡して来た。


『ジャイこれって手帳の人達と連絡取るようだろ?』


「違う違う!それはこっちだ。で、これがプライベート用だ。」


『じゃあ残ったこれって?』


「まあなんだ。女専用携帯だ。」


『マジか?見てもいいのか?』


「メールだけでも消しとこうかな?」


言ってる側からメールを見てみた。


『ジャイ、メールに3人で同時なんてゾクゾクして楽しかったね。って書いてあるぞ。』


「ははは。ボーリングの事じゃねーかな?」


『誠さん。ベランダとか本当ばれたらまずいって書いてあるけど。』


「ははは。えーとなんだ、そうそうベランダでBBQでもしたんだっけかな?ばれたらマズイだろ?」


『誠先生大っきすぎてビックリしたってかいてあるけど。』


「あー!それはな、、、車だ!車!ってか、わかって言ってるだろ?」


『ジャイ遊びすぎー!!』


「みんなでも、俺を見てるって言うよりオレの財力とバックボーンを見て寄って来た女だからな、中まで見てくれたのはキッドおまえだけだ。」


『おっ、、、おい、オレを見つめてないで前見ろ前見ろ!これは女落ちるわ!毎回こうやってるんだろ?』


「いや、本気。」


ジャイがこっちを見てる。


『いや、いやいやいやいや、オレそういうの、わかんないし、、鈴木さんいるし、小学生だし、、、』


「何慌ててんだよ?冗談だよ。まさか本気にしたのか?嫌だなキッド変態かおまえ。」


『ふう。もう疲れた早く家にいきたまえ、ジャイ。』


…ヤバイすこしドキってしちまった。


…それだけかっこいいからな。


…こんなの人間チートだわ!イケメンで医者で、オープンカーで運転席からの助手席に椅子ドン!


…で、さっきの、こんなに見てくれたのは君だけだって言うんだろ?


…これはみんな脱ぐわ!


…そりゃ。これだけメール来るわ!


…いいんだ。オレにはかわいい眼鏡の三つ編の鈴木さんがいれば!


…鈴木さんがいれば、、、。


息を吸い込んだ。


『小学生なめんなよー!』


「ははは。どうしたいきなり。」


『叫びたくなっただけだ。誰かに。』


「相変わらず面白いなぁキッドは。」


『ほっとけ!』


馬鹿話を、していたらアッと言う間に車はジャイが辞めた病院を越え、


オレの家に着いた。


手にはジャイから貰ったけど、どうしたらいいかわからない、いつどんな女から電話が、かかってくるかわからないスマホが乗っかっていた。


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