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ゴブリン魂  作者: チャー丸
第2章 キッド’s side story
217/534

75話 ジャイロ編 end




PM 6:30




お寺まで後200mのとこまで来た。


『どうするんだジャイ?近くの駐車場に停めていくのか?』


「いや、このまま、車で突っ込む!」


『マジか?』


「駐車場に停めたらこの車で来た意味無いだろ?」


『どうにでもなれだな。』


ジャイがハンドルを切りお寺に入った。


この車を知ってる親戚や、病院関係者がめっちゃこっちを見てる。


『ジャイやべーめっちゃ見てる!』


「堂々としとけ!オレは肉親だが、兄貴達に恨まれてるから、出棺まで一緒にいる気は無い!ただ埋葬される前に、体がまだあるうちに親父と、話を、酌をしに来ただけだ。降りるぞ。」


【ガチャ。】


『完全に修羅場になりそうだな。』


【ガチャ。】


「そうかもな。でももう親父いないからな、親父にも兄貴にも笑ってご機嫌取る必要もねー。誰かに何か言われたら、自分の意見を言ってやる。」


『とりあえずついていてやるぜ。』


お寺のセンター通りまで来た。


真正面50m先にでっかいジャイの父ちゃんらしき遺影が飾られ、もの凄い数の花束が飾られている。


その遺影に石畳が、一直線に伸びていた。


周りから、ひそひそ話が聞こえる。


どうせ、あの息子が、ハーブに手を出して、謹慎になった不良な医者よ。とか言っているんだろう。


その何も知らないくせにひそひそ話をする周りの姿に向っ腹が立つ。


「キッド周りに流されるな!みんな敵だと思うしかない。」


『くっ!不条理な世の中だせ。』


「行こう。」


一升瓶を、片手に一歩踏み出そうとした時、やはり来た!


いかにもな、人間が。


だいたい察しがついた。こいつがジャイの兄ちゃんだって。


「誠、何しに来た?後継者会議すらすっぽかし、謹慎で一家に泥塗ったお前が今更なんのようだ!?」


「清兄。今日は兄さんに用はない。どいてくれ。オレは親父に会いに来た。」


「はいそうですかって、行かせると思うかよ?なんだあんな車で来やがってオレだけは親父に愛されてますってオレらへの当てつけか?」


「清兄そんなんだから、親父がおまえに笑わないのが、まだわかんないのか?」


「あーなんだって!?」


【ボコッ。】


ジャイが顔面を殴られ吹き飛んだ。


「痛っー。キッド。やっぱ人間界は痛いな。悪い!酒を持っていてくれ!割れたら親父に酌が出来ない。」


『ああ。なんかあったら言えよ。』


「大丈夫だ。」


ジャイが、オレの支えで立ち上がる。


「なんだ?そいつ?おまえの隠し子か?」


「オレの親友だ。」


「こんなガキが親友だって?ハーブ吸いすぎで頭がいったか誠?」


「じゃあ清兄はいるのかよ、自分の変わりに死んでくれるダチが?えっ?金なんて無くても、神取じゃなくても、医者じゃなくても側で笑ってくれるダチが清兄にはいるのかよ??」


「知ったような口聞いてんじゃねー」


【ボコッ。】


「ぺッ!」


ジャイの口から血が出てた。


「ハハハ。いねーんだろ?そんな性格だもんな?いつも自分ばっかだもんな?どうせオレが勉強出来た事を憎んでばっかいたんだろ?」


「うるせんだよ。」


【ボコッ。】


「ぐはっ。親父が構ってくれないのも笑ってくれないのも、全部オレのせいにしてきたんだろ?」


【ボコッ。】


「うっ!。でもな今日はハッキリ言ってやる!清兄それはおまえの性格がひん曲がり過ぎだからだ!だから誰からも愛されない。いつも自分の事ばっか考えてるから、憎しみしか感情を生まない。」


「誰がだって?」


【バキッ。】


「痛っー!」


『大丈夫か?ジャイ。』


「あー!!大丈夫だ!おい清兄!おまえ親父がハーブやってるの知ってたろ?知っててオレの服にいれたな?」


「なんの事かな?」


笑いながらシラを切っている。


誰が見てもこいつだってわかる態度だった。


ジャイが立ち上がり、


右ポケットに手をいれた。


何をしようとしてるか想像がついた。


『ジャイ!それはダメだ!』


「でもこいつが、親父を見殺しにしたようなもんだろ?」


『それでもダメだ!それをやったら父ちゃんに酒をつげなくなるぞ。父ちゃん多分怒るぞ。』


「キッド。じゃあ持っていてくれ。」


やはりバタフライナイフが出てきた。


ジャイの家を出た時にポケットからうっすら頭が見えた気がした。


まさかなとは思ったが、ビートルに乗ってる時段差でそのポケットから、カチャカチャ音がしたので確信した。


「安達刑事!見たか?こいつバタフライナイフ持ってたぞ。なんの為に呼んだと思ってる?逮捕しろよ!」


…こいつ、病院に来た刑事じゃねーか?


…兄貴の方と繋がってんのか?


刑事が側に来た。


「悪いね。いくら誠一郎先生の息子でも動けない事もある。誠一郎先生にはお世話になったからね。さっきの会話聞いていて、知ってて見過ごしていて、誠一郎先生を見殺しにしたのであれば、そんな人に私が手を貸すと思うかい?」


「はーっ?何を言ってる!ナイフ持ってるやつを見逃すのか刑事の癖に!誰のおかげでいい思いしていると思ってる?」


「私はね、誠一郎先生がいなかったら、立ち直る事が出来なかった人間かもしれないんだよ。だから、そこだけは裏切れない。」


「つかえねー刑事だな。後で署長に言ってやるからな。」


「そしたら、清君!君がやった傷害事件も立件させてもらう!」


「なんだとーーー??」


「清兄まだわかんないのか?」


ジャイが2人の話に割って入る


「もうオレが次の代表に決まったんだ!おまえみたいな出来ぞこないの弟なんて謹慎があけたら、首だ!ざまあないな!」


「そうかそれはよかったな。もうどけよ清兄。おまえに用はない。」



「誠先生!!」


後ろから大名行列のように人が来る。


「井上先生!、土田先生、それに関君も。」


ジャイが後ろから歩いて来る先頭の3人の名前を呼んだ。


お寺に入って来る人の列がとどまる事を知らない。


3人を先頭にジャイの前に来た。


まるで、ジャイを大将とした戦国時代の戦に行く兵士のごとくの行列だ。


その全員が片手に奉納するお酒を持っている。


「誠先生。話は聞きました。一緒にまた頑張りましょう。」


「誠先生。誠一郎先生の頼みだからね。ついて行くよ。」


「誠先生!オレは元々向こうの救急っすから、またつるめますよ!」


「井上先生、土田先生、関君、ありがとうございます。」


ジャイが清兄の方を向いた。


その姿は一国の戦国大名のようにたくましく、立派に見えた。


「清兄。首だって?上等だ!オレら3人、親父の意思を受け継ぐうちら3人は来月から、向こう町の小泉先生の元で親父のやり方を続けながら医者を続ける事になった。小泉先生も承認済みだ!そして、見てみろ!」


ジャイが後ろを指差した。


「これが、親父や、オレ、井上先生、土田先生みんなが、無償で、悩みを聞いたり、家に会いに行ったりして親父のやり方に感謝してる人の集まりだ!清兄が無駄無駄と、切り捨てた人々だ!そしてこれから新しく清兄が、病院の代表になった時に見捨てる人々だ!

オレはバイトもした。そして色んな人と触れ合った。色々辛いそんななかで優しさによって色々救われた!

身を持って知ったからこそ!

オレは親父のやって来た事を誇りに思う!だから、親父のやり方を否定する清兄の病院では働けない。さぁわかったらそこをどいてくれ、親父が待ってる。」


「安達刑事いいのか?こんな事をさせて?」


「清君。すまないな。私もこちら側に並ぶ人間だ。」


「クッソなんだ!どいつもこいつも、絶対行かせないからな!」


「合わせないなら、それでも構わない!その時はここに集まった800人近くの人間全員が線香すら上げさせないで帰した事になるからな!そのリスクを考えて物言えよ」


「清兄さんもうやめよう。」


「礼二、、、。でもこいつは、、。」


「清兄さんもう、オレは嫌だよ。真ん中に挟まれて2人がいがみ合うのを見てるのは、、、幼稚園の時とか、仲良く3人で写真とか撮ったじゃん!誠も清兄さんも、もう辞めようよ。いつまで憎み続けるんだよ。憎んで恨んでなんかいい事あった?オレはもう清兄さんの肩を持つのは嫌だよ。もうどっちの味方もしたくない。なんでだよ?切っても切れない兄弟なのに、中学あたりから、清兄さん文句ばかり。いいじゃないか?誠の方が優秀だって、それを受け入れたって、」


「そんなの認められる訳ないだろ!オレは、誠じゃねーんだ!清だ!いつもいつも、なんで誠の様に出来ないと言われ続けた。それを認めたら今までやって来たオレの人生が音を立てて崩れる!だから、オレは親父のやり方と違う方法で人を救うんだ!親父なんかいなくても、出来るんだ!親父の考えなんかいらねーんだ!だから、新しくオレが代表になったら診察はスピーディに、会話も最小限でたくさんの患者を見るんだ!

1人の患者に余計な話をする親父のやり方を続ける誠と和解するなんて事は無い!」


「どいてもらおうか?清兄。」


「どかしてみろよ誠。」


「悪いな清兄!」


【バキッ。ドサッ】


清兄が1撃で失神した。


「礼二兄。これからも清兄についていてやってくれ。オレの方は大丈夫だから。」


「誠。今までごめんな。」


「礼二兄こちらこそすまなかった。色々無理させて。これからも大変だと思うけど清兄よろしくな。なんかあったら相談乗るから電話してくれよ。」


「誠も、違う病院で大変かもしんないけど頑張れよ!」


「大丈夫だ!オレは1人じゃない!同じ志を持った同士や、親友の仲間がいる。礼二兄こそ、オレがいなくなって、清兄が礼二兄にあたるような事があれば絶対相談するんだぞ。」


「わかった。」


礼二兄と、ジャイがしっかり握手した。


『キッド行くぞ。コップ持って来てくれ!』


大名行列はそのまま、ジャイを先頭にジャイの父ちゃんの棺の前まで歩いて行った。


オレもコップを借りジャイと合流した。


他のみんなはまだ3歩後ろで待っていた。


「キッド側に来いよ。」


『おう。でもいいのか?オレが一緒でいいのか?オレはジャイの父ちゃんと面識無いけど。』


「いんだよ。オレが側にいて欲しいんだよ。」


『甘ったれだな。』


「ははは。はっきり言うなぁ。」


ジャイが一升瓶の蓋を開けて、コップにお酌してお供えした。


「親父、遅くなったな。こんな形で酒を注ぐことになるとは思わなかったよ。親父、親父も誰かに病んでる時救われたからこんな事始めたのか?

オレも病んだ時、人の優しさ、暖かさに救われた!

だからこそ今なら親父がみんなにやっていた事がよくわかる。

ただ、最近の悩んでいた時、気がついてやれなくて、、ごめんな親父。

親父が倒れた時、やっと自由になれたなんて思って、、本当ごめんなさい。親父が道を示してくれたから、今オレは自分のやりたい事が出来るのに最近気がついたんだ。

オレも医者を続けて、親父みたいに患者さんと密に接したい。

いろんな悩みを聞いて救ってあげるようなあつかましい医者になりたい。

今はすごくそう思うよ。

バスケもやめさせられた。

絵を描くのもやめさせられたけど、

これから進みたい道がわかったからもう何も恨んで無いよ親父。

今までオレにだけ、たくさん優しくしてくれて、ありがとうお父さん。

いつも、実は嬉しかった。

お父さんだけ大好きだった。

オレはお父さんしかいなかった。

なのにごめん兄弟でもめてばかりで、ハーブなんて吸わせる事になって。本当ごめんお父さん。

お父さんがいなくてもオレは1人じゃなくなった。オレにも親友が出来たんだ。だからもう、オレは兄貴達に意地悪されても大丈夫だから、だから、天国でゆっくり美味しい酒を飲んで待ってて。いつか必ずお酒注ぎにいくから。」


『ジャイ!きっと父ちゃんも、天国で笑ってる!』


「だといいな。」


後ろを振り返った。


「みんな時間をかけてすまなかった。酒が大好きだった親父に酒を飲ませてやってくれ!天国で喜んでいるはずだ。キッドナイフ貸してくれ。」


ジャイが安達刑事の側に歩いていく。


「さっき拾ったって事にして貰えませんか?」


「まあ、しょうがない。こちらで処分しておくから。」


「ありがとう安達さん。恩に切ります。」


『ジャイ!埋葬まで居なくていいのか?』


「ああ。もう満足だ。親父もオレと清兄が争ってるとこみると悲しむからこれで充分だ。ありがとう。」


列を後ろに歩いていくと小泉先生がいた。


「小泉先生来月からよろしくお願いします。」


「こちらこそ、誠一郎のやり方でたくさんの笑顔をうちの病院からよろしくお願いしますね。」


2人がガッチリ握手した。


「キッドどこまで並んでるか見にいこうぜ!」


『いいぜ。』


お寺を出て列の最後尾を見ようとしたが、最後尾は見えないくらい並んでいた。


『すげーなジャイの父ちゃん!一升瓶持ってるみんなはジャイ達が呼んだ人なんだろ?』


「まあそういう事になるな。みんないい顔してるぜ!親父すげーな。オレも死んだらこうやってみんなに笑って送ってほしいもんだな。」


『ジャイなら出来るぜ父ちゃんが認めた医者なんだからな!よかったなやりたい事が見つかって。』


「キッドこの1ヶ月世話になったな。本当にいい経験させて貰った。ありがとう。オレはおまえといれて、やっと見つけられた本当にやりたい事が。」


『そっかぁ!じゃあオレが弁護士で、ジャイが医者なら最強タッグになるな!』


「絶対なれよ!」


『もちろんだ!オレはオレのやり方で、救う道を進むんだ!』


オレらは参拝に来た人達をみんな見届け、感謝の挨拶をして、出棺の前にビートルで引き上げた。


この時800人が焼香を終え、お寺を出発したのが、

AM1:10


『ジャイやべーぞ!2時になったら、意識失って異世界だぞ!』


「無理だな!キッドの家には間に合わない!オレの家だ!」


2人で、ジャイのマンションに向かった。


1:45


駐車場に着いた


『やべーぞ時間がねー。』


全速力で走り、

部屋に着いた。


この時AM1:55


『「間に合ったー!」』


こうして、ジャイの父ちゃんの葬式と、オレの卒業式のイベントが終了し、


リビングでひっくり返ったまま


2人はプレイヤーとして、忙しく異世界に転生されるのであった。









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